栗の花の匂い成分とは?
栗の花は特徴的で強い匂いを放つため、思わずその匂い成分が何か気になる人が多いようです。
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2019年の研究によると栗の花の匂い成分は「1-ピロリン」という成分が主成分であることが報告されています。
Zhang, Xiaoping, et al. “Molecular analysis of semen-like odor emitted by chestnut flowers using neutral desorption extractive atmospheric pressure chemical ionization mass spectrometry.” Analytical and bioanalytical chemistry 411.18 (2019): 4103-4112.
似たようなにおいを放つ「スペルミン」という物質が栗の花の匂い成分であるといわれることが多いようですが、そうではないようです。
ちなみに、環状アミンの「ピペリジン」や炭素数の多いアミン類は似たような匂いを放ちます。
どうやって匂い成分を特定するか?
花が発するニオイ成分は揮発しやすい低分子有機化合物たちで一般的にVOC(volatile organic compounds:揮発性有機化合物)と呼ばれることが多いです。
環境中で発生した悪臭成分、植物の香料成分など揮発した有機化合物の化学構造を特定する手法としてGC-MS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)が一般的に用いられています。
しかし、測定対象が脂肪族アミンのように極性の高い化合物の場合はカラムへの保持時間が長く、カラムに吸着しやすいことから微量試料の測定は困難です。
測定対象の純粋な化合物を大量に持っていればシリル化といった誘導体化を行うことで高感度に測定できますが、この場合は難しいです。
こめやん
こうした課題があるため、おそらく窒素化合物を含むであろう栗のニオイ成分の研究は不十分でした。
報告している論文ではクロマトグラフによる分離や化学的な前処理を行わないでダイレクトにAPCI-MSで分析する方法(ND-EAPCI-MS)で測定しています。
栗の花の匂い成分として見つかったものはたくさんありますが、そのなかでもマススペクトルの強度が大きかったものは以下になります。
栗の花の異臭は何のため?
花の香りというと甘いリラックスさせる良い香りというイメージがありますが、それは一部の花だけで全ての花が良い香りを放つとは限りません。
例えばショクダイオオコンニャクやラフレシアなどは腐った腐肉の匂いを放つことから死体の花とも呼ばれています。におい成分中には硫黄化合物や窒素化合物が含まれており、腐肉に群がるハエなどを引き寄せます。
花のにおいはそれを目当てに向かってくる昆虫を引き寄せるためのものと考えられています。
栗の花の匂い成分として特定された1-ピロリンはイエバエのフェロモン成分として同定されています。
とはいえ強烈なにおいを放っているからでしょうか?栗の花にはハエだけでなくたくさんの昆虫群がっている姿をよく目にしますね。
満開の栗の花。お客は大勢。特に目立つのはコアオハナムグリ。クロハナムグリ、トラ模様のカミキリ、他にも甲虫、ハエ、アブ、チョウ、3枚目の画の怖いお方も。一つ一つ特定するのは面白そう。でも、樹高は高いわ、風は強いわで、今日は断念。 pic.twitter.com/Xemdi4INwN
— tanpoco (@tanpopononiwa) May 26, 2016