食品

ひじきのヒ素は安全?寿命が縮むの?

ヒ素を多く含むためひじきを食べないように」という勧告を2004年7月に英国食品規格庁がだしています。毒入りカレー事件の影響もあって、「ヒ素は毒!」と感じる人が多いと思います。

日本では普通に煮物として食べているひじきは栄養豊富な海藻ですが、ヒ素を含むというと怖いですよね?更にコメにもヒ素が多いという衝撃的な情報も報告されています。

ひじきに含まれるヒ素の毒性は?

本当にひじきにヒ素は多いのか?という疑問に関しては、これは「本当です」。
多くの食品の中でも、確かにひじきは断トツでヒ素含有量が多いです。

厚生労働省は、「体重50kgの人が毎日4.7g以上を継続的に摂取しない限り限度を超えることはない。」という声明を出しています。

では日本人一人あたりではひじきをどのくらい食べているかというと、その平均摂取量は約0.6gです。

ちなみにひじきの煮物は一人前で乾燥ひじき3g程度です。

まあ普通の人はそんなに毎日ひじきを食べないので、超えることはなさそうですね。ただ量的には越えようとするんだったらそんなに難しくはない量のようにも思えます。小鉢のひじきの煮物を2つ分毎日食べれば超えるってことですかね?

つまり、ひじき大好きっ子は食べ過ぎに注意!です。ただし、普通の人は気にしなくて良い(みなさんはそんなにひじき食べますか?)。英国のように食べるなって言うほどでもないと感じます。

といってもひじきにヒ素が含まれているのは事実ですし、少しは気をつけたほうが良いのかもしれませんね。私は昔ひじきのふりかけが大好きでめちゃくちゃたくさん食べていた記憶があります。

ひじきが好きだけどヒ素が気になる!という人にはひじきのヒ素を減らす

ひじきのヒ素をなるべく減らす方法:

乾燥ひじきを水で戻すときに60分以上浸すと、70%のヒ素は水中に溶出するので減る。水戻しした水は捨てる。

ヒ素比較的多い食品

単位(mg/kg)
玄米(2012年):総ヒ素:0.23, 無機ヒ素:0.21
白米(2012年):総ヒ素:0.14, 無機ヒ素:0.12
ひじき(乾物):総ヒ素:93, 無機ヒ素:67
ひじき(水戻し):総ヒ素:6, 無機ヒ素:3.6
昆布(乾物) : 総ヒ素:53, 無機ヒ素:0.19
わかめ(乾物):総ヒ素:33, 無機ヒ素:0.15
海苔(乾物):総ヒ素:25、無機ヒ素:0.16

他の食品(参考)
小麦; 総ヒ素:0.008
キャベツ:総ヒ素:0.003
トマト:総ヒ素0.004
ほうれん草:総ヒ素0.01
みかん:総ヒ素0.003
りんご:総ヒ素0.004
引用)平成26年農水省食品に含まれるヒ素の実態調査より

ちなみにここには調査が違うので載せていませんが、魚介類のヒ素含有量はどれも高いです。ヒ素含有量は生活場所が海底に近いほど高くなることがわかっています。さば<ひらめ<かになど。海藻類は海底に生えているから高いのでしょうか?

さて、注目してほしいところがあります。1つはひじきが圧倒的にヒ素が多いということ。そして昆布やわかめもよく食べるのにヒ素が多いのですが、ヒ素の構成が違うということ。わかりにくいですが、ひじきは総ヒ素93に対して無機ヒ素67と無機ヒ素の割合が高いのですが、昆布は総ヒ素53に対して、無機ヒ素0.19と圧倒的に有機ヒ素が多いという点です。結論から言うと、「有機ヒ素」は毒性が低いという点です。だから昆布はひじきに次ぐヒ素量がありますが気にしなくて良いのです。(だし汁には乾燥ヒ素重量の70%が溶出するそのうち無機ヒ素は5%で5価As)

ヒ素の毒性について

ヒ素は。そういう認識の人が多いのではないでしょうか?

実際に「ヒ素」は毒物で使われています。

1988年和歌山毒物カレー事件では「亜ヒ酸:As(OH)3」が毒物として使われています。林真須美容疑者は死刑が確定されていますが、状況証拠のみで直接証拠はなく冤罪の可能性もあるそうですが…。

なぜそんな毒物を一般人が持っていたかというと、「亜ヒ酸」は殺鼠剤枯草剤などとして使われている農薬として販売されていたからです。

「亜ヒ酸」はヒ素化合物の中でも毒性が高い3価のヒ素で、臭いや味が無いために古来から毒殺に使用されてました。

今、このヒ素で毒殺しようとする人がいたら思いとどまってください。高感度な検出方法が確立されているので確実にバレます。

そんな圧倒的毒物感の強いヒ素ですが、実は医薬品として使われていたこともあります。「サルバルサン」は梅毒スピロヘータに対する特効薬です。当時は蔓延していた梅毒患者を救う希望の光だったでしょう。

上の構造がサルバルサンです。当初は一番上の二重結合体で存在するとされましたが、現在は、三量体、5量体が正しいとされています。生体内では分解して単量体として作用するとされています。

なぜ毒性が高いとされるヒ素が医薬品になるかというと、実は、亜ヒ酸などの無機ヒ素化合物と比べて、有機ヒ素化合物は毒性が低いからです。毒性が高いのは亜ヒ酸などの3価の無機ヒ素です。

ヒ素中毒の症状

急性症状慢性症状では症状が違います。

急性症状:腹痛、嘔吐、下痢等の消化器症状、呼吸困難などの呼吸器障害、せん妄、意識混濁、痙攣などの神経症状で重症になると意識不明、肝臓などの内蔵に障害を起こし、多臓器不全で死亡します。

慢性症状:嘔吐、手足のしびれ、歩行障害、ヒ素白斑黒皮症

慢性症状のうちヒ素白斑黒皮症は特異的な病変です。皮膚が黒く色素沈着しする現象に伴い、逆に色素がなくなった白い白斑が生じる症状が現れます。

ヒ素化合物の毒性発現機構

ヒ素は、生体内のチオール基(SH)と容易に結合する性質をもつ。これにより、SH酵素系をブロックすることで、細胞代謝を阻害する。

ミトコンドリアの酸化的リン酸化に対して脱共役による阻害的作用(ASO43-はリン酸PO43-に似ているため、リン酸基転位反応時にリン酸の代わりにヒ酸が使われることによってこの反応を阻害する。さらに生成するアシルヒ酸は不安定ですぐ壊れる→またヒ酸ができて阻害する。)

ヒ素暴露の原因

ヒ素は飲料水、食品などが主な摂取経路です。

そのなかでも高濃度ヒ素の摂取源は井戸水です。井戸水のヒ素汚染は旧日本軍が所持していたジフェニルシアノアルシン等の毒ガス剤の地中投棄物が経年変化により漏れ出して、井戸水に混入するという経路が多いです(2003年3月茨城県157名被害)。近年震災の影響から井戸水が注目されていますが、井戸水は化学、微生物汚染の危険があるので注意が必要です。

そして、海産物品です。特にさきほどのひじきは注意が必要です。

自然界に存在するヒ素化合物

ヒ素は地球上に普遍的に存在する化合物で天然中にも有機ヒ素化合物はいくつか存在します。

・アルセノベタイン
グリシンベタインのNがAsに置換された化合物。節足動物(エビ・カニ等)、軟体動物(なまこ、イカ、貝)など海産動物に普遍的に見られるが海藻、ひじきには含まれない。

・アルセノコリン
アルセノベタインのカルボン酸が還元されたアルコール体。グリシンベタインが還元してコリンができるのと同様にアルセノベタインから還元されてアルセノコリンが生じるのなら、アルセノベタインと同様に普遍的に存在するはずだが、アルセノコリンは一部のエビ、貝類からしか発見されていない。

・トリメチルアルシンオキシド
魚に含まれる。鮮魚には少なく、冷凍中には増加すると考えられている。魚類に多いトリメチルアミンはコリンから生合成されるため、トリメチルアルシンオキシドもアルセノベタインから生成すると考えられる。

・テトラメチルアルソニウム
二枚貝やイソギンチャク、アメフラシに見られる。As→N置換verのテトラメチルアンモニウムは頭痛など食中毒を起こす物質であるために毒性が懸念される。

・アルセノシュガー
アルセノシュガーは海藻類に含まれる主要なヒ素化合物である。アルセノシュガーは単細胞藻類が海水中のヒ素を基に合成されていると考えられている。藻類を食する食物連鎖から他の有機ヒ素化合物の出発物質であると考えられている。実際にアルセノシュガーからアルセノベタインを生成することを確認されている。
昆布やわかめの総ヒ素の大部分はアルセノシュガーである。マウスに経口投与させた際、アルセノシュガーは主に糞中に、人では尿中に比較的早く排泄され、体内に蓄積されることは無いと判断されている。

・アルセノリピッド
非水溶性の有機ヒ素化合物として重要である。わかめではアルセのシュガーの脂肪酸エステルとして見つかっている。

・ジメチルアルシン酸
緑藻ミル中に存在を確認している。極微量物質。

・三酸化二ヒ素(As2O3)[亜ヒ酸As(OH)3]
三酸化二ヒ素は毒性が強い3価のヒ素で、褐藻類は多く含有するとされる。ひじきは無機ヒ素として三酸化二ヒ素を多く含む。(ひじきは危険かも)


毒性としてアルセノシュガーは入っていない。アルセノシュガーは大概に排泄されると考えられているから。

ヒ素のBiologival cycle

ヒ酸(V)→亜ヒ酸(III)→アルソン酸メチル→アルシン酸ジメチル→トリメチルアルシン酸 or ジメチルアルシン→ジメチルアルソン酸→Dimethylarsinous acid(III)→トリメチルアルシンオキシド
メチル化は補酵素SAMを用いたASM3MT(3価ヒ素メチルトランスフェラーゼ)により行われる。

コメはどうなの?

実はコメには重要な問題があります。それは毒性物質を蓄積するということです。あまり問題にはなっていませんが、日本人はカドミウムという毒性のある金属のうち4割をコメから摂取していると言われています。さらにヒ素もコメは蓄積する性質があります。(カドミウムはイタイイタイ病の原因物質)

米の怖いところは主食であるため毎日たくさん食べる点です。ですからコメの安全性というのは非常に重要な話題であるわけです。

田んぼは栽培に水を張るために、土壌中の酸素が欠乏して還元状態になります。

ヒ素は自然界に普遍的に存在すると言いましたが、土壌中では5価ヒ素(AsO43-)の状態で土壌鉱物と強力に結合しています。それが水田は還元状態であるため、亜ヒ酸(As(OH)3)に還元されると、土壌から離れて水中に移動します。これによって、吸収されやすい形となり、稲が吸収します。他の穀類に比べてもコメのヒ素量が多いのはこれが原因の一つです。

米の含有ヒ素組成についてはうまく定量できていないが、そのほとんどが無機ヒ素でひじきと同様に3価ヒ素が多いようです。米の安全性については現在調査中であまりわかりませんでした。

結論:安全性についてはまだ調査中でわかりませんでした。要経過観察です。気になる人は2倍くらいヒ素が多い玄米は毎日食べるのはやめたほうが良いでしょう。玄米抽出エキスなどもヒ素含有量が多い可能性が高いのでやめたほうが良いかもしれません。東邦大学生命科学部の吉永らは2014年に「日本人のヒ素摂取量の6割は米由来であり、平均摂取量20ug/dayと国際的リスク評価結果を考慮に入れると皮膚、肺、肝臓における発がんとの関連は無視できるレベルではない」と報告している。

まあ、日本人は昔から米食べてて平気そうだからそんなに気にしなくても良いのかなあと私は思いますが、できるだけヒ素量を減らす対策法を見つけ出すことは急務であると思います。

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こめやん
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こめやんは理学博士です!化学の面白さと学ぶメリットを少しでも伝えるために日々頑張ります! ツイッターにて疑問点や依頼などを募集しています! 論文の和訳やレポートのチェックなどでもお気軽にお待ちしております