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フッ素と医薬品: 水素の生物学的等価体としての効果

現在市場に出回っている医薬品有効成分のうち約20%程度は含フッ素化合物だと言われています。実はフッ素有機化合物は天然にはほとんど存在しないのですが、なぜこんなにも医薬品に応用されているのでしょうか?

今回はそんな疑問からフッ素が医薬品にもたらす効果として、フッ素を水素の生物学的等価体と捉えて比較したいと思います。

フッ素-水素交換の効果

元素としてのフッ素の特徴は、電気陰性が最も高いこととサイズが水素に次ぐ非常に小さい元素であることです。例えばフッ素の電気陰性度が最も高いことから、フッ素はほぼすべての元素と結合を形成することができ、他の元素とは結合を形成しないような、安定希ガスであるキセノンですら結合してXeF2などの分子になります。さらに、窒素と酸素以外に水素結合を形成できる数少ない元素です。またサイズに関しては水素のファンデルワールス半径より10%大きい程度と非常に小さい元素であることが知られている非常にユニークな元素です。今回はそんなフッ素-水素の交換がもたらす効果についてまとめます。

疎水性(脂溶性)効果

一般的に有機化合物にハロゲンを導入すると疎水性(脂溶性)を増加させる効果が知られていますが、フッ素に関しても同様です。特に芳香環やヘテロ原子を介してCF3を導入するのが有効で、化合物の生体への吸収と生体内の輸送速度を改善する効果があります。

ミミック効果

先程も書いた通りフッ素は水素に次いで小さい原子なので、生物活性化合物の水素をフッ素置換した場合でも生体は識別できずに代謝系に取り込んでしまいます。

ブロック効果

C-F結合はC-H結合と比較して結合エネルギーが大きいため安定で、フッ素が直接ついた炭素は酸化などの化学的な攻撃を受けにくいことが知られています。これはフッ素のブロック効果と呼ばれていて、代謝を妨害することで生物活性を向上させることがあります。まだフッ素は電気陰性であることから直接ついた炭素以外にも一つ隣の炭素も求電子攻撃からブロックする効果があると言われています。

このブロック効果がよく現れている例としては、テフロン(ポリテトラフオロエテン)で、電気陰性であること+小さくで密度が高くなることで外界からの化学的な攻撃を防ぎ、安定な材料として用いられています。また、炭素以外にも、硫黄にフッ素が6個ついた六フッ化硫黄も化学的+物理的に安定な気体であることが知られており、絶縁体として用いられています。


フッ素含有医薬品

上記のフッ素-水素交換による効果が表れている含フッ素医薬品について紹介します。

フルフェナジン(Fluphenazine)

フルフェナジンは統合失調症の治療薬として用いられている含フッ素医薬品です。これは同様に精神安定剤であるクロロプロマジンのClをCF3に変換することで代謝されにくくなり、有効時間を伸ばすことに成功した例です。

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