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アルキンおよびベンゼン等価体: ビシクロ[1.1.1]ペンタン誘導体の合成法

創薬化学において、生物学的等価体(バイオイソスターあるいはバイオアイソスター)を用いた変換手法は、医薬品候補化合物の物理化学的性質を向上させる重要なアプローチです。しかしながら、新たに考案された等価体に関して、実際の医薬品開発への適用には合成手法の確立や、その物理化学的な性質の解明が必要になります。今回はその中でも[1.1.1]ビシクロペンタン誘導体の合成と物理化学的性質の比較を行った研究について紹介します。

Synthesis of Bicyclo[1.1.1]pentane Bioisosteres of Internal Alkynes and para‐Disubstituted Benzenes from [1.1.1]Propellane

Dr. Ilya S. Makarov Dr. Cara E. Brocklehurst Prof. Dr. Konstantin Karaghiosoff Dr. Guido Koch Prof. Dr. Paul Knochel

Angew. Chem. Int. Ed. 2017, 56, 12774
DOI: 10.1002/anie.201706799

ビシクロ[1.1.1]ペンタンの等価性

ビシクロ[1.1.1]ペンチル(BCP)部位は、その二面角や距離などの幾何学的性質が似通っていることから、p-置換ベンゼンのバイオイソスターとして注目されています。p-置換ベンゼンとBCPの変換によって、いくつかの医薬品候補化合物(mGlu1受容体アンタゴニスト, γ-セクレターゼ阻害剤など) の水溶性、膜透過性、代謝安定性を向上させることが知られています。また、BCP部位はその疎水性と嵩高さからt-butyl基のバイオイソスターとしても研究が進んでいます。Knochelらは、それ以外にもBCPがアルキニル部位へのイソスターとして機能するのではないかと考え、アルキニル部位を含む化合物tazarotene(1)と2-methyl-t-(phenylethynyl)pyridine (MPEP; 2)に対してBCPを導入した化合物(3, 4)を合成することとしました。




ビシクロ[1.1.1]ペンタン誘導体の合成

有機分子に対してBCP部位を導入することは困難ですが、最近知られているBCP部位をArに導入する手法では[1.1.1]プロペランに対してAr-Mg種を加えることで3-7日かけて反応させることができます。筆者らはこの手法を改良して、化合物9からPhLiを用いてプロペランを合成し蒸留することで, 0.6-0.7M溶液のプロペランを安定に用意し、封管中で、100℃で反応を行うことで45minという短時間で反応が進行することを明らかとしました。一方で条件検討から、THFなどの溶媒ではプロペランが分解してしまうなどうまくいかず、低温の場合では時間がかかってしまうことが分かりました。基質適応性に関しては、TMS、Me、F、Cl、OMe、アルキンなどがベンゼン環に入った基質などでも高収率で反応が進行することが分かりました。


さらに筆者らはプロペランとAr-MgBrとの反応でできるgrignard剤7を使って、エステル体11の合成を行いました。

同様に、7を用いた根岸カップリングによりbisAr-BCP12の合成を行いました。

どちらの反応も種々の基質に適応できることが分かり、根岸カップリングを用いて下記34の合成を達成しています。

合成した誘導体の評価

今回の論文では、残念ながら合成した化合物の生物活性評価は行われていませんが、いくつかの物理化学的性質の評価が行われています。まず、融点に関して化合物13では64℃の差があり、BCP含有タザロテンの方が結晶のパッキングが良いことが分かっています。化合物2413を比較すると、化合物24は室温で液体であり、p-phenyl構造を有する13と比較すると似た物理化学的性質であることが分かります。また、pKaの値からBCPとアルキニルを比較した場合、わずかに塩基性が高くなることもわかりました。人工膜透過性試験(CHI)においてもBCPの方が高い値を示しています。

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