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カリウム tert-ブトキシド (t-BuOK)

カリウムtertブトキシドはターシャリーブチルアルコールのカリウムアルコキシドで、強塩基性を示します。

カリウム tert-ブトキシドの性質

カリウムtert-ブトキシドはtert-ブチルアルコールの金属アルコキシドで嵩高い強塩基です。立体障害の影響から他のアルコキシドと比べて求核性は低いです。

tert-ブチル基はかさ高いため求核性が低い

tert-ブチル基を持つt-BuOKは有機溶媒に溶けやすい強塩基であるため、有機化学反応によく利用されます。有機合成ではカリウムカチオンを包摂するクラウンエーテル(18-crown-6)を加える事によって、ブトキシドアニオンの遊離をさらに塩基性を高めることも可能です。

カリウム tert-ブトキシド のプロパティ

  • 分子量: 112.21
  • 化学式: t- BuOK
  • 融点 : 256℃
  • pKa : 17 (共役酸)
  • 溶解度 : 水と反応して水酸化カリウムに分解

吸湿性が非常に高く湿気やすく、水に触れると水酸化カリウムに分解するので取り扱いには気をつけます。

強塩基のなかでは中程度の強さを持っています。電気陰性度の高い酸素のアニオンは比較的安定なので、より不安定な窒素、炭素アニオン由来の塩基のほうが強力です(酸素アニオン<窒素アニオン<炭素アニオン)。

溶媒効果について

tBuOKは4量体からなるキュバン型クラスターとして存在しています。

tBuOKの四量体クラスター

tBuOKの四量体クラスター

このクラスターはベンゼン、THF、DMEのような極性が低めな溶媒中で存在していて、塩基性が著しく低下します。t-BuOKの本領を発揮するにはDMSOなどの高極性溶媒を使用します。DMSOはカリウムを溶媒和することで塩基性を高めているので、疎水性溶媒を利用する場合はクラウンエーテルを加えるか、DMF、HMPA、NMPなどの非プロトン性極性溶媒を使用します。

危険性

t-BuOKは十分に強い塩基性を示すためにクロロホルム中で使用するとジクロロカルベンが生成して発火することがあります。ジクロロメタンなどのハロゲン溶媒の使用は控えたほうが良いです。

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t-BuOKを利用した反応

活性メチレン化合物(1,3-ジカルボニル)の炭素からプロトンを引き抜く場合、ジケトンでは酸性度十分高く、炭酸カリウムなどでも反応が進行するが、ジエステルの場合は引き抜くのに十分な塩基性の強さではありません。

マロン酸ジエステルなどのジカルボニルのプロトン引き抜きはt-BuOKを利用します。

tBuOKを使ったジカルボニルのアルキル化

溶媒はtert-ブチルアルコールを利用することが多いです。t-BuOKは直鎖状のケトンをエノラートにするほど十分な塩基性を有していませんが、活性環状ケトンをエノラートにして、アルキル化を進行させることはできます。

Stobbe縮合などエステルの基質を使用する際はナトリウムエトキシドを利用するよりもtBuOKを利用するほうが分解しにくいので向いています。

ウィッティヒ反応

ウィッティヒ反応では、NaHやブチルリチウムなどの強塩基を利用しますが、tBuOKも不安定イリドの生成に利用できます。

脱離反応

t-BuOKは脱離反応によく利用されます。

tBuOKの脱離

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