1997年にファイザー社 (Pfizer) のクリストファー A. リピンスキー(Christper A. Lipinski)によって提唱された医薬品らしさ(drug-likeness)を計る指標のことであり、化合物の構造から医薬品になりやすいものかを予測することができる。
この指標は最も有名で広く認められた医薬品らしさのフィルターの1つであり、リピンスキーが米国一般名または国際一般名がつけられフェーズII試験 (第二相臨床試験) まで到達した化合物でWDIに登録されている2245種類の医薬品候補化合物を分析して得られた経験則である。
ルールオブファイブ
リピンスキーの法則によって経口吸収が期待できない化合物は以下のものである。
- 分子量が500を超えるもの
- LogPの計算値 (ClogP)が5.0を超えるもの
- 水素結合供与体 (NHとOHの合計数) が5を超えるもの
- 水素結合受容体 (NとOの合計数) が10を超えるもの
上記の基準の数字が5の倍数になっていることからルールオブファイブと呼ばれる。ただし、トランスポーターを介して経口吸収される化合物など例外や、化合物の吸収を定量的に評価することはできないため、医薬品になるかを十分区別できるものではない。あくまで、メディシナルケミストが単純に吸収性が問題となる可能性のある分子を排除して、効率的に医薬品探索を進めるための指標である。
Lipinski, Christopher A., et al. “Experimental and computational approaches to estimate solubility and permeability in drug discovery and development settings.” Advanced drug delivery reviews 23.1-3 (1997): 3-25.
リピンスキーの法則の拡張
リピンスキーの法則を元に拡張されたルールがいくつか登場しています。
リードライクネス
化合物スクリーニングではヒット化合物をリードとして構造展開していきまうす。
構造展開は別のフラグメントを付加していくことが多く、最適化の過程で分子量が大きくなりがちです。
従って、リピンスキーの法則の枠ギリギリの場合、最適化された化合物はリピンスキーの法則から外れてしまう可能性が高いです。
そのため、ライブラリ化合物をより厳しい条件とする方法が提案されています。
具体的には分子量とLogPの上限が厳しい数値になっています。
- 分子量≤300
- log P(≤3.0)
Teague SJ, Davis AM, Leeson PD, Oprea T. The Design of Leadlike Combinatorial Libraries. Angew Chem Int Ed Engl. 1999 Dec 16;38(24):3743-3748. doi: 10.1002/(SICI)1521-3773(19991216)38:24<3743::AID-ANIE3743>3.0.CO;2-U. PMID: 10649345.
リピンスキーの法則に則っているかテストする方法
リピンスキーの法則はシンプルでわかりやすいですが、簡単にリピンスキーの法則に則っているかテストできると便利ですよね?
SwissADMEは構造式を入力するだけで簡単にテストできるツールです。
http://www.swissadme.ch/index.php
ツールの詳細についてはscientific reportsでも紹介されているので参考にしてみてください。
Daina, Antoine, Olivier Michielin, and Vincent Zoete. “SwissADME: a free web tool to evaluate pharmacokinetics, drug-likeness and medicinal chemistry friendliness of small molecules.” Scientific reports 7.1 (2017): 1-13.
SwissADMEの使い方は簡単で構造式を入力して実行するだけです。
ルールから外れていればどの項目が外れているかがLipinskiの項目に表示されます。
リピンスキの法則以外にも他のパラメーターの確認もできて便利です。
レーダーチャートが用意されていて、親油性、分子サイズ、極性、溶解性、飽和度、フレキシビリティを視覚的にとらえることができます。