メンブレンフィルターはろか膜の孔径が揃っている濾過膜で、精密なろ過に利用します。HPLC、MSの前処理やバッファーの滅菌処理に利用します。メンブレンフィルターの特徴や利点を紹介します。
メンブレンフィルターとは?
メンブレンフィルターは孔径が一定でそろっているため、直径がOOμm以上の粒子は除去できるなど、粒子径の大きさで分けることが可能です。
メンブレンフィルターは単純な微粒子の除去はもちろん、培地やバッファーなどから細菌類を除去するための「滅菌フィルター」としての用途にも用いられます。孔径を小さなものを用いれば、小さいウイルスなどの粒子も取り除くことができます。このようなものすごく小さな粒子の除去は「限外ろ過」と呼ばれています。限外ろ過では0.2μmなどというような粒子径よりも1000KDaのような分子量で表示に切り替わります。
メンブレンフィルターは細かい穴(孔)が空いていて、それよりも大きい粒子径のものは貫通できないため捕捉されるという原理です。メンブレンフィルターでの粒子の除去は膜表面で行われ、さらに普通のろ紙などと比べて孔が細かいため、ろ過には高い圧力が必要になります。また、粒子が多いと目詰まりしやすいので、不要粒子は予め分離しておくことがコツです。シリンジの先にくっつけて使うシリンジフィルターのタイプなどをHPLCなどのクロマトの前処理に使用することが多いかもしれませんが、ロックタイト式のガスタイトシリンジなどを使用しないとフィルターが外れたり、注射筒の隙間から漏れてきてしまうなどということが起きます。バッファーや培地のろ過にしろ、不要物が多いような場合は予めメンブレンフィルターによるろ過の前に前ろ過することが失敗を防ぐために重要です。
粒子径の小さなメンブレンフィルターほど詰まりやすいので前ろ過をしておきましょう。プレフィルターが前処理用のフィルターとして販売されています。
目に見える濁りや沈殿物がある場合は遠心分離が可能ならその上清をろ過するべきですね。
メンブレンフィルターの選択のポイント
メンブレンフィルターといってもその素材や粒子径などが異なっています。重要なポイントとしては、どんな粒子(物質)を除去したいか?ということを明確にし、さらにどんな溶媒をなのか?ということを予め把握しておきましょう。
- 何μmの粒子を除去したいか?細菌、ウイルス、タンパク質を除去したいか?(限外ろ過)
- 親水性(水・バッファー)か疎水性[非親水性](アセトニトリル、DMSO、エタノール等)?
分光計、LCMSやHPLCなどで使用するサンプルの場合は有機溶媒が含まれていることが多いと思います。この場合は疎水性のフィルターを選択しましょう。仕様書をよく見て使用する溶媒が使用できるかを確認しましょう。DMSOはOKでもアセトニトリルがダメということもあります。また、親水/非親水性の両方が使えるフィルターもあります。
次にどんな物質を除去したいか?です。生物系でなければ0.45μmくらいでよいですが、汎用性の高さからは0.22μmを選択しておいたほうが良いと思います。生物系ではマイコプラズマを除去したい場合は0.1μmを利用する必要があり、さらにウイルスを除去したい場合は限外ろ過膜を利用する必要があります。
メンブレンフィルターは主に
シリンジに接続するタイプのものと遠心分離でろ過するものの二種類があります。
エッペンチューブくらいの大きさ0.5~2mLくらいまでなら遠心分離のろ過が向いています。遠心分離ろ過式は小さい容量のロスが少ないと思います。
一方でそれ以上の数十から数百mLくらいのろか、バッファーなどのろ過などはシリンジフィルター式のほうが簡便で便利です。大容量向けですね。