目次
濡れない水とは?
濡れない水とは水のように無色透明ですがすぐに蒸発して濡れないという謎の液体のことです。
怪しい液体ですが人体には無害と言われています。
濡れない水の面白い性質からYoutuberの方々から企画の題材としてよく使用されています。
人気youtuber!水溜りボンドでも取り上げられている濡れない水
この謎な液体の正体は3M社という化学メーカーが開発したノベックという製品です。
https://www.3mcompany.jp/3M/ja_JP/novec-jp/
濡れない水の化学構造式を見ればどんな物質なのかが分かってきます。
濡れない水は全く水ではない!?
それでは早速構造式を見てみましょう。
下の図が「濡れない水」ことノベックの化学構造です。
構造をみれば一目瞭然!
水(H-O-H)とは全く異なる物質であることが分かると思います。
濡れない水は「水」ではありません。似ても似つかないです。
アルコール(CH3CH2-O-H)のほうが、ずっと水に近いです。
濡れない水はパーフルオロアルキル基を持つケトンやエーテルという分類の物質です。
濡れない水にはフッ素が大量に入っている
濡れない水にはこれでもか!というくらいたくさんのフッ素が入っています。
パーフルオロアルキル基のパーフルオロ(ペルフルオロ)per-は「完全に」という意味があり、水素が完全にフッ素に置換されたという意味になります。
ですからパーフルオロ基の化学構造中には沢山のフッ素が入っています。
これで濡れない水「パーフルオロケトン」や「パーフルオロエーテル」のパーフルオロの意味が分かったと思います。
それではケトンとエーテルはどうでしょうか?
ケトンは聞き馴染みはないかもしれませんが、実は身近にある物質で除光液にはいっています。除光液の主成分であるアセトンはケトンに分類される分子です。✴︎除光液の成分は製品によって違う。最近はアセトンフリーの除光液がよく販売されている。
濡れない水・ノベックは、構造式を見ると水とは程遠い物質で水というよりも、有機溶媒と呼ばれる液体、除光液(アセトン)やエーテルといった分子に近いです。
こめやん
濡れない水の性質に秘密はフッ素にある!
ノベックの面白い特徴は沢山入っているフッ素によるものです。
ここでは専門的な話は避けますが、沢山のフッ素をつけると下記の特性が付与されます。
- 水をはじく(水と混ざらない)
- 重くなる
- 沸点が低くなる(蒸発しやすい)
- 化学的に安定(低毒性)
フッ素と同じく17族の元素である塩素や臭素も似たような物質を作りますが、若干性質は異なります。
フィクションで人を眠らせるのに使う「クロロホルム」はたくさんの塩素が入った物質です。
濡れない水と似たような性質は示しますが、毒性が高いという点だけ違います。
例えばジクロロメタンは水と混ざらずにすぐに蒸発して、水よりも重く安定性も比較的高いですが毒性が高いです。
ジクロロメタンは体内で代謝されてギ酸クロリドや一酸化炭素といった反応性の高い毒性物質に変化します。
17族のフッ素や塩素や臭素単体は猛毒であり、塩素や臭素の有機ハロゲン化合物は同様に毒性が高いですが、フッ素有機化合物に限っては安全性が高いものが多く医薬品のパーツとしても利用されています。
ノベックは化学的安定性に優れており、代謝されにくく反応性が高い有毒物質がでてこないので安全性が高いというわけです。*生体内で変化せずとも悪影響を及ぼすこともある
安全なら飲んでも良いのか?
一応、様々な安全性テストが実施されていますが目立った毒性は報告されていませんが、食品として安全を保障されているわけではないので、飲料してはいけません。
少し飲んだくらいで健康を害することはないと思いますが食品として開発されたわけではなく、十分な検証はされていないので避けましょう。
- Krafft, M. P., Riess, G. J. Chem. Rev., 109, 1714(2009).