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ガブリエルアミン合成法

フタルイミドを分解するとアミンが得られます。

ハロゲン化アルキルに対してフタルイミドカリウムを用いると置換反応を起こしてフタルイミド体が得られます。

このようなアミンの合成方法をガブリエルアミン合成法と呼びます。

ガブリエルアミン合成とは?

フタルイミドは酸/塩基により加水分解してアミン体を生成するのでアミン合成に利用できます。フタルイミドはアミンの求核性を完全に抑えることができるので保護基としても利用されています。

フタロイル基とはフタロイル(Phth)基によるアミンの保護

このようにガブリエルアミン合成は第一級アミン合成方法として有用です。第一級アミンを合成する方法は他にはアジドを用いる方法があります。

アジドの還元でアミンを合成eyeアジドの還元でアミンを得る方法

ガブリエルアミン合成の欠点は頑丈なフタルイミドを分解するのが困難な点です。

これを改良する方法としてヒドラジンを使用するIng-Manske法開発されています。強酸や強塩基を用いないのでより選択的にフタルイミドを分解することができるため好まれています。

フタルイミドをヒドラジンで脱保護します

フタルイミドをヒドラジンで脱保護




ガブリエルアミン合成の反応条件

フタルイミドおよびフタルイミドカリウムをアルキルハライドやトシラート・メシラートなどの脱離基を有する化合物と反応させるとフタルイミドをアルキル化できます。

フタルイミドを用いるときは炭酸カリウムやDIEPAなどの塩基を共存させて反応させます。

Rasina, Dace et al Journal of Medicinal Chemistry, 59(1), 374-387; 2016

DMF(2 mL)ブロモ体(0.352 g、1.45 mmol)の溶液に、フタルイミドカリウム(0.324 g、1.75 mmol)を加えて80°Cで6時間反応させた。反応後室温まで冷却し、分液、濃縮、カラム精製により目的物を95%で得た。

フタルイミドカリウムは特に塩基を加えることなく反応させられます。溶媒は溶解性が高いDMFを良く用いますが、アセトンやアセトニトリル、トルエン、THFなども用います。ブロモアルキルの場合はKIなどを加えるとハロゲン交換でヨウ素化されて収率を向上できるかもしれません。一般に反応温度は60~100℃くらいで実施することが多いです。

光延反応を使ってアルコールを直接フタルイミドに置換することも可能です。

フタルイミドを光延反応で導入

Ellis, J. Michael et al Journal of Medicinal Chemistry, 58(4), 1929-1939; 2015

アルコール体(18.5 g, 84.5 mmol)、 THF (400 mL)の溶液にフタルイミド (14.9 g, 0.101 mol) PPh3 (26.9 g, 0.101 mol) をN2雰囲気下で加えた後、DEAD (27.3 g, 0.135 mol)を室温で滴下して加えて2時間攪拌した。濃縮し、精製操作を行い94%で得た。

フタルイミド分解反応例

Armanino, Nicolas et al Organic Letters, 16(2), 572-575; 2014

エタノール(250 mL)フタルイミド体(18.3 g、68.0 mmol、1当量)の溶液に、ヒドラジン一水和物(6.00 mL、136 mmol、2当量)を加えて4時間還流した。次に、室温に冷却し、沈殿物を濾過により除去した。次に、濃塩酸(75 mL)を加え、溶液を濃縮して固体にした。次に、溶液を水(300 mL)に溶解し、酢酸エチル(3 x 500 mL)で抽出しました。濃縮して目的物を91%で得た。

フタルイミドの脱保護はヒドラジンを用いる方法が選択的で簡便です。ガブリエルアミン合成の欠点は外れにくいこと、除去後の精製がうまくいかないと面倒なことがあります。ヒドラジンによる脱保護法も温度をかけないと完全に外れないこともあります。酸や塩基を続けて使うこともあります。詳しくは下記記事を参考にしてください。

フタロイル基とはフタロイル(Phth)基によるアミンの保護

アミン合成法 アミン合成法のまとめ

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