目次
一酸化炭素の合成法
一酸化炭素は酸素を運搬するヘモグロビンと強力に結合するために、窒息を引き起こす危険な気体です。
一方で、有機合成の面では一酸化炭素は反応性の高い1炭素源として重要な分子です。
一酸化炭素の構造をみれば、それはC=Oはカルボニルであり、分子にカルボニル基を導入するための最もシンプルな形です。
一酸化炭素を安全な形で有機合成に利用しようとする試みは有機合成化学では重要な分野となっています(C1化学)
有毒な一酸化炭素の調製法
一酸化炭素を利用する合成としては、古典的なものではガッターマン反応があります。
一酸化炭素の調製は非常に危険なのでドラフト内でやります。
最もシンプルな合成法は
- 濃硫酸にギ酸orシュウ酸を滴下して加える
方法です。
また、ガッターマン反応に利用する場合は塩化水素と反応させることから、より便利な方法として、クロロ硫酸(塩化スルホン酸)にギ酸を滴下する方法があります。
HCOOH + HSO3Cl → CO + HCl + H2SO4
この方法では塩化スルホン酸とギ酸が反応して一酸化炭素と塩化水素が発生するのでこれを塩化銅と塩化アルミニウム、芳香族化合物の溶液に通じればガッターマン反応によりアルデヒドが合成できます。
一酸化炭素等価体の利用
ガッターマン反応などは芳香環に直接カルボニル基を導入できるので便利ですが、有毒な一酸化炭素を使うのはあまり好ましくありません。
そこで、一酸化炭素よりも安全な形をした等価体「一酸化炭素等価体」を利用することで危険な一酸化炭素の代替がおこなわれてきました。
一酸化炭素の反応中間体であるホルミルクロリドは不安定なためより安定に存在するCO代替化合物としてギ酸エステル類やギ酸アミド類が開発されてきました。これらは一酸化炭素等価体として有機合成で使われています。
参考
1) 小西英之, and 眞鍋敬. “毒性の一酸化炭素ガスを使わない化学合成法.” ファルマシア 50.4 (2014): 310-314.