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反応後の後処理・ワークアップのやり方

後処理とワークアップ クエンチとはどんな時にやるの?

反応後の後処理・ワークアップは何のためにやる?

化学反応後に目的の化合物が得られたからといってそれで反応は終わりではなく、反応後の後処理をする必要があります。ワークアップ(後処理後の作業も含む)とも呼ばれるこの作業は、

  • 反応性の高い化合物を安全な状態に変換すること
  • 目的物以外の不要物を分離すること
  • 毒性の高い化合物を安全な状態に変換すること

以上のような目的で行われます。反応性の高い化合物などをそのまま放っておくと知らぬ間に火を吹いたり、爆発したり、副反応を起こしたりする危険があります。これを防ぐために反応性の低い状態に変換する「クエンチ」を行います。

大まかな不要物の分離精製は分液操作によって行います。あまり反応性の高くない化合物であれば、クエンチも兼ねて分液操作をすることも多いです。少量の酸塩基も中和処理できます。

反応後の操作の流れは

反応後|→クエンチ→(中和)分液乾燥濃縮→|精製操作となります。

反応性の高い化合物の多くは水と反応して活性を失うので、分液操作は精製と同時にクエンチもできます。激しく反応する化合物の場合は噴水することもあるので、クエンチと抽出は別々に行います



反応後にクエンチ作業が必要な化合物はどんなの?

化学反応は反応性の高い化合物を使うことによって反応を進行させることが多いです。化学反応を進行させる上で、反応性の高い化合物を過剰量加えているとこうした化合物が反応せずに残っている場合があります。反応性の高い化合物として

  1. 有機金属試薬(ブチルリチウム、アルキルアルミニウム、)
  2. 金属水素化物(LiAlH4, NaH、)
  3. アルカリ金属類(Na, Li、)
  4. 強塩基(LDA, NaHMDS、)
  5. 強酸(BF3・Et2O、H2SO4、HF)
  6. 過酸化物(H2O2, BPO)

挙げればキリがありませんが例えば上記のようなグループの化合物があります。一概には言えませんが、金属系の化合物は禁水性であり、水を加えると失活します。反応性の違いによって、冷却したり(-0℃以下)、水よりも反応性の低いアルコールを使うなどの工夫をします。酸塩基は中和し、酸化物はチオ硫酸ナトリウムなどで処理します。

分液はクエンチと分離精製を両立できる方法

分液は水層と有機層間の親和性?の違いによって分離精製することができる操作技術ですが、水を使うので反応性の高い化合物はクエンチすることができます。さらに中和なども可能でお得です(化合物の量や反応性によっても変わりますが)。分液操作をうまくできれば、その後の精製操作がぐっと楽になります。

  1. 酸性物質は塩基性水溶液(炭酸水素ナトリウム Or NaOH)によって水層に抽出できる。酸性に戻せば有機層に抽出できる
  2. 塩基性物質は酸性水溶液(HCl、KHSO4、クエン酸)によって水層に抽出できる。塩基性に戻せば有機層に抽出できる
  3. 酸性不要物質は炭酸水素ナトリウムで中和、水層に除去できる(発泡に注意)
  4. 塩基性不要物は塩化アンモニウムで中和、水層に除去できる。
  5. 酸化性物質はチオ硫酸ナトリウムで中和できる
  6. 極性の低い化合物はヘキサンで抽出できる
  7. ブライン(食塩水)で有機層から水を除去できる

等々が分液操作で可能になります。酸塩基性の違いによってうまく分離できると精製操作なしにキレイな化合物を得ることも可能です。

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固体が得られたら洗浄しよう

もしも反応後に固体が得られたら、分液のために無理に溶媒に溶かす必要は無いかもしれません。固体と液体を分ければそれだけで固体になりやすい化合物(あるいはその液体に溶けにくい化合物)と液体になりやすい化合物を分離できるからです。

得られた固体を少量とって溶媒に溶かしてTLCを見てみましょう。少し汚いものが混じっているならば、うまく固体を洗ってあげるとキレイになることがあります。溶媒に対する溶解性が悪い化合物ほどキレイになりやすいと思います。まずは溶ける溶媒と溶けない溶媒を少量のサンプルで試してみましょう。溶けているかどうかはTLCを見て判断します。

  1. ヘキサンで洗浄する(多くの有機化合物はヘキサンに溶けにくい。疎水性の高い物質は除去できる)
  2. 水で洗浄する(極性の高い塩や有機化合物を除去できる)
  3. 薄い酸で洗う(塩基性化合物を除去できる)
  4. 薄い塩基で洗う(酸性化合物を除去できる)
  5. 各種溶媒であらう(クロロホルムやメタノール等は溶解しやすい溶媒でこれらに溶けないならキレイになりやすい)

などの方法があります。固体が取れたらとりあえずろ過してTLCを見たりして見ましょう。

まず濃縮することもある

エバポレーターで濃縮というのも揮発性の化合物であれば立派な精製方法とも言えます。反応性が高くても揮発性なら留去してしまう方法もあります。沸点が高いと熱をかけることで副反応が促進される恐れがあるので、クエンチしてからのほうが安全です。

分液できない高極性水溶性溶媒を使っている場合もまず濃縮することも多いです(メタノールやDMFなど)。濃縮後にはそのままカラムの精製に移っても良いですし、水溶性の不要物が多い場合は分液しても良いです。

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