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MDMAとは何か?手を出したら危険な違法薬物の乱用はやめよう

某有名女優が所持していたことで話題のですが、MDMAに限らず多くの違法薬物は有名人が所持、使用などによって逮捕されることで度々話題になります。

このMDMAは精神依存を引き起こし脳に障害を与えることが報告されている危険な薬物です。

現在、薬物で検挙される人が増加しています。身近にあっても決して手を出さないようにしましょう。

本記事ではできるだけ簡単に解説すると

  • MDMAは依存性があり、脳にダメージを与え、記憶、認知機能が低下する。
  • MDMA利用による未成年の死亡者の増加が問題になっている
  • 麻薬及び向精神薬取締法で所持、使用、受け渡しも禁止(非販売目的でも7年以下の懲役)
  • 劣悪な製造による未知の毒性、危険性がある

MDMAとは?

MDMAの正式名称は3,4-メチレンジオキシメタンフェタミンです。英語で書くと3,4-MethyleneDioxy MethanephetAmineで、頭文字をとってMDMAです。

MDMAはエクスタシー、バツ、タマ、粉状のもはモリーなどと呼ばれ、カラフルな剤形をしていてファッション感覚で未成年者が乱用する事例が拡大しています。

イングランドやウェールズでは29歳未満のMDMA死亡者が統計開始以来最高を記録したとBBCニュースが報じています。

参考 Ecstasy 'too child-friendly' as deaths rise to record levels - BBC NewsBBC News

「実は安全だ」という誤った認識で安易に手を出すことによって、依存症を引き起こすほか、元に戻らない脳へのダメージを負う可能性があります

違法ドラッグといえば幻覚を見せたり、気分を高揚、抑制したり、多幸感、不安、恐怖などを感じさせるというイメージがあると思います。

実際に摂取した際の身体症状としては

  • 高血圧
  • 頻脈
  • 発熱
  • ふるえ
  • 頻尿
  • 不眠
  • 筋肉痛

が現れ、精神症状として

  • 初期症状:多幸感、不安緩和、興奮、幻覚
  • 持続症状:傾眠、うつ、妄想、いらいら→数日から数週間続く1,2)

があります。

さらに脳に機能障害を与えるという報告があります3, 4)。特に認知機能、記憶力を低下させるという報告があります。

1) McCann, Una D., Shiyoko O. Slate, and George A. Ricaurte. “Adverse reactions with 3, 4-methylenedioxymethamphetamine (MDMA;‘ecstasy’).” Drug Safety 15.2 (1996): 107-115.
2) Brown, Christopher, and John Osterloh. “Multiple severe complications from recreational ingestion of MDMA (‘ecstasy’).” Jama 258.6 (1987): 780-781.
3)Reneman, Liesbeth, et al. “Reduced N-acetylaspartate levels in the frontal cortex of 3, 4-methylenedioxymethamphetamine (Ecstasy) users: preliminary results.” American Journal of Neuroradiology 23.2 (2002): 231-237.
4)Wagner, Daniel, et al. “A prospective study of learning, memory, and executive function in new MDMA users.” Addiction 108.1 (2013): 136-145.

こうした症状はMDMAが「脳に直接作用」しているため起こります。

なぜ脳に作用するのか?は化学構造を見てみると分かります。

MDMAは神経伝達物質と同様に脳に働きかける



MDMAは脳神経の情報を伝える物質に似ている

脳にはたくさんの神経細胞があります。ある神経細胞の興奮を別の神経細胞に情報を伝える時に利用するのが「神経伝達物質」です。

下の図はAとBの2つの神経細胞が神経伝達物質を使って、神経細胞A→Bに情報を伝えている様子です。神経細胞Aが②にあるピンク色のマル=神経伝達物質を神経細胞Bに渡しています。これを受け取った神経細胞Bは興奮してまた次の神経細胞に情報を伝えていきます。

神経細胞Aから神経細胞Bに神経伝達物質(②の丸い赤粒)を渡して情報伝達を行っている様子 by vectorization: Mouagip (talk)Synapse_diag1.png: Drawn by fr:Utilisateur:DakeCorrections of original PNG by en:User:NretsThis W3C-unspecified vector image was created with Adobe Illustrator. [CC BY-SA 3.0 ]

神経伝達物質にはたくさんの種類がありますが、モノアミン類という種類の中には有名なセロトニン、ノルアドレナリンがあります。これらはアミン(NH2)を一つ(モノ)持つためモノアミン神経伝達物質といわれています。

特にドパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンは形が非常によく似ており、ベンゼン環にOHを2つを含む化合物は「カテコール」というため、カテコールアミンと呼ばれています。

モノアミン神経伝達物質

モノアミン神経伝達物質 どれもベンゼン環(6角形)にOHがついていて、アミン(-NH2)をもつ化学物質!

このモノアミン神経伝達物質とにている形をしている化学物質は同じような作用を及ぼす可能性があります。そこで作られたのがアンフェタミンやMDMAといった薬物です。これらの物質は実際に脳神経に作用を及ぼし様々な悪影響を及ぼします。

モノアミン神経伝達物質と薬物

モノアミン神経伝達物質と薬物

MDMAはモノアミンと同じような場所で働くことが予想されますが、元の物質と同じ効果を発揮するとは限りません。

通常神経伝達物質は脳内で適切な量を調節して作られています。しかし、上記の薬物が通常では考えらない量が脳内に入ってくれば悪影響を及ぼすことは容易に想像できます。

神経伝達物質と似た化学構造を持つMDMAは脳内で神経伝達物質のように振る舞い様々な悪影響を及ぼす

MDMAの作用・神経毒性の分子機序

MDMAの作用はセロトニン放出に関わっているといわれています。

  1. セロトニン代謝酵素のMAOの阻害
  2. SERTに作用してセロトニンの再取り込みを阻害

セロトニンはMAOという酵素によって分解してアルデヒド体に変換され、過剰なセロトニン量を制御しています。MDMAはセロトニンと似ているためMAOに結合し、この働きを阻害します1)

MAO阻害作用とセロトニン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1)Bortolato, Marco, Kevin Chen, and Jean C. Shih. “The degradation of serotonin: role of MAO.” Handbook of Behavioral Neuroscience. Vol. 21. Elsevier, 2010. 203-218.

また、神経細胞から放出されたセロトニンをもう一度神経細胞に取り込むSERTというトランスポーターに対してもMDMAはセロトニンのように振舞うことでセロトニンの取り込みを阻害します。

これらのメカニズムにより過剰にセロトニンが放出されることが気分の高揚などに関わっていると考えられています。一方でセロトニンの過剰放出により、セロトニンが枯渇してしまうため、服用後の数日間にも及ぶ「うつ」や「いらいら」などの症状が引き起こされると考えらています2)

2)Kish SJ, Furukawa Y, Ang L, Vorce SP, Kalasinsky KS. Striatal serotonin is depleted in brain of a human MDMA (Ecstasy) user. Neurology. 2000;55(2):294-296.

MDMAの使用は中枢神経系に障害を与える

動物実験でラットや猿などを用いた研究では、MDMAがセロトニン作動性ニューロンを損傷することが報告されています1,2)

1)Commins, D. L., et al. “Biochemical and histological evidence that methylenedioxymethylamphetamine (MDMA) is toxic to neurons in the rat brain.” Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 241.1 (1987): 338-345.
2) O’hearn, E., et al. “Methylenedioxyamphetamine (MDA) and methylenedioxymethamphetamine (MDMA) cause selective ablation of serotonergic axon terminals in forebrain: immunocytochemical evidence for neurotoxicity.” Journal of Neuroscience 8.8 (1988): 2788-2803.

さらにこの障害が長期間にわたり継続するという報告があります3)

3) Hatzidimitriou, George, Una D. McCann, and George A. Ricaurte. “Altered Serotonin Innervation Patterns in the Forebrain of Monkeys Treated with () 3, 4-Methylenedioxymethamphetamine Seven Years Previously: Factors Influencing Abnormal Recovery.” The Journal of Neuroscience 19.12 (1999): 5096-5107.
さらに、人間のいわゆる短期記憶と呼ばれる作動記憶に対して長期にわたり障害を与えることが報告されています4)。この記憶力低下はセロトニン作動性神経の機能低下との関連があることが報告されています。
4) Wareing, Michelle, John E. Fisk, and Philip N. Murphy. “Working memory deficits in current and previous users of MDMA (‘ecstasy’).” British journal of psychology 91.2 (2000): 181-188.
これらの神経毒性はMDMAの代謝物が引き起こしていると考えられています5,6)
5) Colado, M. I., et al. “In vivo evidence for free radical involvement in 5-HT following administration of MDMA (“ecstasy”) and p-chloroamphetamine but not the degeneration following fenfluramine.” Br J Pharmacol 121 (1997): 889-900.
6)Breier, Joseph M., Michael G. Bankson, and Bryan K. Yamamoto. “L-tyrosine contributes to (+)-3, 4-methylenedioxymethamphetamine-induced serotonin depletions.” Journal of Neuroscience 26.1 (2006): 290-299.
MDMAは脳の認知機能に対して障害を与え、さらに使用をやめても作用が長期にわたる可能性があります。
危険な薬物であるMDMAは決して手を出さないようにしましょう。
参考
1)中川貴之, and 金子周司. “MDMA によるセロトニン放出および神経毒性発現の分子機序.” 医学のあゆみ 217.13 (2006): 1143-1146.
2)毛利彰宏. “合成麻薬 MDMA の精神依存と神経毒性.” 医学のあゆみ 209.2 (2004): 120-121.
3)中川貴之, and 金子周司. “MDMA によるセロトニン放出および神経毒性発現の分子機序.” 医学のあゆみ 217.13 (2006): 1143-1146.

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