漆原ニッケルはラネーニッケルと同等の反応性を持ちながら、自然発火性のない還元剤でニトロ基やシアノ基、ケトン、多重結合を還元できます。自前で調製が必要なのが欠点です。
漆原ニッケルとは?
漆原ニッケルは亜鉛粉末に塩化ニッケルの水溶液を加えて反応させて生じた金属ニッケルに水酸化ナトリウム水溶液を加えてできる触媒を水で置換、使用溶媒に置換させて使用する還元触媒です。ラネーニッケルとは違って自然発火性はなく同等の活性を示すといわれています。自前で調製する必要がありますが、ラネーニッケルよりも安全に使用できるのがメリットです。
漆原ニッケルの調製方法
- なるべく細かい亜鉛粉末 10gを100 mLのナスフラスコに入れ、3 mLの水を加えて100℃に熱する。
- 別容器に10 mLの水、1gの塩化ニッケル水溶液を加熱、沸騰させる
- 2の溶液を1に加えて撹拌する
- 沈殿をガラスフィルターでろ過して少量の熱蒸留水で洗浄する。
- 10%NaOH水溶液160 mL中に沈殿を加えて穏やかに撹拌して、55℃に加熱、15-20分程度放置する。
- 上澄みを除去し、55℃の水40mL加えて、溶液を捨て、再度繰り返す
- 最後に反応溶液(アルコール等)に置換させて反応に用いる
漆原ニッケルを使った還元反応
ラネーニッケルと反応性は似ています。空気中で自然発火することありませんが、失活するのでラネーニッケルと同様に水中などで扱いましょう。
アルカリが反応性に与える影響
漆原ニッケルは水酸化ナトリウム水溶液で調製しているため、残存するアルカリが反応に影響を与えることがある。
カルボニル、ニトリル、オキシムは残存するアルカリが還元速度を速めるため気を使う必要がないが、Ar-NO2、オレフィンの還元は残存するアルカリの影響を受けて遅くなる恐れがあるので入念に水で洗浄する。
漆原ニッケルを用いた反応例
シクロヘキサノン、芳香族アルデヒド、ケトン、ニトロ、ニトリル、ベンゾフェノン、オレフィン、アルキン、脂肪族ケトンは還元されて対応するアルコール、アミン、アルカンに還元されます。すべての反応はエタノール中で実施され、還元に要する時間も1時間以内に終了することが多く、脂肪族やニトリルの還元などでも3時間ほどで完了します。
1) 漆原, 義之ら、「漆原ニッケルについて」 1955, 觸媒, 12: 107-115
2)畑一夫, 平進一. “漆原触媒.” 有機合成化学協会誌 16.11 (1958): 596-602.
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