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Troc基によるアミンの保護 |亜鉛+酢酸で脱保護可能な保護基!

アミンの保護基のなかでもTroc基は酸や塩基、求核剤やヒドリド還元条件にも耐性を持つというすごい保護基です。また、Troc基の特徴は亜鉛-酢酸の還元条件で選択的に脱保護できる点です。還元に耐えない官能基(ニトロ基等)があると使えませんが、うまく使えば非常に有用な保護基となります。

Troc基(2, 2, 2-トリエトキシカルボニル基)とは

Troc基(2,2,2-Trichloroethoxy group)はカルバメート系のアミンの保護基です。Troc基は酸・塩基加水分解条件に強く、求核剤や還元にも耐性があります。Troc基の特徴は、脱保護にZn-AcOHを用いた条件で脱保護可能な点であり、他の保護基との組み合わせやすいです。

Troc保護

特徴・利点

Troc基の利点や特徴は

  1. 酸や塩基条件に比較的強い
  2. Znを用いた一電子還元により選択的に除去できる。

などがあります。保護化試薬も25g, \5,300: TCIと比較的安価なため手が伸ばしやすいです。

Troc保護の反応機構

Troc化の反応機構

Troc保護反応機構

アミンがトリクロロエチルクロロギ酸のカルボニル炭素に攻撃して反応が開始します。アミンのプロトンをトリエチルアミンが奪い塩酸塩となり、反応が完結します。

Troc基脱保護の反応機構

Troc脱保護反応機構

Troc基の脱保護は亜鉛の一電子還元により達成されます。亜鉛の電子がトリクロロメタンの塩素を攻撃し、2つの塩素によって安定化されたラジカルが発生します。これが再度一価の塩化亜鉛と反応し、亜鉛からの電子の押し出しにより脱炭酸を経てアミン体が得られます。

Troc保護の反応条件

Troc保護は他のカルバメート系保護基と同様にクロロギ酸エステルを用いて行います。有機溶媒・塩基水溶液を用いたショッテンバウマン条件がよく用いられます。

Troc保護化反応条件ー①TEA、THF条件

Troc保護反応例1脱水THF(200 mL)中のアミン体(1.0eq、43.4 mmol)の溶液に、2,2,2-トリクロロエチルクロロホルメート(1.2eq、52.1 mmol)およびEt3N(1.2eq、52.1 mmol)を加えた。窒素下で0℃で。反応混合物を室温に温め、1時間撹拌した。反応物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、EtOAcで抽出した。有機層をブラインで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ EtOAc、4:1)を用いて精製して、目的物を得た。(95%)Kwon, Y., et al. Organic Letters 2014, 16, 4938. より引用。

Troc保護の反応条件

よく利用される塩基:NaHCO3、NaOH、ピリジン、Et3N、DIEA、K2CO3

溶媒:ジクロロメタン、THF、AcOEt、トルエン、メタノール、無機塩基の場合は水を加えてショッテンバウマン条件で行います。

アミノ酸などカルボン酸を含む基質では、アミド化が進行する可能性があるので、Troc-OSuを用いたほうが良いです。

Troc基脱保護反応の条件

Troc基の脱保護はZn-酢酸溶液を用いるのが一般的です。脱保護時にBoc、Bn、トリフルオロアセトアミドなどが含まれていてもTroc基のみが脱保護されます。亜鉛以外の方法はInやCdなどがあります。酸触媒はAcOHの他、NH4Cl、KH2PO4、HClなどが用いられます。酸を使わないでメタノールと亜鉛で還流する方法もあります。

Troc基脱保護反応条件ー亜鉛+酢酸の条件

Troc脱保護反応例1保護アミン体(1.0 eq,5.88 mmol)の脱水ジクロロメタン(100ml)溶液に、Znパウダー(42 eq, 245 mmol)および脱水酢酸(50ml)を0℃、Ar雰囲気下で加えた。混合物を0℃で3.5時間撹拌し、次にジクロロメタン(200 ml)で希釈し、セライトで濾過し、濾液を飽和食塩水で洗浄した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2×200ml)および水(200ml)で有機層を洗浄し。硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濃縮し目的のアミンを得た。(94%以上)  Adanitsch, F., et al. J. Med. Chem. 2014, 57, 8071. より引用。

注意事項ーTips

  • 脱保護条件の選択肢は狭い
  • N-メチルの第三級アミンにTroc-Clを反応させるとメチル基と置換する。ベンジル基も同様に置換される。
  • Troc基は、サレット酸化、ジョーンズ酸化、HCl-dioxane overnight、TFA 30min、Pd/C H2 in dioxane、Pt H2 in AcOHに耐えるという報告がある。
  • Troc基はアミンの保護だけでなく、アルコール、フェノール、カルボン酸、チオールの保護基として利用可能です。

参考まとめ

Wuts, Peter G. M.. Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis Fifth edition(p.1010). Wiley.

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