THP基(テトラヒドロピラニル基)とは
THP基はアセタール系のアルコールの保護基で、塩基性条件、求核剤、還元、酸化条件に安定です。一方で、酸性条件には弱く用意に脱保護されます。アルコールがキラルな場合ジアステレオマーが生じる可能性があり、NMRが複雑になるという欠点があります。
特徴・利点
THPの利点や特徴は
- 酸以外の条件で安定
- 安価で簡単に保護できる
保護化試薬は25 mL, \1,900:TCIと安価です。弱酸性条件で容易に脱保護できる点が利点です。
THPの欠点は繰り返しになりますが
- キラルアルコールではジアステレオマーが生じる
- 酸性条件に非常に弱い
酸性で脱保護するので当然といえば当然ですが、弱酸性条件(pH4-5)くらいでも脱保護されるので気をつけたほうがよいでしょう。
反応機構
反応機構ー保護
DHPが酸触媒により異性化した後、アルコールが攻撃し、THP保護が達成されます。
反応機構ー脱保護
THP基の脱保護は酸性条件下で行われます。アルコールの酸素がプロトン化されるとTHP酸素の電子の押し出しによってアルコールが脱離します。THPの残骸は溶媒の水やアルコールの攻撃を受けて再度アセタールを形成します。
反応条件-保護
THP基の保護は保護化試薬のDHPと酸触媒を用いて行います。
保護条件例1
ジクロロメタン(2mL)にアミン(1.0 eq,0.171 mmol)を溶解し、3,4-ジヒドロピラン(1.2 eq, 0.208mmol)およびピリジニウムp−トルエンスルホネート(0.02 eq, 0.0032 mmol)を加えて5時間撹拌を続けた後、反応混合物を飽和NaHCO3水溶液で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。 合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)濃縮し、保護アミン体を得た(99%) Shao, W., et al. J. Org. Chem. 2015, 80, 12287. より引用。
保護条件
よく利用される酸触媒:PPTS、pTsOH
溶媒:ジクロロメタン、THF、ジエチルエーテル等がよく使われれます
脱保護反応例
THPの脱保護は酸を用いて行います。脱保護時はPPTSよりもpTsOHがよく用いられます。
反応例1
アミン体(1.51g, 6.74 mmol)を無水メタノール(20mL)に溶解し、p-TsOH-水和物(130mg,0.674mmol) を加えて室温で3時間撹拌した。溶液を分液漏斗に移しジクロロメタン(40 mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(15 mL)で洗浄した。水層を追加部分のジクロロメタン(30mL)で抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濃縮した。 シリカゲルクロマトグラフィー(15%EtOAc/Hex)で精製し目的物を得た(83%) Joe, C. L., et al. JACS. 2014, 136, 8559. より引用。
注意事項ーTips
- THP基を含む状態で酸化反応を行ったら爆発した?という報告があるみたいです。A. I. Meyers, S. Schwartzman, G. L. Olson, H-C. Cheung, Tetrahadron Lett., 1976, 2417.
- 5,6-ジヒドロ4-メトキシ-2H-ピランを使用するとキラルアルコールを保護してもジアステレオマーは生成しないです。*1
参考まとめ
*1) Van, Boom, J. H., et al. synthesis, 1977, 42, 3722.
[blogcard url=”http://www.commonorganicchemistry.com/Rxn_Pages/THP_Protection/THP_Protection_Index.htm”]
[blogcard url=”https://www.organic-chemistry.org/protectivegroups/hydroxyl/thp-ethers.htm”]
[blogcard url=”https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%92%E3%83%89%E3%83%AD%E3%83%94%E3%83%A9%E3%83%8B%E3%83%AB%E5%9F%BA”]