TB染色とは
TB染色はトルイジンブルーを使った染色法です。
核や多糖類、軟骨、肥満細胞、ムチンなどを染めます。塩基性染料であるため酸性の組織に対して強く結合、染まりやすい特徴があります。
下図はトルイジンブルーの構造式です。トルイジンブルーはフェノチアジンが母核としています。フェノチアジンは染料や医薬品の母核として利用されています。メチレンブルーは代表的なフェノチアジン系色素です。抗精神病薬のクロルプロマジンはフェノチアジン系抗精神病薬の元祖です。
TB染色で染まりやすい組織
トルイジンブルーは塩基性官能基アミンを有する芳香族アミンを構造中に持ちます。塩基性染料は色素のうち有機塩基類の塩類の呼称です。
代表的な塩基性染料にフクシン、クリスタルバイオレット、ローダミンなどがあります。
塩基性染料の特徴は
- 水溶性が低い
- 負電荷をもつ物質(酸性の物質:硫酸塩、カルボン酸塩)と結合しやすい(染まりやすい)
という特徴があります。耐光性が低いため繊維類の染色に用いられることは少なく生体試料の染料として使われることが多いです。上記に挙げた代表的な塩基性染料も生体材料の染色によく用いられるものです。
TB染色は
- 核:青色
- 多糖類(グリコサミノグリカン):赤
- 軟骨(ムコ多糖類):紫色
- 肥満細胞(ヘパリン):紫
- ムチン:赤~紫色
を染めます。植物や動物組織の輪郭をはっきりとさせ、組織観察をしやすくします。特定の組織に対する選択的性はあまり高くないです。
原理
トルイジンブルーはカチオン性の色素であるため、カルボキシラートアニオンやスルホン酸アニオンなどとイオン結合をして染まります。トルイジンブルーは色素周辺の環境によって吸収波長が変化するようです。
色の変化はトルイジンブルー分子同士がスタッキングすることによって起こると考えられています。平面性が高いトルイジンブルーは分子同士が層状に積み重なり、吸収波長が短くなり青→赤色に変色します。
このような分子同士のスタッキングによる色調変化は色素によくみられる現象です。+に帯電したトルイジンブルーは-に帯電した硫酸多糖類などに引き付けられます。多く引き付けられると染料同士がスタッキングを起こして色調変化が起こるという原理です。
Sridharan, Gokul, and Akhil A. Shankar. “Toluidine blue: A review of its chemistry and clinical utility.” Journal of oral and maxillofacial pathology: JOMFP 16.2 (2012): 251.