クリスタルバイオレット染色の原理ーグラム染色

クリスタルバイオレットはトリフェニルメタン系の色素で紫色をしています。細菌染色で有名なグラム染色で利用される色素です。クリスタルバイオレットではグラム陰性、陽性菌どちらも染色されますがグラム陰性菌はクリスタルバイオレットの染色が保持できず洗い流されてしまうという違いを利用して2つのグループ分けを行っています。

今回はクリスタルバイオレット染色の原理について化学的な視点から説明していきます。

クリスタルバイオレット染色の原理

クリスタルバイオレットの構造や性質

クリスタルバイオレットはトリフェニルメタン系(トリアリールメタン系)の色素で3つのベンゼン環がつながった特徴的な構造をしている化合物です。

トリフェニルメタンの基本骨格

トリフェニルメタンの構造を持つ化合物には色素として利用されているものが多いです。

トリフェニルメタン 染料の基本骨格トリフェニルメタン フェノールフタレイン等の染料の基本骨格

クリスタルバイオレットは最上段左から三番目にあります。

トリフェニルメタン系色素の一覧

これらの色素は様々な用途で利用されています。

クリスタルバイオレットの3つのベンゼン環にはジメチルアミノ基があり、塩化物イオンとのイオンになっているため極性は高く水への溶解性も高くなっています。

実際に水への溶解度は4,000 mg / L at 25℃ 1) なので水には割と溶けます。

クリスタルバイオレットを使った細胞染色

クリスタルバイオレットは細菌染色の色素として利用されます。細菌には細胞の構造の違いによってグラム陰性菌とグラム陽性の2つに分類することができます。グラム陰性菌は厚いペプチドグリカン層があり、グラム陽性菌は薄いペプチドグリカン層の上にリポ多糖を含む脂質二重層があります(下図左:グラム陽性、右:グラム陰性)

https://www.scientificanimations.com/ [CC BY-SA (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)]

クリスタルバイオレットはペプチドグリカン層を染色します。グラム陽性・陰性菌のどちらもペプチドグリカン層を持つため、いったん染色されます。しかし後の処理で薄いペプチドグリカン層を持つグラム陰性菌ではクリスタルバイオレットが洗い流されて脱色します。その後、赤色色素のフクシン等で染色すると赤色になります。

したがって、薄いペプチドグリカン層を持つグラム陽性細菌は赤色に染まり、厚いペプチドグリカン層を持つグラム陰性菌はクリスタルバイオレットを保持して紫色に染まります。

クリスタルバイオレット染色でルゴール液(ヨウ素-ヨウ化カリウム液)処理する理由

グラム染色を行う手順は

  1. クリスタルバイオレットで紫色染色
  2. ルゴール液で処理(染め)
  3. エタノールで洗浄(洗浄)
  4. フクシンで赤色染色(染色)

になります。

クリスタルバイオレットで染色した後に使用するルゴール液は何の意味があるのでしょうか?

ヨウ化カリウム溶液にヨウ素を加えると三ヨウ化物イオン(I3)が生成します。

この三ヨウ化物イオンは溶液中でクリスタルバイオレットの塩化物イオンと置き換わることで三ヨウ化物イオンとの錯体になります。ヨウ化物イオンは塩素よりも大きく水溶性が大きく低下します。これによってペプチドグリカン層のクリスタルバイオレットは水で流されにくくなります。

クリスタルバイオレットのルゴール液処理

クリスタルバイオレットのルゴール液処理

Davies, J. A., et al. “Chemical mechanism of the Gram stain and synthesis of a new electron-opaque marker for electron microscopy which replaces the iodine mordant of the stain.” Journal of bacteriology 156.2 (1983): 837-845.
アルコールによる洗浄後にフクシンなどの赤色色素に染めます。サフラニンも使いますが、染まらない菌種があるためフクシンが推奨されています。染まった菌はピンク色っぽく観察できます。グラム陽性菌も同様にフクシンで染まると思われますが、クリスタルバイオレットの濃い紫で赤色が混じっても紫に見えるだけで問題ありません。だから薄い赤色のフクシンを選んでいるのだと思います。

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