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日焼け止めの科学 成分や原理とは?

日焼け止めの成分と効果

日焼け止めの科学

日焼けは太陽から降り注がれる紫外線によって起こるやけどです。太陽光に含まれて地表に降り注ぐ紫外線は290~400nmです。

  • UV-A:320~400nm
  • UV-B:290~320nm
  • UV-C:290 nm以下

という分類がされています。

紫外線などの電磁波は波長が短くなるほどエネルギーが大きいです。

日焼けから身を守るための防御機構は角質層とメラニン色素です。

日焼けの科学

皮膚に降り注いだ紫外線は皮膚に炎症を引き起こします。これがいわゆる日焼けです。日焼けの程度は日光に暴露した時間と個人差があります。紫外線を浴びると皮膚のメラノサイトが活性化してメラニン色素を産出して皮膚を黒くさせます。

日焼けを最も起こしやすい紫外線波長は310nm付近だといわれています。したがってこの波長を防ぐのが日焼け止めの目的です。

浅野新. “日焼け止めの科学.” 表面科学 15.7 (1994): 473-478.

紫外線が肌の物質に当たると光のエネルギーを吸収して反応性が高い状態・「励起状態」になります。どの波長の光を吸収しやすいか?は化学物質の構造によって変わります。例えばDNAの構成成分である核酸は紫外線を吸収しやすいので、紫外線によってDNAが壊れたりします。これが皮膚のがんや老化の原因のひとつです。

波長が長いUV-Aの肌への効果も注目されています。UV-AはUV-Bのように肌を赤くする作用はないですが、UV-Bと比べて肌の深くまで浸透しやすく、皮膚コラーゲンの構造をゆっくりと破壊、しわやたるみの原因になると考えられています。


日焼け止め成分・評価

日焼けを止めるには皮膚に紫外線が浸透するのを防げばよいです!

日焼け止めは有害な紫外線を吸収する光を散乱させるという2つの戦略で紫外線が皮膚に到達するの防ぎます。

紫外線の吸収、散乱

紫外線の吸収、散乱

紫外線を吸収する物質を皮膚に塗れば日焼け止めになります。紫外線領域の光を吸収する物質としては構造式中に芳香環(ベンゼン環)を含むものが使われます。代表的な紫外線吸収剤としては下記のようなものがあります。

  • ベンゾフェノン系
  • サリチル酸系
  • ジベンゾイルメタン系
  • メトキシけい皮酸系
  • パラアミノ安息香酸系

紫外線吸収剤の化学構造

紫外線吸収剤の化学構造 吸収波長と吸収効率(モル吸光係数)、安定性、毒性などが評価項目です

サリチル酸系や安息香酸系は安全性の問題から汎用性は低い。

吸収する光は化学物質の構造によって異なります。一般的に連続した二重結合をたくさんもつ分子は長波長の光(赤色)を吸収しやすくなります。

紫外線を吸収することで皮膚に吸収させないという方法以外にも紫外線を散乱させる方法もあります。こちらの目的には有機化合物ではなく無機化合物が使われます。よく使用される物質としては、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛などがあります。光散乱作用だけでなく紫外線吸収作用も併せ持つものがあります。

日焼け止めの性能評価にSPFという基準が設けられています。SPFは1978年に米国のFDAによって制定された方法です。日焼け止めを塗った状態と塗っていない状態で紫外線を浴びた時に赤くなる紅斑反応を示す具合を比較した評価方法です。

水野誠. “紫外線防御効果測定法に関する最近の動向について.” 日本化粧品技術者会誌 47.4 (2013): 271-277.

SPF30と数字が大きいほど効果があります。SPF30は30倍紅斑反応を遅らせることができるという意味になります。紅斑反応を起こす紫外線の波長は310nmとUV-Bの波長領域であるため、SPF指標はUV-Bに対する効果を表したものです。

海水浴など野外のレジャーで長時間日光を浴びる場合は少なくともSPF30以上の日焼け止めの使用が適正です。

一方でPA++++などとUV-Aに対する効果を示した評価もあります。4段階評価で+が多いほど効果があります。

浅野新. “日焼け止めの科学.” 表面科学 15.7 (1994): 473-478.

本間茂継. “日焼け止め化粧料に関して (シリーズ: 教科書から一歩進んだ身近な製品の化学).” 化学と教育 58.7 (2010): 328-329.

紫外線を当てるとラジカル核種を発生させるAIBNを使って各種日焼け止め製品を調べた研究ではSPFが大きいほどラジカル発生量が減少することが報告されています。紫外線照射時間が長くなるほどその効果が小さくなっていくことが報告されています。

仲島浩紀. “『日焼け止めクリーム』 は紫外線をどの程度カットするの?: 女子高生の素朴な疑問に答える高大連携 「化学実験」 体験講座の試み (ヘッドライン: 市民として必要な基礎・基本の化学 VI-身近な疑問と化学 (なぜ○○ なのか?)).” 化学と教育 60.4 (2012): 160-161.

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