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化合物が溶けない時はどうするか?

溶解性が悪い

固体が溶けません!

有機合成をやっていると、溶媒に溶けない化合物に遭遇することがときどきあります。化合物が溶けなければ反応をかけられないし、精製もできない、NMRを測定できないなど困ってしまいます。

固体が溶けない時はどうすればよいかまとめてみました!

1.他の溶ける溶媒を探す

溶媒を変えたらすぐに溶けることは良くあります。簡単に試すことができるのですぐに試しましょう。塩化ナトリウムにヘキサンを加えていくら頑張ってもほとんど溶けませんが、水を入れればすぐ溶けます。化合物の物性にもよりますが、高極性の溶媒を使用すると溶けることが多いです(メタノールやDMSO)。

注意点として、溶媒によっては化合物が壊れたり反応したりする場合があるのでその溶媒を使っても良いかどうか考えましょう。例えば、水に不安定な化合物はたくさんあります。アルコールなどのプロトン性溶媒なども気をつけたほうが良いかもしれません。塩基性のピリジンや酸性の酢酸など、化合物の反応性を考えて選びます。また、使用用途によっても適した溶媒は異なります。沸点が高すぎる溶媒をカラムクロマトグラフィーに使うと溶媒除去が困難になります。そういう場合は沸点が低いほうがよいでしょう。

2.熱をかける

溶けないときは熱をかけるというのは簡単に実施できるのですぐにためしましょう。沸点が低い溶媒(エーテルやジクロロメタン)などはあまり高い温度がかけられないし、蒸発してなくなることもあります。熱をかけたほうが溶けそうな分子は高沸点の溶媒を使用しましょう。ただし、化合物が熱に弱い場合は分解してしまうので注意しましょう。また、溶媒も熱に弱いものがありますので注意が必要です。DMFはあまり高い温度をかけ続けると少しずつ分解していきます。熱に強い溶媒を使用しましょう。

3.細かくする

溶媒に溶ける部分は溶媒に接している部分だけです。乳鉢などを使って、できるだけ細かくすることによって、溶媒と接する面積を広げてより溶けやすくできます。溶ける化合物でも、大きい塊になっているものは溶けにくいです。

4.とにかく混ぜる

結構たくさん溶けるのに、溶けるのが遅い物質も多いです。水酸化ナトリウムは結構量は溶けるのに、溶けるスピードが遅いです。そういうときは撹拌が効果的です。ガラス棒でかき混ぜるのは大変なので、スターラーを使って数十分間ほっておきましょう。固体が少なくなっているかもしれません。

5.溶かさない

固体を溶かしたけど溶け残ってしまうものがある時はろ過して除きましょう。溶ける部分と溶けない部分は別の物質の可能性があります。精製しようと思ったけどそのへんの溶媒に溶けないときは、溶媒で洗うだけできれいになっている場合もあります。反応する場合はある程度溶け残っているまま反応をかけたり、溶媒を入れないで反応をかける(特に反応相手が液体の試薬の場合)とうまく溶けたりする場合があります。

6.超音波

超音波は非常に強力な方法です。超音波は一台あると便利です。超音波を当てると微細なキャビテーション気泡が発生して固体表面をバンっとやって溶かしてくれます。有機合成に限らず、生化学、生物学分野でも微量の溶けにくい物質を振盪せずに溶かせるのでよく使用します。汚れ洗浄にも使えます。

7.溶解性を上げる構造に変換する

どうにも溶けない場合は化合物を思い切って変換してしまうのも手です。溶解性を上げるために化学構造を変えるというのはよくやる方法です。糖類は水酸基がたくさんあって通常は水にしか溶けません。これではとっても不便なので、合成の初期段階で、水酸基を保護して有機溶媒への溶解性を上げます。ついでにUV吸収のある保護基を使用することで、TLCを見やすくするという工夫もします。保護基を使う必要はありませんが、保護基は反応性を抑えて副反応を抑制するという以外にも、機能性を付与するという面もあります。溶けにくい物質で高極性なものは極性を下げたり、低極性なものでも平面性が高い物質などは長い炭化水素鎖やPEG鎖などを導入することで溶解性を上げるということもできます。

8.溶かさない

諦めるのではありません。もっと前向きな選択-溶かさないんです。世の中何でも溶かさなきゃだめだと思っている人がいますが、固体でもNMR測定したり、固体でも反応を進行させることが可能です。ただし基本は溶かしましょう。

9.マイクロウェーブ反応を使う

マイクロウェーブ反応装置がある場合は、高温高圧、マイクロ波アシストによる反応でうまく行くことがあります。


それは本当に溶けているのか?

頑張って溶かしているけど全く溶けていないのなら、その溶媒を使用するのはあまりおすすめできません。溶けているかどうかは、化合物に色でもついている場合はわかりやすいでしょうが、大抵はよくわかりません。そういう場合は、TLCプレートに濃いめにスポットして、UVあるいはヨウ素などでスポットがあるかどうか確認しましょう。きれいな物質の場合は展開しなくてもよいでしょう。
全く溶けないとき、それが有機化合物ではない別物の場合もあります。例えば、海砂、コルク栓・ゴム栓のカス、ガラス破片、紙、金属片、硫酸ナトリウム、シリカゲル、セライト等々、あげればキリがありません。もしもその化合物が得られるまでの間に上記のようなものを使っていて、「そう言われてみれば似てるかも?」と思う場合は、取り出してルーペで観察してみたり手触りを確かめてみましょう。取り出したら塩だったということもよくあります。

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