亜硫酸塩などは還元力を持っているので還元反応に使用することができます。チオ硫酸ナトリウムはカルキ抜き(塩素除去)に使われる還元剤で酸化剤のクエンチに利用したりします。今回は仲間である亜ジチオン酸ナトリウムの還元反応についてまとめます。
亜ジチオン酸ナトリウムとは?
亜ジチオン酸ナトリウムは別名、ハイドロサルファイトナトリウムとも言われる化学式Na2S2O4で表される化合物です。還元剤として利用されていて、食品添加物にも利用されているようです。臭いは硫黄系の香りがかすかにします。水溶液として使うことが多いので水溶液を作り置きするパターンがあるかもしれませんが、徐々に分解するので作り置きなどはやめた方がよいです。
アルカリ性ではより高い還元力を示すため、NaOHや炭酸カリウムなどを加えて反応させることも多いです。
亜ジチオン酸ナトリウムはニトロ基の還元(ニトロソ、アゾ基)をはじめとして、アルデヒド、ケトン(不飽和)、イミン、オキシムなどの還元反応に利用できます。
亜ジチオン酸ナトリウムの利点は
- 安価
- 金属を使用しない
- 安全性が高い
などです。
亜ジチオン酸ナトリウムによる還元反応
先に述べたように亜ジチオン酸ナトリウムによる還元反応は多岐に渡りますが、そのうち代表的な例を取り上げます。
ニトロ基の還元
ニトロ基の還元はニトロフェノールをアミノフェノールに変換する用途によく使用されます。
THF(855μL)およびエタノール(723μL)に原料(54.5 mg, 0.19 mmol)を加えて、0℃で水(2 mL)に溶かした亜ジチオン酸ナトリウム(651mg,3.74mmol)を加えた。出発物質が消失するまで反応物を室温で撹拌した。AcOEtで抽出し、後処理後、カラム精製を行い還元体(34.4mg,70%)を得た。
(Ref: Murai, Yuta et al Synlett, 27(6), 946-950; 2016)
金属などを加えず、加熱をしなくてもニトロ基を還元できます。フェニレンジアミンやアミノフェノールなどの電子供与基が多い、反応性の高い芳香族アミンを得るときに適しているようです。
α,β不飽和カルボニルのオレフィン還元
亜ジチオン酸ナトリウムでα,β不飽和カルボニルの二重結合を還元できます。ケトン、カルボン酸でも還元できます。共役している不飽和カルボン酸などの場合は2M NaOH水溶液等を加えて塩基性したほうが還元力が高く反応が進行しやすいです。この時γ,δが選択的に還元されます。
ref)Balasubramanian, Marudai and Keay, James G., e-EROS Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, No pp. given; 2001.
亜ジチオン酸ナトリウムによるキノンの還元反応の機構を教えていただきたいです。