「睡眠負債」は2017年のユーキャン新語・流行語大賞トップ10にも選ばれた話題の言葉ですが、実際に睡眠負債って何か知っていますか?
今回はそんな『睡眠負債』について解説していきたいと思います。
『睡眠負債』って?
睡眠負債(Sleep debt)はスタンフォード大学のウィリアム・C・デメント教授によって提唱されたもので、以下のように定義されています。1)
「ヒトは一定の睡眠時間を必要としており、それより睡眠時間が短ければ、足りない分がたまる。つまり眠りの借金が生じる」-ニューズウィーク日本語版 1)
簡単に表現すると、睡眠時間は毎日一定時間必要で、短ければ負債になって貯まって良くない!ということですね。
画像1: End your Sleep Depriviationより引用 2)
上記の画像は、ウィリアム・C・デメント教授とその学生が運営するサイト End your Sleep Depriviation2) で睡眠負債について解説しているものですが、最初は少量の睡眠負債を抱えていても元気ですが、いずれは貯まり過ぎて突然眠りに落ちてしまうという症状を表しています。
『睡眠不足』との違いは?
『睡眠不足』というのは単純に睡眠が不足してしまっている状態です。クレジットカードを例にすると銀行の残高不足状態ということですね。これをすぐに返済できれば問題ないですが、この不足状態がどんどん続くと『睡眠負債』になってしまいます。さっきのクレジットカードの例でいえば、残高不足が続いてしまい、カード使用停止やブラックリストに登録されてしまうなどの大きな問題になってしまうことが『睡眠負債』です。
『睡眠不足』が貯まりすぎると → 『睡眠負債』
『睡眠負債』の原因
『睡眠負債』の原因は、先ほども述べた通り、睡眠不足が積み重なった結果です。しかもこの睡眠不足がたった一時間でも貯まっていけば最終的に睡眠負債となってしまいます。
『睡眠負債』による症状
睡眠不足が続いて『睡眠負債』になってしまうと、慢性的に眠いというだけではなく、生活や仕事の質が低下するだけでなく、うつ病、がん、認知症などの疾病に繋がるおそれがあります。ペンシルベニア大学が2003年に行った研究によると、6時間睡眠を2週間続けた被験者グループの脳の働きが、2晩徹夜したグループと同程度まで低下することも報告されています。また、自治医科大学が行った研究によると、睡眠時間が6時間以下の人は7~8時間の人より死亡率が2.4倍も高くなり、交通安全を推進するアメリカの非営利団体「AAA Foundation for Traffic Safety」の調査で、平均睡眠時間が6時間未満の人は交通事故による死亡率が13%も高まるという報告もあります。3)
『睡眠負債』を解消法
『睡眠負債』の解消法は、睡眠をしっかりとるということにつきます。ただし、いわゆる『寝だめ』の場合は逆効果となってしまいます。
また、自分の適切な睡眠時間を知ることが大事です。自分は健康的に睡眠が取れていて、6時間程度で十分だと思っている人の場合でも勘違いの場合があります。特にウィリアム・C・デメント教授が行った実験で、面白いものがあります。
ウィリアム・C・デメント教授が行った実験
若く健康な8人の被験者に、毎日同じ時間にベッドに入り、好きなだけ眠ってもらいます。眠れても眠れなくても、必ず毎日14時間ベッドで横になっていることを課し、4週間にわたっての睡眠時間の変移を調べました。典型的な被験者の場合、実験前の平均睡眠時間は7.5時間でしたが、実験初日は、ベッドにいなければいけないと決められた14時間のうち、13時間眠れ、2日目も、13時間近く眠れたのです。ところが、日を追うごとに睡眠時間は減少し、1週間ぐらいすると、ベッドに入っても4〜5時間は眠れないようになり、3週間後に、睡眠時間が8.2時間になって、それ以上睡眠時間が減ることはなくなりました。この8.2時間こそがこの被験者の適切な睡眠時間だったのです。
限界まで寝て、それを3-4週間続けてみよう!
もし自分の適切な睡眠時間が知りたい場合は、実際に時間を気にせず十分寝てみてください。それが10時間など極端に多い場合は睡眠負債を抱えていることになります。そこから3-4週間程度たてば先ほどの実験と同じように、自分の適切な睡眠時間へと落ち着くはずです。
関連動画
睡眠負債の提唱者である、ウィリアム・C・デメント教授が実際に睡眠負債について語っている動画があったので紹介します。英語です。
参考文献
1) ニューズウィーク日本語版「10年後の死亡率が最も低い睡眠時間は何時間か 日本人が知らない睡眠負債の恐怖」,<https://www.newsweekjapan.jp/stories/lifestyle/2019/02/10-54.php>2019年7月01日アクセス
2) End Your SLEEP DEPRIVATION, How much more will you achieve when you reduce your sleep debt?, [ONLINE] Available at: http://www.end-your-sleep-deprivation.com/sleep-debt.html [Acccessed, 01 July 2019]