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リンゲルマン効果 – 社会的手抜きの原因と解決方法

リンゲルマン効果

リンゲルマン効果 – 手抜きの心理学

まとめ
集団の中では周りに頼ろうとして個人はサボる傾向がある

序論:人間の行動は他人の影響を受ける

人間の行動は周囲環境の影響を受けて変化します。

暑さや寒さといった気候的な環境の変化以外にも周りに人がいるかどうか?といった変化でも影響を受けます

学校や自宅で自習の時に以下の状況の違いによって行動は変わりませんか?

  • 監督の先生がいる時
  • 周りに学生がいる時
  • 自宅の部屋で1人の時

集団の行動・心理は個人の心理の寄せ集めではなく、集団   特有の特徴が見いだされることから社会心理学の重要な研究対象の一つです。

リンゲルマン効果は個人の行動が集団という環境の中で変化することを調べた研究の一例です。

社会的手抜き (social loafing) 集団では手抜きする

個人の「能力」「生産性」「働き」などが一人でいる時よりも集団の中にいる時のほうが低下するという効果を社会的手抜きといいます。

例1 集会のときの挨拶の声

周りに沢山人がいる全校集会のような集まりの時に発する挨拶の声は周りに人がいるということで手を抜いて声を出さなかったり、小さい声を出す人は多いのではないでしょうか。誰が声を出しているか評価できないような場面では手を抜きがちです。

例2 グループワークの課題

グループで集まって課題を進めるグループワークでは誰かがやるだろうという思いで自分の仕事をサボりがちになります。「次回の集まりまでに〇〇の案の改善点を考えてこよう」という時に真面目にやってくる人は少ないでしょう。

リンゲルマン効果 リンゲルマンは何を調べたか?

リンゲルマンは個人のタスク遂行力に対して集団の規模が大きくなればなるほど個人のタスク遂行力が低下することを発見しました。

有名な例は綱引きです。綱引きの実験を行ったところ集団の人数が多くなればなるほど個人が発揮する力量が低下することを発見しました。

RingelmannExperimentResults

Teslawlo at English Wikipedia, CC BY 3.0

Ringelmann, M. (1913) “Recherches sur les moteurs animés: Travail de l’homme” [Research on animate sources of power: The work of man], Annales de l’Institut National Agronomique, 2nd series, vol. 12, pages 1-40.

原因と考察

個人は課せられた課題・タスクに対して、集団の中にいるとメンバーに頼ろうという意識が働く傾向があります。これは集団の人数が増えるほど増加します。これは意識的にも無意識的にも生じることが示されています。

  1. 協調減損(cordination loss)

Steinerはリンゲルマンの実験に対して集団のパフォーマンス低下要因として協調減損をあげました。協調減損は環境的な要因の一つで個々のベクトルが一致しないことで力をうまく発揮できないという意味です。綱引きで誰かが引っ張る方向やタイミングがずれると思うように力が発揮できないことが想像できます。

2. 責任の拡散

責任の拡散は社会心理学用語で周囲に他人がいる場合には個人の責任感ややる気が低下する現象です。

簡単に言えば他に人がいれば自分以外の誰かがやるだろうという意識が働くためやる気が低下するということです。

解決方法

集団に属することで発生する手抜きを防ぐための解決方法がいくつか示されています。

1.貢献度の可視化(個人の成果を識別可能にする)

集団に溶け込んでいるという感覚が増すほど手を抜く傾向になります。集団の規模が大きくなるほど手を抜くのは集団の中に隠れられる気がするからです。

また、集団の中では自分の貢献度がわかりにくくなるのでモチベーションが低下してやる気を失う可能性があります。

貢献度を可視化するためには

  1. 個人にノルマを課す
  2. タスクを分割して、遂行量を数値化できるようにする
  3. タスクの責任範囲を明確化する
  4. 大集団をいくつかのグループに分割する
  5. only one的な課題を設定する

2.タスクの明確化

集団の規模が大きくなるほどタスク内容は大きくなり、何をいつまでに、どれだけやったほうがよいのか?目標が曖昧になりがちです。明確な目標値(必達目標、努力目標…)を設定し、それを全員で共有します

Harkins, S., & Szymanski, K. (1989). Social Loafing and Group Evaluation. Journal of Personality and Social Psychology, 56, 934-941.

小窪輝吉. “社会的手抜きに及ぼす目標設定の効果.” 福祉社会学部論集 39.4 (2021): 15-26.

反対に効果を助長させるもの

  1. 集団の規模拡大
  2. 匿名
  3. 曖昧な課題、目標設定
  4. 非創造的課題(草むしりとかとんぼがけ、綱引き)
  5. 貢献度や効果が不明
  6. 課題の協働(タスク範囲の共有)

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