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反応機構の問題の解き方!-実践編①-

反応機構の解き方

反応機構を解く手順

反応機構を書くには、矢印を書く前にきちんと情報を集める必要があります。慣れないうちは手順を追って情報を集めてから、反応機構を書き始めるようにしましょう。矢印を書くのに慣れていない場合は、まずは矢印をスムーズに書けるように訓練しておきましょう。

反応機構を解くのに必要な予備知識!-化学反応式の見方-

反応機構を解く手順

反応機構を書く問題は、上のような反応式が与えられているはずです。問題によっては、生成物あるいは、試薬を推測せよ、という場合もあるかもしれません。まずは反応式の見方を確認しましょう。化学反応式には、

  1. 原料
  2. 反応試薬
  3. 生成物

が記述されています。1.原料は矢印の左側に書かれています

2.反応試薬は、矢印の上下に反応に必要な試薬(反応に使用する化学物質のこと)が書かれています。多段階の反応の場合(連続でいくつかの種類の反応をやる)は、I,II…やi), ii)のように試薬を加える順番が書かれている場合があります。また、温度や反応時間等の反応条件が書かれている場合もあります。

3.生成物はこの化学反応によって生成する化学物質のことです。目的の主生成物だけ書かれていることも多いです。だから、他の物質が生成していることもあります。
[box01 title=”反応式に出てくる条件、略語等”]
・Δ(デルタ):温度をかけるという意味
・heat:加熱
・reflux(加熱還流):加熱還流(溶媒沸点まで温める)
・r.t.:room temperatureの意味
・hν:光を当てて励起させる(光反応)
・neat:溶媒なしでという意味
・MW:Micro wave。マイクロ波で加熱
・then~:その後という意味。事を終えた後に、~を加えて反応させる
・~eq:~当量(原料のモルに対して~倍加えたという意味)
・~M :~ mol/Lという意味。2M HClaq → 2mol/Lの塩酸水溶液
・~ in-:-に溶かした~の意味。1M NaOH in MeOH → 1MのNaOHメタノール溶液
・excess:過剰に加えるという意味
・cat.(catalyst):触媒量(ごく僅かな量という意味)「.」は省略の意
・conc.(concentration):濃いという意。conc.HCl→濃塩酸
・dil.(dilute):希釈したという意味。dil.H2SO4→希硫酸
・aq.(aqueous):水溶液という意味。aq.KOH → KOH水溶液
・dist.(distilled):蒸留したという意味
・anhyd.(anhydrous):無水物の意味。水和物ではないということ。anhyd.Na2SO4(無水硫酸ナトリウム)
・dry~:脱水した~という意味。dry DMF→脱水DMF
・absolute:無水~という意味。absolute EtOH→無水エタノール
・MS.4A:モレキュラーシーブという脱水剤3Aや4Aなど種類がある
・in vacuo:減圧下での意味。脱水反応とか
・in situ:系中で、その場での意味。不安定な中間体だから反応中に発生させるという意味
・under N2:窒素雰囲気下という意味。酸素や水蒸気フリーと言う意味。
・~atm, ~bar:~気圧という意味。圧力をかけている。H2(20 atm) → 20気圧の水素で[/box01]


反応機構を解くための情報を集めよう-実践編①-

反応機構を解くために必要な情報解析

①各物質の性質を調べましょう。慣れないうちは調べることが多いと思いますが数をこなしておくとそのうち調べなくても平気になります。

反応機構を解くために必要な情報解析2

②登場する化学物質に番号を振ります。原料から番号を振ります。

③生成物の番号も原料、試薬の番号をもとに予想できれば振っていきます。

④他の生成物の予想も立てておく。

化学物質のどの部分が反応するかを予想する

複雑な物質でも反応する箇所は一部分だけです。主に反応する箇所は官能基と呼ばれる部分であることが多いです。官能基は物質を特徴づける構造だからです。まずはどの部分が反応するかを予想します。

  1. 化合物の性質と生成物から反応経路を予想する(結合が作られる部分と切られる部分を予想する)
  2. 電子が豊富な部分と不足している部分を書き表しておく

1.切断される結合は1の水素と酸素の結合、11と12の部分、結合を形成する部分は11と1の酸素原子です。

2.電子は豊富な部分(δ-)から不足している部分(δ+)に移動します。これが矢印の付け根と矢先になります。

反応機構反応機構を解く3

反応機構の矢印を書く-実践編②-

第一段階の反応

第一段階の反応

まず第一段階の反応から書いてみます。THFは溶媒なので反応には直接関与しないとしましょう。電子豊富な部分(矢印の根本の部分)は水素化ナトリウムの水素とアルコールの酸素原子があります。一方で電子不足な部分(矢じりの先にあたる部分)はNa原子、1、2番の原子です。ここでこれまで集めた情報を整理してみます。まず、水素化ナトリウムは強塩基でプロトンを奪います。そして、原料の水素1と酸素1の結合は切断される必要があります。この情報から考えると水素化ナトリウムの水素はアルコールの水素に攻撃する経路が一番良さそうです。生成する水素は気体として出ていきます。これによりアルコールよりも求核性の高いナトリウムアルコキシドが生成しました。

副反応の推測として、水素化ナトリウムの水素が2番の炭素に求核攻撃する→NaHの水素は求核性が低く反応は起きない。

試薬を役割別に整理して考えると反応機構を書くのに役立ちます。

溶媒:溶媒は固体試薬を溶解させて反応しやすくさせるために加えます。溶媒そのものは反応に関与しないことが多いです。DMSOやDMFは反応試薬としても使われることがあるので注意!

塩基:塩基はプロトンを引き抜いてアニオンとすることによって反応性を上げる役割があります。酸性度が高い水素がないかを確認しましょう。

:電子豊富な部分に配位します。カルボニル基などがあれば注意します。

他に有名な酸化剤還元剤などを覚えておくと役立ちます。

第二段階の反応

第ニ段階の反応

先程と同じように電子豊富&不足の部分を書き出します。ベンジルブロミドの臭素の結合は切断され、11と1の酸素は結合が形成されます。この情報を元に反応機構を記入すると、アルコキシドの酸素原子からベンジル位に攻撃が起こり、ブロモアニオンが生成します(求核置換反応、SN2反応)。この反応によってエーテル体の生成物が得られます。アルコキシドは塩基性・求核性が非常に高く不安定で反応が容易におこります。この反応はウィリアムソンエーテル合成とも言われます。


一つの反応機構の問題をいろいろと考察してみる

問題が解けても、もう少しその問題で考えてみると力が付くかもしれません。いろいろ可能性を考えてみて、友人や先生、先輩などと議論してみましょう。

例えば、

  1. 原料、試薬のどの構造部分は変更可能か?
  2. 同じ性質の他の試薬に代替可能か?
  3. 他の反応経路をたどって同じ生成物が得られるか?
  4. 副生成物が得られるのはどのくらいか?

などがあります。

この反応では、溶媒はTHF以外にもDMFやアセトニトリル、DMSO、トルエンなどを利用可能です。

塩基は水素化ナトリウムではなく、KOHやt-BuOK、Na、NaHMDSなども利用可能です。

原料のアルコールはアルキル鎖(炭素の部分)は他の構造でも可能ですが、嵩高いアルコールでは反応性が落ちる可能性があります。またアルコール以外にもチオールなどでも可能です。

ベンジルブロミドも他のアルキルハライドでも反応可能ですが、第三級アルキルハライドでは同じような反応機構ではSN2反応は起こりません。ブロモアニオンが脱離してカルボカチオンが生成してから、アルコキシドが反応します。

このように色々な条件を考えてみると反応機構を考えられるようになるかもしれません。

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