キノンは生体分子のなかにも含まれている重要な物質です。ビタミンKにはナフトキノン環、ミトコンドリアの電子伝達系ではユビキノンが関わっています。
キノン類の合成方法としてはフェノール類の酸化によりベンゾキノンとする方法が一般的です。本記事ではキノン類の合成方法について紹介していきます。
ヒドロキノンの酸化によるベンゾキノンの合成
ヒドロキノンの酸化により得られるベンゾキノンはカテコールから得られるオルトベンゾキノンの比べて安定で合成しやすいです。
ヒドロキノンの酸化は様々な酸化剤で酸化できます。
よく使われる酸化剤としては
- 酸化銀(Ag2O)
- CAN
- DDQ及びクロラニル
- 二酸化マンガン
あたりが良く使われます。
酸化銀はマイルドな酸化剤として知られていますが、銀はハロゲンとの反応性が高くハロゲンを含む基質とは反応してしまうため注意が必要です。CANを用いた酸化も優秀です。
ベンゾキノンの二重結合が酸化されてエポキシドなどを生じることがあるので反応時間や温度などを注意します。
ベンゾキノンはαβ不飽和ケトンとして、あるいは電子不足なオレフィンとして付加反応を起こすほか、キノンに特徴的な酸化還元反応も起こすことから反応性の高い分子です。
ヒドロキノンおよびアルコキシベンゼンの酸化
ヒドロキノンは合成の都合上、ヒドロキシ基をメトキシ基などで保護したアルコキシベンゼンとすることがあります。
キノン類の一覧
メトキシで保護されたベンゼンもCANなどの酸化剤でそのままキノンに酸化できるのでよくCANを酸化に使います。
アルコキシベンゼンの酸化によりキノンを得る方法
Wang, Jin et al Organic Preparations and Procedures International, 46(5), 469-474; 2014
水(10 ml)に過剰量のCAN(11 g、20mmol)を加えた溶液を基質(1.6 g、6.6 mmol)のアセトニトリル(10 ml)溶液に0℃で滴下しました。混合物を室温で1時間撹拌した。水(10 ml)を加えてCH2Cl2(20 ml)で抽出した。精製操作を行い92%の収量で目的物を得た。
CANはヒドロキノンもメトキシベンゼンも酸化してキノンを得ます。オルトキノンは生成しにくくp-キノンのほうが熱力学的に安定で生成しやすいです。溶媒は基本的にアセトニトリルを使います。
酸化剤はCANが有用ですが、他にジアセトキシヨードベンゼン、DDQも使われます。
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