ぎょう虫退治する超シンプルな構造の医薬品
ピペラジンは6員環からなる複素環アミンの一種です。窒素が一つ少ないピペリジンは常温で液体であるのに対して、ピペラジンは常温で固体です。pKaは9.8です。
このようにとても簡単な構造ですが、立派な医薬品として使われていました。
駆虫効果
ピペラジンは1953年に初めて回虫に対する駆虫薬として利用されました。ピペラジンを服用すると寄生虫の筋肉が麻痺して動けなくなり、糞から体外に排泄できるようになります。作用機序は、ピペラジンが寄生虫の神経筋接合部に作用すると神経伝達を遮断されて筋肉が麻痺、弛緩します。
対象寄生虫の例としては
- Ascaris lumbricoides(回虫)
- Enterobius vermicularis(ぎょう虫)
があります。
ピペラジンは非常に単純な構造をしているため、安価な医薬品として貧困地域の代替医薬品としての利用が期待できます。
医薬品として使用されるピペラジンは、硫酸、アジピン酸、クエン酸、マレイン酸などがあります。
現在はより強力で副作用の少ないベンゾイミダゾール系の駆虫薬が使用されています。
ピペラジンのその他の薬効としてはGABA受容体に対するアゴニスト作用です。
ピペラジンはGABA受容体に結合し、作用を発揮します。抗寄生虫効果も筋膜中のGABA受容体への作用であると考えられています。
ピペラジンの合成
ピペラジンの合成は1,2-ジクロロエタンとアンモニアとの反応によって合成できます。
ピペラジンの合成については総説があるので参照してください2)。
ピペラジンは両端に存在する窒素原子を介して鎖を伸長できるため、アミンリンカーとして利用されます。PEG鎖のように極性のリンカーでありながら、環状になっていることから分子の運動が制限されるので、運動させたくない時に向いています。
こめやん
ピペラジンは植物の毒成分であるアルカロイドにも含まれています
参考
1) 渡辺昇蔵, and 岩田神之介. “ピペラジン各種塩類による回虫駆虫試験.” 日本獣医師会雑誌 10.7 (1957): 307-309.
2) Gettys, Kristen E., Zhishi Ye, and Mingji Dai. “Recent advances in piperazine synthesis.” Synthesis 49.12 (2017): 2589-2604.