ルイス酸は酸と塩基の定義のうちルイスの定義によって定義付けられた酸で、AlCl3やBBr3などがあります。ルイス酸には沢山の種類がありますが、その強さの順列については未だに論文が出されるなど関心のあるテーマです。本記事ではルイス酸の種類とその強さについて紹介します。
ルイス酸とは?
酸の定義にはいくつか種類があり、代表的な定義は
「アレニウスの定義:水中でH+を生じる物質」
「ブレンステッド・ローリーの定義:H+を他に渡せる物質」
そしてルイスの定義があります。ルイスの定義は、
「非共有電子対を受け取る事ができる物質」
です。
アレニウスの定義では水中のみに限定してH+を放出できるもの。
ブレンステッド・ローリーの定義では水中に限らずH+を渡せれば酸です。
ルイスの定義ではH+でなくても、BF3のように電子対を受け取ることができるものは酸であるとしているため、ルイスの定義が最も当てはまる酸の種類が多いです。
一般的にH+を出すような酸(H2SO4やHNO3)をブレンステッド酸と呼び、H+を持たなくても電子対を受け取ることができる物質をルイス酸(BF3,AlCl3)として区別して呼びます。
ルイス酸の種類
全てのルイス酸を取り上げるのは難しいので、一部の代表的なものをとりあげます。
代表的なルイス酸といえば、塩化アルミニウム(AlCl3)や三フッ化ホウ素(BF3)があります。
これらのルイス酸には中心となる金属元素と金属と結合する電子吸引基が結合しています。
- ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、 ヒ素(As)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ハフニウム(Hf)、水銀(Hg)、ランタノイド、
などがあります。
また電子吸引基としては
- ハロゲン(F,Cl,Br,I)、トリフラート(OTf)
などです。
こめやん
これらを組み合わせるとルイス酸ができます。例えばBF3、AlCl3、TiCl3などです。
ルイス酸の強さの順番
ルイス酸の強さは一義的に決定できるものではなく、現在に至ってもルイス酸の強さを測定する方法が論文で報告されています
Joshua Gaffen, A Simple and Effective Method of Determining Lewis Acidity by Using Fluorescence, Chem5, 1355–1356, June 13, 2019
報告されている代表的なルイス酸の強さの順列は概ね以下のようになります。
BX3>AlX3>FeX3>GaX3>SbX5>InX3>SnX4>AsX5>ZnX2>CdX2>HgX2
強いルイス酸の傾向としては、
- 中心原子(金属イオン)の電気陽性が大きい
- イオンの価数が大きい
- イオン原子半径が小さい
- 中心原子(金属イオン)に結合する元素の電気陰性度が大きい(ハロゲンは別?)
ルイス酸の強さはその中心となる金属イオンの電気陽性が大きいほど強くなります。
また、イオンの価数が大きいほど酸性度が高くなります(二価の金属イオンよりも三価の金属イオンのほうが酸性が強い)。
イオンの原子半径が小さいほど酸性は強いです。アルカリ金属(Li, Na,Kなど)はイオン半径が大きく、酸性度は弱いです。
イオン価数が大きいほどイオン半径が小さくなるため酸性度が強いです。同族の原子からなるルイス酸の場合、周期が大きくなるほど原子の大きさが増すので酸性度は低下します。
CuX2>AgX2>AuX2 Cu,Ag,Au(第4,5,6周期)
金属イオンに結合する元素はその電気陰性度が大きいほどルイス酸性が強くなります(ハロゲンはX)。
Me3B<B2H6<BF3 (Me<H<F:電気陰性度)
5配位のルイス酸は電子対をを受け取って8面体構造を取れることから幾何学的に安定です。(PCl5、SbF5等)
フッ素は半径が小さく安定な八面体構造をとることができるので、ルイス酸性は強くなります。SbF5は非常に強いと言われているルイス酸の一つです。
一方で、BBr3とBF3ではBBr3のほうが強いルイス酸です。これは、BF3のホウ素の空のp軌道はフッ素原子の占有p軌道と重なるため、酸性度が低くなります。臭素ではこの効果は小さくなります。
BH3<BF3·OEt2<BCl3<BBr3<BI3
Ti(OiPr)4<TiCl2(OiPr)2<TiF4<TiCl4<TiBr4.
AlEt2Cl<AlCl3<AlEtCl2
ZnCl2<ZnI2·OEt2<ZnBr2.
ホウ素以外の元素でもフッ素よりも塩素や臭素の方がルイス酸性が強い傾向があります。
ルイス酸の強さの順番が上記の通りになる参考文献を教えてください
どこの部分についてでしょうか?
現在に至ってもルイス酸の強さを測定する方法が論文で報告されていますとありますが、どの論文かおしえていただけませんか?