どうにか現状を変えたくても、何をやってもムダ!
そんな環境下に置かれると生物は
「慣れて、抵抗しなくなる。しかも、後に変えられる状況になっても、何も行動しなくなる」
これを「学習性無力感 : Learned helplessness」
と呼び、研究、発表した人がいます。
マーティン・セリグマンがその人です。
学習性無力感を研究した心理学者 マーティン・セリグマン
マーティン・セリグマンはペンシルバニア大学で心理学の教授、1988年にはアメリカ心理学会の会長を務め、「ポジティブ心理学」という新たなジャンルを作り出した人です。
2002年に出版された「A review of general psycology survey」という著書の中で、セリグマンは20世紀最も引用された心理学者31位にランクしてます。
研究としては「学習性無力感」が有名で、うつ病及び関連する精神病の研究を行っています。
1967年にペンシルバニア大学で行われた学習生無力感の実験はうつ病研究の延長で行われた実験で偶然に発見されたものだそうです。
自分を無力だと学習してしまうこと
「学習性無力感」とは
自分の行動とは関係なく、何をしても回避できない嫌悪刺激を受け続けると、その不快な状態を回避できるようになることです。
つまり何をやってもムダだ。自分が何をやろうが状況は変化しないという「無力感」を体験から学習することで
無気力、無力感あふれる人、何も行動できなくなる人になってしまうということです。
抑うつ状態(気分が落ちて病んだ状態)や子供の学業不振に至るメカニズムに関連するとして注目されてます。
犬に電撃を与え続ける実験
セリグマンらは犬に電撃回避学習の実験を行なうために犬をAとBのグループに分けました
A:床のスイッチをおすと電撃を停止できるグループ
B:電撃を停止できないグループ
Aの犬たちはスイッチを押すと電撃が止められることがわかると電撃を受けるとスイッチを押して電撃を止めるようにします。
一方Bの犬たちは電撃を嫌がりますが、電撃を自分で停止することができないので、次第に何をやってもムダだと感じるようになり、回避行動を取らなくなりました。
次に2つのグループを柵を飛び越えると電撃が回避できる部屋にいれて実験を行ったところAの犬は回避行動をとりましたが、Bの犬は何もしなかったそうです。
ヒトでも同様のことが起きる
ただ電撃に慣れただけじゃないかという気もしますが、セリグマンの実験では嫌なことをされても回避しなくなるということになっています。
そしてこの学習性無力感は嫌なことの大小はあまり関係ないようです。
学習性無力感は犬だけでなく、サルやマウス、ヒトでも同様に起きることがわかっています。
ヒトにとってこの学習性無力感は拉致監禁、虐待、いじめ、ブラック企業でのハラスメント等々の場所で起こり、問題となります。
ムダだと思うことを減らそう
ムダだと思っていることが多い場合は危険です。何もかもが無気力な学習性無力感の状態に陥っているかもしれません。
「努力が無意味」な場所に身を投じつづけるのではなく、「努力が実る」環境に移ることも重要です。
どうせ意味ない、ムダ、やる気しないという言葉が口癖の人は要注意です。
やって意味がある、自分が貢献できる、自分の行動で変化させることができる。そういったことを少しずつ増やして勝手に形成してしまった無力感を克服して実りある毎日を過ごしましょう
Maier, Steven F., and Martin E. Seligman. “Learned helplessness: Theory and evidence.” Journal of experimental psychology: general 105.1 (1976): 3.