噛みタバコって知っていますか?普通のタバコが追いやられているなか、電子タバコのような煙が出ないタバコが注目を集めています。そのなかでも噛みタバコのやばさが話題になっています。
噛みタバコは煙は出ませんが、有害で口腔がんの発生率が大幅に高くなると考えられています。そんな噛みタバコについて紹介します。
こめやん
噛みタバコとは?
最近は東京オリンピックに向けてか禁煙・分煙ブームで喫煙者は追いやられています。
こめやん
【さらばジョナサン】仕事場がなかった三上はファミレス・ジョナサンで約20年仕事してきました。けど終わりの日が来ちゃった。ついに完全禁煙(隔離された喫煙ブースさえNG)になる。俺の居場所なくなった。。 pic.twitter.com/YBkIN3q4lg
— 三上洋 (@mikamiyoh) 2019年8月24日
一方で、紙タバコ特有の紫煙が発生しない電子タバコが普通の紙タバコよりも健康に良さそうなイメージがあるからかブームになっています。世界的に見ても日本は電子タバコが流行しています。
実は日本人は馴染みないかもしれませんが、タバコには電子タバコ以外にもたくさんのタバコがあります。そして、煙が全く発生しない種類のタバコもあります。そのうちの一つが「噛みタバコ」です。
噛みタバコは東南アジア諸国で人気です。タバコの煙に有毒性があると思いがちですが、噛みタバコも有害です。安全だと思って気楽に手を出してしまうとやばいことになります。
噛みタバコのヤバさは発がん性にある
噛みタバコは、タバコの葉に香料や甘味を加えたもので、口の中に含んで噛んで使用します。
特に噛みタバコ利用者が多いインドでは、口腔がんの罹患率は日本の10倍以上と言われています1)。噛みタバコが人気な東南アジア周辺国では世界と比べて圧倒的に口腔がんの有病率が高いことから、噛みタバコが口腔がんの原因と考えられます。
1) Gupta, P. C., Warnakulasuriya, S.: Global epidemiologyof areca nut usage. Addiction Biol,7:77~83,2002.
世界では一年間に30万人以上が口腔がんに罹患していて、5年生存率は55%です。
この噛みタバコは燃やさないので有毒成分が少なそうですが、各種アルデヒド類、多環芳香族炭化水素、ニトロソアミン類などの発がん性が疑われている化合物が含まれています。依存性が高い物質であるニコチンも含まれているためやめられなくなります。
2) Stepanov I, Jensen J, Hatsukami D, Hecht SS. Tobacco-specific nitrosamines in new tobacco products. Nicotine Tobacco Res. 2006; 8: 309-313.
噛みタバコはこれらの発ガン性物質による影響で、頬粘膜がんや歯肉がんを発症しやすくなります。
噛みタバコを常用している人は、特に頬粘膜や歯肉に白色の病変を生じることが多いです。これは白板症と呼ばれる皮膚の変性で、将来的にがんに発展する可能性が高いです。
噛みタバコで発がんしやすい人は遺伝子的な差異が影響していると考えられています。こうした違いはシトクロームP450 2A6に現れます。シトクロムP450が発がん前物質を発がん性物質に代謝しますが、これが欠損している遺伝子多型の人は口腔がん発症率が低いです。
口腔がんの有力な治療法は病変部位を切除することですが、舌や頬などは発話や呼吸、嚥下や味覚に関わることから、病状によっては
- 味覚を失う
- 飲み込みにくくなり、誤嚥しやすくなる
- 話せなくなる
などのヤバさがあるんです。こうしてみると噛みタバコに簡単に手を出したくなくなりますね
こめやん
メジャーリーガーは噛みタバコを噛んでいた
ちょうどアメリカで野球が人気を博していた頃に、噛みタバコも男性の間で人気がありました。メジャーリーガーもその例外ではなく、多くの選手が噛みタバコを噛んでいたようです。
噛みタバコを噛むと唾液がたくさんでてきます。その唾液にはたくさんのニコチンを含むので吐き捨てるという使い方をします。
特に、野球中は砂埃などが舞って口の中に砂利が入るため、噛みタバコを噛むと唾液がでて、口から砂埃を吐き捨てやすくなるため野球選手に広く受け入れられたようです。
ただし、多くのメジャーリーガーは噛みタバコが原因と思われる口腔がんでなくなっています。メジャーリーガーのビル・タトル、ベーブ・ルース、レックス・バーニー、トニー・グウィンなどはタバコが原因と思われるがんにかかっています。
このようなことを受けて、1993年にはマイナーリーグでの無煙タバコの使用が禁止され、長らく、メジャーリーグでは禁止されていませんでしたが、2016年の新しい協定では、メジャーリーグでの噛みタバコの使用が禁止されました。
噛みタバコの危険性はがんだけではありませんでした。かつては、結核の伝染に噛みタバコが関わっていました。噛みタバコはつばを吐き捨てて使用するものだったので、結核感染者の唾液が撒き散らされて感染源になっていたのです。
さらに道路が整備されていなかった当時は砂埃や工場排煙による大気汚染があったため、タンが出やすかったようで「痰壺」なるものが駅や公園などの公共施設で設置するのが公衆衛生法で義務付けられていました。
こめやん
噛みタバコとスヌースは別物
噛みタバコにはいくつか種類がありますが、「ルーズリーフ」が最も一般的な噛みタバコです。他には「プラグ」と呼ばれる直方体の塊や紐状の「ツイスト」、小袋に入った「チューバッグ」があります。
ルーズリーフは刻まれたタバコの葉と甘味料、香料が混ぜられたものでベトベトしています。これを口に入れて噛んだり、上唇と歯の間に挟んだりして使います。噛むことによって、ニコチンを放出することができます。噛む回数を調節してニコチン量を調節します。噛んで出てきたジュース(+唾液)は大量のニコチンが含まれていて中毒になるので吐き捨てます。
一方、日本でも少し話題になった「スヌース」は嗅ぎタバコという分類のもので、上唇と上歯の間に挟んで使用するもので、噛む必要はありません。噛まないので、唾液を吐き出す必要もありません。嗅ぎタバコはスウェーデンなどの北欧で人気です。しかし、発がん性などの毒性の面では同じなので安全ということはありません。
煙がでるタバコは人に迷惑がかかり、実際に駆逐されはじめているので煙が出にくい電子タバコに注目が集まっています。
しかし、電子タバコであっても臭いの問題や有毒物質の放出などの問題は解決されていないので、煙が全くでないタイプの嗅ぎタバコが注目されるのは当然の流れでしょう。
タバコの有害性は煙に有ると思われがちですが、タバコの葉を服用する無煙タバコも発がん性等の毒性・副作用があることを認識しておくのが重要ですね。
参考文献
I)千葉逸朗. “< 総説> アジアの口腔がん予防.” 東日本歯学雑誌 22.1 (2003): 1-9.
2)Wikipedia English : Chewing_tabacco
今の嫌煙の主流である動機は、匂いが嫌いだからという個人的なわがままであり、そういう意味では一切の副流煙がでない噛みタバコや嗅ぎタバコは本人で完結するものなので、現代のタバコの楽しみ方としては社会的な公約数の中に入れても良いかと。
アルコールや薬物などより他人への迷惑度という面ではマシかと思う。
臭いが嫌だからという理由だけで肺癌になる訳がない。明らかな健康被害が有るからこそ煙草を嫌うのだ。噛み煙草を選択していただくのは大いに結構。受動喫煙を無くす為に全ての喫煙者が噛み煙草にシフトしてくれないものかと思う。本人以外に煙草の健康被害がなければ、胃癌になろうが食道癌になろうが本人の自由意志の結果になるわけだしな。