お肉をさらに美味しくいただく方法として「熟成肉」が一時期話題になりました。
熟成をさせると肉にどんな変化がおこるのか調べてみました!
熟成肉とは?
熟成肉とは
「とさつ後に死後硬直によって固くなった筋肉を冷蔵することによって再軟化させた肉の事」
つまり、死んですぐは死後硬直によって肉が固くなって美味しくないので、少し時間をかけてから食べるほうが柔らかくなって美味しいということです。牛肉では、死後硬直は5℃保存で約10日ほどかけて解けるようです。
でも、そのへんで熟成肉と言われているものってもっと長い時間をかけてるような印象ですよね?ならば、「10日以上放置しても美味しくはならない」のか?というとそういうわけでもなさそうです。一体他に何が起きているのでしょうか?
美味しいお肉の条件
詳しく、熟成肉に起きていることを知る前に、まずは美味しいお肉とはどんなお肉のことかをまとめてみます。
肉の美味しさには「見た目」と「あじ」の2種類があります。それぞれの要素は
見た目: 色、サシ、キメ
あじ: 食感、味、香り
となっています。
見た目としては、「色」は黒ずんでいるお肉よりも鮮やかな赤い色をしているほうが美味しそうですよね!新鮮な肉のほうが、色味が良く「鮮紅色」をしてます。(時間が経つと血液の色成分であるヘムが化学変化を起こして色味が悪くなる)
「サシやキメ」はきれいなサシが入った牛肉は高級感も有り美味しそうに見えます。
「あじ」に関しては字の通り、肉の味や香りに加えて、固く繊維質ではない食感ではない肉のほうが美味しく感じますよね?
熟成肉が美味しくなるのはこのいずれかが美味しいと感じるように変化します。先程、肉の柔らかさは死後硬直が解けることによって柔らかく、美味しくなると言いました。では他に何が変化するかというと
「香り」 が変化します。肉を熟成させることで独特の美味しい香りになるみたいです。
熟成香の生成
肉の熟成によって出てくる香りは「熟成香」と呼ばれていて、ナッツやミルクを思わせる牛肉独特の香りがします。なんとこの熟成香は牛肉に付着している細菌によって生まれているらしいです!
細菌って、もう腐っているみたいなもんですね
この熟成香は適度な脂肪分があったほうが生成しやすく、豪州牛などよりも和牛のほうが向いています。
熟成香の生成は牛肉に常在し、低温を好む無害菌の通性嫌気性細菌のBrocothrix thermosphactaによるものであると報告されています。牛肉表面を殺菌して熟成させると熟成香が抑えられたことから、細菌による仕業だということがわかりました。(クロラムフェニコール(抗生物質)orNaN3溶液を塗布した牛肉では熟成香生成は著しく抑えられた。)
渡辺乾二・佐藤泰:日畜会報,45,113(1974).
熟成香の生成には長期間の熟成が必要で60-90日間行います。冷凍牛肉のエイジング(熟成)では肉から出てくる水分(ドリップ)が原因で不快臭が発生することもあり、管理が難しく本当に腐っちゃうこともあるみたいです。熟成肉を作るにはきちんとした管理と時間が必要なんですね!
熟成の方法
熟成は温度0-3℃の低温で行われます。
肉の熟成方法にはドライエイジングとウェットエイジングの2法があり、
ドライエイジング:表面を乾燥させる方法。保管期間は長期になることが多い。管理が難しい。
ウェットエイジング:湿った状態で保管させる方法です。(今回はこちらの方法を中心に紹介)
熟成期間
熟成には短期間の熟成と長期間の熟成があります。
短期間の熟成:「死後硬直による硬さを柔らかくする」→柔らかさUP!
(2周間程度)
長期間の熟成:「細菌による熟成香の発生」→香りUP!
(60-90日程度)
熟成の仕組みー肉が柔らかくなる理由
死後硬直によって固くなった筋肉は、徐々に細胞中に存在するプロテアーゼという酵素によって、筋繊維を保持しているコラーゲン等を分解されていくためだんだんと柔らかくなっていきます。(この時にできるタンパク質の分解物であるペプチドに不快臭をマスキングする成分や旨味成分などがあることも報告されています。)
熟成肉は家庭で作ることが可能?
家庭で熟成肉をつくるのは不可能ではないかもですが、食中毒などの危険があるのでやめたほうが良いです。
お店の場合だって危険な場合もあります。例えば、
・お店で熟成肉をショーケースに入れて熟成しているような場合
このような熟成方法は衛生上よくありません。開閉が多い保管方法では有害な微生物の付着の可能性があるからです。食肉業者では、一定した管理のもとで作っています。
・熟成肉の生食
通常の肉よりも食中毒リスクは高いため危険です。生食可能な肉でも食中毒のリスクはあります。ちゃんと加熱してから食べたほうがよいです。