不活性ガス雰囲気下とは空気中に存在する反応しやすい分子である水蒸気(水)と酸素を除き、反応しにくい窒素またはアルゴンに置換した状態で、という意味です。ところで窒素もアルゴンも不活性だと言われていますがその使い分けはどうすれば良いのでしょうか?
不活性ガスを使う理由
不活性ガスは様々な分野で利用されています。身近な例では、窒素ガスを封入したスナック菓子など食品業界や、金属の精錬やアーク放電、半導体製造、研究室での実験に至るまで様々な場面で使われています。なぜこんなに多くの場所で不活性ガスが利用されているかというと、空気中に存在する「水蒸気(水)」と「酸素」の反応性が非常に高く、空気中で作業すると反応してしまう可能性があるからです 乾燥状態のものを空気中で放っておけば、徐々に空気中の水分を吸ってしまい、細菌やカビがわきやすくなったり、加水分解反応が起こったりする可能性があります。酸素は金属を含む多くの化学物質を酸化させる力をもつ厄介な分子です。金属の精錬などでは高温条件にさらされるため、空気中でやったらあっという間に酸化してしまいます。こういった望まない反応を防ぐために不活性ガスは必要です。
不活性ガスの代表-窒素とアルゴンの違いは?
窒素とアルゴンはどちらも不活性ガスとして利用されていますが、不活性ガスとして使い分けをしていますか?意外とあまり気にしないであるのを使っているかもしれませんが、両者の違いについてしらべてみました 。
窒素 | アルゴン | |
族 | 15族 | 18族 |
比重 | 0.97 | 1.38 |
反応性 | 常温ではほとんど不活性だが、高温では反応する | 常温・高温ともに不活性 |
値段(7千L) | \5,590 | \10,789 |
なんと窒素は確かに常温では不活性だが、高温では反応することがあるようです。一方でアルゴンは18族原子だけあってかなり安定で高温条件でも反応しないようです。それだけあって、値段も窒素のほうが安く、アルゴンはより高価です。
高熱条件or金属関係に利用する場合はどうやらアルゴンを使ったほうがよいかもしれません。
窒素と金属は反応するの?
アーク溶接では不活性ガスとして窒素は使いません。アルゴンや二酸化炭素を不活性ガスとして用いています。これは高温状態では窒素は金属に溶けやすくなるため、冷えて固まったときに溶解した窒素が気泡となってでることで金属をもろくしてしまうようです。また窒素と金属の反応を使って「窒化処理」といって金属を強くしたりするのに利用したりする場合もあります。
実は窒素と金属は反応する例が結構あります。常温なら不活性と思っていたらそういうわけでもないんですね。チタンクロライド(TiCl4)とマグネシウムと窒素を加えて撹拌するだけで窒素とチタンの錯体ができるということが報告されています1)。
1)魚住泰広, 森美和子, and 柴崎正勝. “チタン‐窒素錯体を用いた有機合成反応の開発 新規 N1 ユニット試剤の開発研究.” 有機合成化学協会誌 49.10 (1991): 937-946.
アルゴンの比重は空気より軽い?
コメントありがとうございます。アルゴンの比重は空気より重いです。