Benkeser還元(ベンケサー還元)はバーチ還元の変法
ベンケサー還元はバーチ還元と同様にアルカリ金属を使った還元方法です。アルカリ金属としてはナトリウムよりもリチウムやカルシウムを使うことが多いです。
バーチ還元と異なるのは、液体アンモニアではなく第一級アミンを溶媒として用いることです。第一級アミンとしてはメチルアミン、エチルアミン、エチレンジアミンなどが用いられます。
バーチ還元との違いをまとめると
- 高い温度で反応できる(液体アンモニアは沸点が-33℃で室温にできない)
- アルキルアミンがプロトン供与体となるのでアルコールを加える必要がない
- アルキルアミン中にはアルカリ金属の溶解度が低く、懸濁した状態になることもある。
- 塩基性の強い金属アミドが生成するので塩基に弱いものは使えない
- 芳香環はモノオレフィンまで還元される
ベンケサー還元では、バーチ還元と同様に生じた1,4-シクロヘキサジエンが強塩基のアミドイオンの存在によって1,3-ジエンに異性化します。これは1,4-ジエンよりも還元されやすいので、モノオレフィンを与えます。
溶媒はエチレンジアミンを用いた条件が最も還元力が高いと言われています。
ベンケサー還元の反応性
芳香族アミン
芳香族アミンはベンケサー還元ではシクロヘキサンまで還元されます。ジアルキルアニリンはエナミンで反応が止まります。
内部アルケンの還元
ベンケサー還元では内部アルケンの還元も可能です。4置換オレフィンの場合はHMPA-tBuOHを使った条件が適しています。
参考
https://www.sciencedirect.com/topics/chemistry/benkeser-reaction