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創薬化学における疎水性 (脂溶性) に関するパラメーターまとめ

医薬品合成において疎水性 (脂溶性) は重要なパラメーターの一つです。

疎水性が医薬品合成において重要なパラメーターである理由として、疎水性が代謝、膜透過性、吸収率に大きく関連していることが挙げられます。

そこで、今回は誘導体の評価等に用いられる疎水性パラメータについてまとめてみました。

化合物自体の疎水性

化合物自体に対しての疎水性を計る指標は、一般的に創薬化学でよく用いられます。基礎としてはLogPが中心なのですが、近年では計算の妥当性が上がったことから、その予測値もよく用いられます。

LogP

化合物の疎水性パラメーターの値においても、創薬化学の分野で採用されているQSARにおいても最も利用されている指標です。具体的な測定法としては化合物を水と1-オクタノールとの混合物に溶かして濃度比を出します。それを分配係数Pとして常用対数で定量化します。近年では、直接水と1-オクタノールを用いて分配するよりも、既知の化合物とHPLCを用いた簡便な手法が多く用いられています。

LogD

上記のLogPは疎水性パラメーターとしてよく用いられますが、カルボン酸やアミンなどのイオン性官能基を持った化合物の場合、水層のpHによってLogPの値が変化してしまいます。そこで、pHの値を加味したLogPの値を示すことで、そのような場合においても比較することができ、その値がLogDになります。LogDにはその後ろにpHの値を示す必要があり、LogP =7.4 や LogP = 6.8などが有名です。pH = 7.4は血液中、pH = 6.8は腸管のpHを表していて、それぞれの体内動態中での疎水性を比較するのに用いられます。

LogPの予測値

LogPの計算値には計算手法の違いによっていくつかあるのでまとめます。

部分構造を中心とした予測値

LogPの予測値として最も頻繁に使われているのがClogPです。こちらは化合物の部分構造(フラグメント)に分けて得られる計算値であり、HanschとLeoによってはじめて報告されています。フラグメントの疎水性と、それぞれのフラグメントからなる相互作用について補正した値がCLogPとなります。

その他フラグメントを使った予測値: MiLogP

原子を中心とした予測値

フラグメントを使ったアプローチとは別に、個々の原子についての寄与を調べて得られる値であり、ALogPが有名です。

その他原子を中心とした予測値:XLogP、BLogP、QLogP

その他の計算値

その他にも脂溶性と疎水性部位の二つに分けて考えるMLogPや原子を中心とした電子分布について考えるALogPSなどがあります。

様々な計算値がありますが、論文等でよく目にするのはCLogPだと思います。それぞれの計算手法にメリット・デメリットがありますが、良く分からない場合はまずCLogPを試してみて既存の化合物と比較するといいと思います。

また計算値に関しては下記のサイトが参考になるので、詳しくはそちらをご覧ください。

[blogcard url=”https://future-chem.com/logp/”]

LipE (脂溶性効率)

序盤でも述べた通り、活性に対する影響として化合物の代謝安定性や膜透過性が懸念されます。

脂溶性効率(Lipophilicity efficiency: LipE)は、2000年代後半に導入された概念で、生物活性と脂溶性の両方を組み合わせたパラメータです。具体的な定義としては以下の式になります1

LipE = pIC50 (またはpEC50) – LogP (またはcLogP)

式から分かる通り、LipEは単純に活性パラメータから疎水性パラメータを引いただけのシンプルな値です。活性の強さは、アンタゴニストの場合はpIC50(-logIC50)、アゴニストの場合はpEC50(-logEC50)を算出します。pIC50やpEC50は、IC50やEC50よりも分かりやすいことから、これ以外の活性比較にもよく使われるパラメータで、計算してくれるプログラムもあるようです。(IC50-to-pIC50 converter1)。

また、LipEに用いられるLogPに関しては直接測定した値ではなく、計算であるcLogPが用いられることが多いです。


官能基の疎水性パラメーター

化合物自体の疎水性パラメータについてはLogPで測定できますが、構造活性相関を検討する場合、特定の置換基の疎水性が分かっていると便利です。現在用いられているものはHanschとLeoによる疎水性置換基定数(π)と呼ばれるものです。

置換基XのHanschとLeoの疎水性置換基定数は

πX = logPX-logPH

で求められます。ただし、この場合logPHは元の(基準となる)化合物の分配係数で、logPXは水素(H)を置換基Xに換えた化合物の分配係数となります。

参考文献

1) Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 19 (2009) 4406–4409 DOI: 10.1016/j.bmcl.2009.05.062

2) Virtual Screen Lab, Hardware and Software, [ONLINE] Available at: http://shityakovlab.uphero.com/hardware-and-software.html [Acccessed, 22 February 2019]

3) 創薬メモ「創薬探索における指標について」,<https://ameblo.jp/ryuyama00-00/entry-12229482101.html> 2019年5月22日アクセス

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