グリシンは最も単純なアミノ酸と知られています。地味な印象ですが、さまざまな作用があることが知られています。グリシンは神経伝達に関与したり、睡眠改善効果がみられるなど様々な生理作用を示します。
そんなグリシンですが、食品添加物として利用されているのをご存じですか?
コンビニのおにぎりや団子など米系の製品に添加されていることが多いのですが、このグリシンの作用の一つが抗菌効果です。
グリシンとは?
グリシンはアミノ酸の中でも最も単純な構造をしています。
形は単純なグリシンですが、コラーゲンの材料になったりと体の中でも大活躍しています。最近は睡眠改善効果が確認され、睡眠補助サプリのような利用法も開拓されています。
グリシンの抗菌作用
このグリシンはどんな味がすると思いますか?
実は「甘い」のです。
そのため、食品の甘みや旨味を引き出すために食品に添加されることがあります。
実は味以外にも機能があります。それは、「抗菌効果」です。
グリシンを加えると細菌の成長を止めるような作用があるため、防腐剤として食品に加えられます。
グリシンの抗菌効果は抗生物質のペニシリンの作用と同じ、細胞壁生合成の阻害であるといわれています。グリシンにさらされると細菌は細胞壁が消失して細胞膜だけになった「プロトプラスト」という抵抗力の乏しい状態になってしまいます。
グリシンの安全性は?抗菌効果は強いの?
グリシンは食品中にも含まれている安全な成分であると考えられているため、積極的に過剰摂取しなければ問題は起こらないと考えてよいでしょう。
一方で、グリシンの抗菌効果はあまり強くありません。そのため1%程度の濃い濃度のグリシンが必要となるのですが、あまりたくさん入れすぎると風味が変化したり添加物なので印象もよくありません。そのためグリシンのみで抗菌効果を得ようとするのではなく他の方法とで組み合わせて利用する必要があります。
塩化ナトリウムとの組み合わせ
昔から腐敗を防ぐ方法として塩がよく利用されています。この塩とグリシンを組み合わせることで相加効果が現れ、細菌繁殖が効果的に抑制できます。
例えば、0.5%グリシンと3%塩化ナトリウムでは大腸菌の生育が完全に停止します。また、黄色ブドウ球菌は耐塩性が高いですが、グリシン2%, 塩化ナトリウム3%で生育が阻止できました。
塩化ナトリウムだけでは溶菌を起こしませんが、グリシンの添加は溶菌を起こすことが発見されました。
異なる研究では塩化ナトリウムだけでなくエタノールとの併用効果も認められています。
グリシンのおかげで日持ちが良くなる
グリシンは天然に存在する物質で食品の風味を落とさずに抗菌効果が得られる優秀な添加物です。残念ながらグリシンだけでは抗菌効果が弱いため食塩などと併用する必要がありますが、比較的利用しやすいものであると思います。
こめやん
参考文献
- 李在根, et al. “グリシンと二, 三の薬剤の抗菌力併用効果.” 食品衛生学雑誌 26.3 (1985): 279-284_1.
- 胡建恩, 久留主泰朗, and 堤将和. “エタノール共存下におけるグリシンの大腸菌に対する抗菌作用.” 食品衛生学雑誌 40.4 (1999): 266-273_1.