エステルをケトンに変換する方法
エステルにグリニャール試薬や有機リチウム試薬を作用させると中間体としてケトンが生成しますが、原料のエステル体よりもケトンのほうが反応性が高いため、通常は第三級アルコール体が生成します。
そのためエステルをケトンに変換するのは結構難しいです。
トリフルオロアセチルエステルの利用
トリフルオロアセチル基を持つエステルは四面体中間体で反応が停止するため、第三級アルコールの手前のケトン体で反応が止められます。
Fries転位の利用
フェニルエステルはアシル基の転位によりフェノールのオルト位をアシル化できます。
クライゼン縮合
クライゼン縮合は2分子のエステルを縮合してケトエステルを得る反応です。
ジケトン部位の水素の酸性度が高いため、ケトンに対する過剰付加反応は進行しません。このため効率的にエステル化可能です。
エステルの触媒的ケトン合成
エステルを原料として有機金属化合物と触媒的ケトン合成を行う方法が報告されています。
2-ピリジルエステルは反応性の高いエステルで、触媒量の酢酸パラジウムと有機ホウ素試薬との間でケトン合成が効率的に進行することが報告されました。原料であるエステルは芳香族でも脂肪族でもOKです。合成できるケトンはベンゾフェノン、アセトフェノン類に限りますが温和な条件で高収率でケトンが合成できます。
Tatamidani, Hiroto, Fumitoshi Kakiuchi, and Naoto Chatani. “A new ketone synthesis by palladium-catalyzed cross-coupling reactions of esters with organoboron compounds.” Organic letters 6.20 (2004): 3597-3599.