夏の風物詩、ホタルと言えば光る生物の代表格とも言える存在ですね。ホタルの発光は昔から、科学的にも文化的にも人々の関心を集めてきました。今回はそんなホタルがなぜ光るのかについて科学的に解説していきたいと思います。
ホタルはなぜ光を出すのか?
ホタルが光を出すのは、主にコミュニケーションのためだと言われています。大きく分けると3つに分類されます。
- 求愛行動
- 仲間への合図
- 外敵に対するもの
実はホタルの光り方はオスとメスで違いがあることが分かっていて、求愛行動に関わることが分かっています。また、仲間に情報を伝えることや、刺激を与えると反応して光る(外敵に対しての威嚇)ことも分かっています。
ホタルのどこが光っているのか?
ホタルと言えばお尻が光っているイメージがありますよね。実際にホタルには発光器と呼ばれる発光する器官がお尻に近い部分に存在します。
ホタルが光る仕組み
ホタルなどの生物が発光するには、ルシフェリンとルシフェラーゼという二つの要素が必要です。
ルシフェリンとは光を生み出すために必要な化合物を、ルシフェラーゼとはそれに必要な酵素を指します。
ホタルの場合は、それぞれホタルルシフェリンという化合物とホタルルシフェラーゼという酵素です。ホタルルシフェリンが酵素反応することで、オキシルシフェリンという光る化合物に変化します。
平野誉. “化学発光と生物発光の基礎化学.” 化学と教育 64.8 (2016): 376-379.
生化学的な反応経路
具体的な反応経路としては2つに分けられます。
1. アデニル化
まずルシフェリンのカルボキシル基がATPのα-位のリン酸を攻撃することでルシフェリンAMP-中間体が形成されます(アデニル化)。このステップにはマグネシウム(Mg)が関与してることが分かっていて、ATP-Mgの状態で存在している酵素内でルシフェリンが反応してAMP-Luciferin中間体になります。
カルボン酸のアデニル化によりカルボン酸無水物様の構造をとる。この構造はカルボン酸α位のCH酸性度が高くなり、脱プロトン化が起こりやすくなる。
2. オキセタンの形成→励起→発光
次にこの中間体がルシフェラーゼによってAMPが外れることでオキシルシフェリンが生成します。
アデニル体のカルボン酸α位が脱プロトン化、酸化されたのち、AMPの脱離とともにオキセタンが生成します。高エネルギーのオキセタン構造の分解により化学励起されたオキシルシフェリンが生成します。
このオキシルシフェリンは励起状態と呼ばれるエネルギーを蓄えた状態であるため、エネルギーを光に変えて放出することで発光します。
以上のように現在の段階でも大体の発光原理は分かっているのですが、この現象にはいまだ完全に説明できない多くの謎が残っており、現在でもホタルの発光に関しては研究対象となっています。また、このルシフェリンとルシフェラーゼの関係は生物学的な実験にも用いられており、レポーター遺伝子アッセイなど専門的な研究にも役立つ有用な化合物です。
- 化学 vol.65 No.11 (2010)