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元素分析とは? 計算が合わない?計測のコツ!

元素分析合わない

元素分析とは?

元素分析は有機化合物中に含まれている炭素、窒素、水素、などの各元素成分の存在比を定量的に測定する方法です。

元素分析は化合物の純度や組成を調べることができる分析法で古くから用いられている歴史のある分析方法です。

有機化合物の代表的な分析方法としては

  • NMR
  • 質量分析法
  • 元素分析法
  • 赤外分光法

などがあります。

特に「純度」を調べる時に元素分析を行います。また、どんな元素が含まれているか?組成式が正しいか確認するためにも使います。

どんな時に元素分析は有用?

例えば、医薬品の生物活性を測定する時にはその化合物の元素分析を行って純度を測定します。

なぜなら、1%の不純物が薬効の正体でメインの物質は全く活性がなかったということも起こり得るからです。機能を調べる上では純度はとても重要です。また、新規化合物を合成した際にはNMRや質量分析の結果に加えて元素分析の結果の提出が求められることが多いです。



元素分析の原理

元素分析法は有機化合物を燃焼させて発生させたガス(CO2やH2O)をガス吸収管に吸着させて重量を測定して水素や炭素の含有量を算出するプレーグル法など様々な分析方法が構築されてきました。

いずれの方法も有機化合物を燃焼などによって単純な化合物に変換して、その量を定量するという方法をとっています。

測定した化合物は分解してしまうので有機元素分析は破壊的分析法です。

元素分析で測定できる元素は主に、炭素、水素、窒素で酸素、硫黄やハロゲンで酸素に関しては他の値を合計したものを100から引いて求めるか、直接酸素の分析を行う方法もあります。

こめやん

N2、CO2,H2Oなどのガスにして分析するのが基本ですね

元素分析の測定方法

元素分析は難易度が高いため基本的に分析センターなどに依頼する所が多いと思います。

そのため、本記事では実際の測定方法ではなく「測定対象の準備方法」を紹介します。そして純粋な試料を準備することこそが元素分析を成功させるのに重要です。

元素分析が合わない原因が試料にあることは非常に多いです。

元素分析の試料調製法

きれいな試料を用意することは絶対条件です。精製と純度確認を怠ってはいけません。下記の項目を確認しましょう。

  1. 一度はシリカゲルカラムを通し、固体の場合は精製後に再結晶、液体の場合はHPLCやGPCなどで精製する。昇華精製も有効。着色している場合は活性炭処理
  2.  NMRやHPLC、マススペクトルなどで純度が十分なことを確認する
    • TLCは1スポットしか無いか?固体の場合は融点測定(3回測定で誤差0.5℃以内)、液体はHPLCやガスクロマトグラフィーでピークの数(純度)を確認
  3. 精製後、固体は乳鉢で粉砕して乾燥。加熱減圧乾燥で融点よりも数十度は低い温度で乾燥させる。昇華性の物質に注意!(温度や減圧度、時間に気をつける)

不純物を含む試料を元素分析することは計算が合わずに無駄になるだけでなく、元素分析の機器を汚染する原因になることがあります。必ず別の分析法で純度・構造を確認しましょう。

元素分析に必要な情報

元素分析を依頼する場合は指定のテンプレに従って記述すればよいです。下記の情報があれば問題ないでしょう。

  1. 分子量・分子式
  2. 構造式
  3. 元素分析の理論値
  4. 含有元素の記載(混入可能性のあるものも含めて)
  5. 試料の性質(安定性、加水分解性、揮発性、酸化還元、毒性、爆発性、吸湿性、昇華性等々)
  6. 精製に利用した溶媒など

試料は多い方が助かるので指定量を下回ったり、ギリギリにしないようにします。微粉末はスパーテルで掻き取りにくかったり、静電気で吹き飛んだりするので提出する容器のサイズや入れ方にも工夫が必要です。


元素分析が合わない

元素分析で許容される誤差は±0.3%未満です。この範囲に収まらない場合は再測定となります。

計算をあわせるためのポイントは

精製して、減圧乾燥させること

しかありません。

自分で測定するときは秤量や機器操作などを見直しましょう。

注意できるポイント

・再結晶は何度か繰り返す

固体の物質は再結晶しましょう。再結晶は一度だけでなく3回くらい繰り返すことでよりきれいになります。一回しか再結晶していない場合は2,3度繰り返しましょう。逆に再結晶しかしていない場合は一度カラムに通して精製すると良いです。

・純度はNMR等で確認する

少なくとも精製後にはNMRで変なピークがないかを確認しましょう。溶媒によっては結晶にくっついて離れないようなものがあるので、再結晶溶媒を変えるか、入念に減圧乾燥します。X線結晶解析を行うことで結晶に取り込まれた溶媒分子を特定することもできます。

・金属やホウ素に注意

窒素原子などと錯体を作ったりすることがあり、分析法によってはそれが分からない場合があります。微粉末として混入している場合もあり厄介です。金属はセライトなどでろ過除去を行ったり、数%EDTA水溶液で分液などを行って除去しましょう。

・無機塩類の混入に注意

極性の高い物質は逆相やゲルろ過、イオン交換樹脂、分液を使った精製などを行うことがありますが、その際に無機塩類が混入する可能性があります。また、高極性物質は吸湿しやすかったり、粘性の液体だったりするので注意が必要です。

・高反応性・分解性・吸湿性物質に注意

反応性が非常に高く、水や酸素、光によって分解する化合物は誤差が非常に発生しやすいです。分解を引き起こす原因から遠ざけて、精製後すぐに分析してもらえるように手配しましょう。

秤量の誤差は単純ですが大きいのできっちりとはかります。測定する天秤も高精度なものを使用します。

2 COMMENTS

佐藤綾子

有機元素分析について詳細な解説、特に精製の方法や出す前のチェック事項など詳しい情報のご提供、ありがとうございました!
当方で悩んでいることが、解決しました(感謝)。
今後は依頼者に紹介していきます!!
 破壊分析のため利用が減り、0.5mgでもできると普及させたい思いで起業しました。新時代のテクニックが身につかないため、諦めかけておりました。
このコーナーに出会い、百の味方ができた思いです。
研究者に有機元素分析は大事な筈ですよね。

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こめやん こめやん

当サイトをご覧いただきありがとうございます。
少しでもお悩みを解決できてよかったです。
おっしゃる通り有機元素分析は現在においても重要な分析方法です。マススペクトルも同様の目的で利用されていますが、元素分析のほうが確実性が高い場面は多いです。
要求試料量の多さや分析にスキルが必要な点が改善されればとても助かりますね

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