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HPLCのための蛍光誘導体化 – 基礎とアミン編

HPLCのためのアミンの蛍光誘導体化反応

高感度な蛍光の応用先の一つにHPLCがあります。

通常HPLCでは化合物の吸光度を測定していますが、吸光度は感度が低く微量分子の検出には向いていません。より高感度な検出方法として蛍光測定法がありますが、HPLCの測定対象化合物が蛍光を持っているとは限りません。そこで、化合物を蛍光を持つような分子に変換すること蛍光誘導体化して無蛍光の分子を蛍光分子に変換する方法が利用されています。
ここでは、蛍光誘導体化の戦略として、分子中に含まれる極性官能基のアミンを標的とした蛍光誘導体化方法について紹介します。

HPLCの蛍光誘導体化

HPLCは混合物の分離を行う機器ですが、検出器がなければ、混合物が何種類分離できて、いつカラムから出てくるのかがわかりません。

HPLCで分離された化合物の検出に主に用いられているのは吸光度(紫外光・可視光吸収)です。しかし吸光度の感度は低く、微量物質の検出が困難となるケースが多くあります。

こめやん

そこで蛍光物質を使うんですね!

例えば、吸光度では1μMまでの濃度しか検出できなかった物質も蛍光物質化することによってごく低濃度(1pMとか)でも検出できるようになります。(蛍光は千倍くらい感度がよくなるといわれている)

蛍光測定が高感度な理由蛍光測定が高感度な理由 – 微量物質の測定

蛍光を持たない物質を蛍光を持つように改変することを「蛍光誘導体化」といいます。

蛍光誘導体化する試薬「蛍光誘導体化試薬」は市販されているので、購入すればすぐにでも利用することが可能です。

こめやん

HPLCの機器側に蛍光検出器がなければ測定できないので注意(UV検出器のみの場合がある)

蛍光誘導体化の戦略

もしも蛍光誘導体化しようと考えた時どのような戦略で変換したらよいのでしょうか?

蛍光誘導体化の方法としては主に2つあります。

  1. 蛍光物質をくっつける
  2. 構造を変換して(環化等)蛍光物質に変える

です。1はもともと蛍光のある物質をくっつける単純な方法です。2つ目は測定する物質の構造自体を変えることで蛍光をもつようにする方法です。2つ目の方法は測定したい分子によって戦略が変わるので難しいですが、より選択的で高感度に検出できる可能性があります。実践するには化学の専門知識が必要になります。

HPLCのための蛍光誘導体化では主に第一の戦略(蛍光物質をくっつける)方法を使います。

蛍光誘導体化の方法論

ノルアドレナリン

ノルアドレナリンの分子構造

例えば、ノルアドレナリンはそのままでは蛍光を持ちません。蛍光誘導体化する方法として第一の戦略である「蛍光物質をくっつける」方法をとります。

しかし、どこに蛍光物質をくっつけたら良いのでしょうか?

その足がかりとなるのが「極性官能基」です。生体物質は特にアルコールやアミン、カルボン酸などのヘテロ原子からなる極性官能基を持つことが多いです。これらの官能基は反応性が高いため、蛍光物質をつなげる起点となります。

こめやん

炭素は基本的に不活性で反応しにくいです
ノルアドレナリンの極性官能基

ノルアドレナリンの極性官能基

ノルアドレナリンには極性官能基として水酸基(フェノールとアルコール)とアミノ基があります。どちらも反応性がありますが、中性条件で高い求核性をもつアミノ基を標的とするのが穏和に反応できるので良いでしょう。

ノルアドレナリンの蛍光誘導体化

ノルアドレナリンの蛍光誘導体化

フルオレサミンは第一級アミン選択的な蛍光誘導体化試薬です。これを反応させるとアミン選択的に反応してノルアドレナリンの蛍光誘導体が生成します。

次に、第二の戦略であるノルアドレナリン自体を蛍光性の物質に変換する方法を見てみましょう。

ノルアドレナリンの蛍光誘導体化直接法

ノルアドレナリンの蛍光誘導体化直接法

ノルアドレナリンを酸化して環化し、ジフェニルエチレンジアミン(DPE)と反応させると蛍光性の環化体が得られます。この方法はカテコールアミン選択的かつ高感度(フェムトモルオーダー)です。

こめやん

フルオレサミンやオルトフタルアルデヒドは第一級アミンが他にもあれば反応してしまいますからね。インドールアミンのセロトニンや炎症性に関わるヒスタミン、アミノ酸のリシンなどは反応ますが、DPE法ではカテコールアミンだけです

ポストカラム誘導体化とプレカラム誘導体化

蛍光誘導体化する戦略として、いつ蛍光誘導体化するのか?というのも問題になります。

簡単に言えば、HPLCの試料を分離する前か、分離した後か?の違いです。

  1. プレカラム誘導体化法 ー カラム分離前に蛍光誘導体化
  2. ポストカラム誘導体化法 ー カラム分離後に蛍光誘導体化

の二種類があります。

プレカラム誘導体化法

プレカラム誘導体化法はカラムで分離する前の試料に対して蛍光誘導体化試薬を使って蛍光誘導体化した後にHPLC分離を行います。

先に反応させてしまう利点としては、

  1. 誘導体化反応が進行した後に分離するため、蛍光物質が混じっても感度低下しにくい
  2. 分離前の試料のほうが分離後の量よりも少ないので、小スケールになる(低コスト)

欠点は

  1. 試料中の夾雑物の影響を受ける

ことです。

ポストカラム誘導体化法

ポストカラム誘導体化法はカラム分離後に誘導体化する方法です。カラム分離後はそのまま検出器に向かいますが、ポストカラム誘導体化法は検出器に向かう前に誘導体化試薬と混合させて誘導体化します。

利点は、

  1. 分離後に誘導体化するので夾雑物の影響を受けにくい
  2. 自動化できるので定量性や再現性が高い

です。

欠点は

  1. 未反応の誘導体化試薬は無蛍光のものしか使えない
  2. コストが高くなる(分離後の液量は多いため)

ことです。
どちらにも一長一短があります。どちらの方法をとるかは、誘導体化試薬によってかわります。

アミンの蛍光誘導体化

アミノ基は求核性が高い官能基なので、反応の足がかりとして適しています。窒素原子上の置換基の数によって第一級~第四級まであります。また、芳香環に置換した芳香族アミンもあります。

アミン類

アミン類の構造 第一級アミンと第二級アミンは反応性が高い 第三、四、芳香族は反応性が低い

第一級アミン選択的蛍光誘導体化試薬

第一級アミン選択的蛍光誘導体化試薬

第一級アミン選択的蛍光誘導体化試薬

第一級アミンだけを選択的蛍光誘導体化できる試薬の代表がオルトフタルアルデヒドとフルオレサミンです。これらはアミンと反応する前は無蛍光ですが、アミンと反応すると蛍光性を有します。フルオレサミンは化学発光を利用した方法以外はOPAの方が優れていると思います。

オルトフタルアルデヒドは反応が早いのが魅力ですが生成物が不安定でプレカラム法での利用に難があります。を改良した2,3-ナフタレンジアルデヒドはより高感度であり、大きいストークスシフト、高い量子収率など、蛍光測定を行う上で有利な特徴を持っています。オルトフタルアルデヒドよりも長時間を要するのが欠点(2min→15-20min:NDA)

オルトナフタレンジアルデヒドの反応

2,3-ナフタレンジアルデヒドの反応 下反応の2級アミンは環化体は得られない。

これらの試薬はともに中性付近、室温付近で短時間に蛍光誘導体化できます。これらはプレおよびポストの両方で利用できます。

OPAの改良としてメルカプトエタノールの代わりに2-エタンチオール、3-メルカプトプロピオン酸、Nアセチルシステインなどを使用すると生成物が安定になり、プレカラム法での利用に適します。

第一級アミン、第二級アミンの蛍光誘導体化試薬

nonselective アミンセンサー

非選択的アミン蛍光誘導体化試薬

選択性を持っていない蛍光誘導体化試薬として有名なものは、NBDとダンシルです。NBD、ダンシルともに反応前は蛍光を有していませんが、ダンシルは加水分解体も蛍光を持っているため、ポストカラム法には使えません。また、フェノールとも反応してしまうので注意が必要です。

NBDは加水分解体は蛍光を持たないのでプレカラム法とポストカラム法どちらでも利用できます。

FITCはイソチオシアネートがアミンと反応して蛍光誘導体化できます。

その他のアミンの蛍光誘導体化試薬

その他のアミンの蛍光誘導体化試薬

アミンと反応する官能基として、クロロホルメート(クロロギ酸)、酸ハロゲン化物、イソチオシアネートがあります。これらは条件によっては、アミン以外の求核性の官能基(フェノール、アルコール、チオール等)と反応する可能性があります。条件によりアミン選択的に反応させることも可能かと思います。

こめやん

上記のアミン反応性官能基を他の蛍光団に導入すれば様々なアミン蛍光誘導試薬を作れます。

参考文献

1) 大倉洋甫, 甲斐雅亮, and 能田均. “蛍光及び化学発光法による生体成分の高感度分析.” 分析化学 43.4 (1994): 259-288.

2) 同仁堂 実用的蛍光誘導体化 2 -Review https://www.dojindo.co.jp/letterj/091/reviews_02_main.html

3) Klockow, J. L., K. S. Hettie, and T. E. Glass. “Fluorescent Sensors for Amines.” (2017): 447-467.

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