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減圧乾燥 化学実験における乾燥のやり方

乾燥のやり方 化学実験の基礎

「乾燥」は初歩的ですが、重要な操作方法の一つです。

なぜなら、水などの溶媒が混入すると収量が変化したり、化学反応が妨げられたりするからです。

吸湿性の化合物や空気中の水分と容易に反応する物質などもあるので、乾燥の意味、やり方などを学んでおく必要があります。

乾燥とは?

乾燥とは目的の物質中から水分を除くことです。

有機化学では水以外の溶媒(アルコールやトルエンなど)や揮発性化合物を取り除くことも意味します。

乾燥の操作ができないと

  1. 化学反応がうまく進行しない(水の混入による反応試薬の失活等)
  2. 収量・収率が不正確
  3. カラムクロマトグラフィーに失敗しやすい
  4. 反応性の高い試薬をダメにしやすい
  5. 合成した化合物を分解させてしまう

などの問題が起こることがあります。

化合物の状態や用途に適した乾燥方法を利用しましょう。


乾燥の種類

乾燥といっても方法はたくさんあります。乾燥させたい化合物の安定性や用途によって適切な乾燥方法を選択します。

  1. 火炎乾燥
  2. 熱風乾燥
  3. 減圧乾燥・真空乾燥
  4. 風乾
  5. 乾燥雰囲気下で乾燥
  6. 脱水剤を用いた乾燥
  7. 共沸
  8. 凍結乾燥
  9. 乾燥ガスの吹き付け

これだけの乾燥方法があります。化合物の性質や状態によって使える乾燥方法と使えない乾燥方法があります。

火炎乾燥

熱的に安定なガラスやセラミックス、塩類などの無機化合物の乾燥が可能です。有機合成ではフラスコガラス表面に存在する微量の水分でも反応を妨害することがあります。直火又はヒートガンなどを使ってガラスを強熱・減圧することで乾燥可能です。

酸化されやすい金属などは不活性ガス下または真空下のフラスコに入れれば利用可能です。

強力な乾燥法だが、使えるところは限られる。減圧と組み合わせると良い。

熱風乾燥

ドライヤーやいわゆる乾燥機などがこれにあたる。水分含量が多く、大量に乾燥させたい時に使用する。有毒物質は部屋内にばら撒く可能性があるので使えない。また、反応性が高く酸化しやすい化合物なども適さない。温度調節が可能なものがあるので、化合物に合った温度で行う。濡れた結晶などは濾紙などで挟んだりしてから乾燥させると効率が良い。分解することがあるので合成した化合物に使う機会は少ない。ガラス器具など予備乾燥などに使う。

減圧乾燥、真空乾燥

揮発性の化合物は気圧を下げると沸点が下がるので高温にしなくても乾燥しやすくなる。有機化合物など多くの化合物は高温に曝すと分解する恐れがあるので、高温を避けるため、減圧下で乾燥させることが多い。

最もよく使う乾燥方法であり、他の方法と組み合わせて使用することが多い。目的物の沸点が低い場合は水分と共になくなる可能性があるので気をつける。不安定な化合物の場合は真空下、低温でじっくり乾燥させる。

風乾

ドラフトなど、換気の良い場所に放置して乾燥させる方法をです。あまり急いでいない時、熱に弱いガラス器具などを乾燥させる時に使う。乾燥に要求するレベルもあまり高くない場合に使う。予備乾燥として一晩くらい風乾してから他の乾燥方法を利用することもある。

乾燥雰囲気下で乾燥

デジケーターなどシリカゲルや五酸化ニリンなどの脱水乾燥剤が入った容器に入れておく方法です。積極的な乾燥に利用すると言うよりも、すでに乾燥してあるものを保存しておくために利用することが多い。ある程度乾燥させた後にデジケーター内に放置して乾燥させるということもある。減圧や加熱と組み合わせると強力。

脱水剤を用いた乾燥

水に限らず、化学的、物理学的に除去する方法。液体の場合はモレキュラーシーブなどがよく使われる。アルミナなどをカラムに詰めて流すことで乾燥させる方法もある。気体の乾燥も可能。

共沸

共沸は二種類以上の異なる沸点の化合物が共沸混合物を形成して異なる沸点で蒸発する現象です。

高沸点な液体化合物を除去するのに共沸は有用です。水はベンゼンやトルエン、エタノールなどと共沸化合物を形成し、水の沸点以下で沸騰するので除去が簡単になります。

凍結乾燥

凍結乾燥は凍結させて乾燥させる方法です。水のまま乾燥させる場合突沸などが問題になりますが、凍結乾燥では氷になっているのでこの問題が起こりません。ゲル濾過やHPLCなどにより得られた水の割合が大きい溶液を濃縮する時に便利です。水分の多い天然物試料の乾燥にも使えます。低温で乾燥可能なので不安定な化合物の乾燥に適しますが、比較的時間がかかる点と揮発性化合物が失われやすいので注意が必要です。

乾燥気体を吹き付ける方法

窒素ガスなど乾燥した不活性ガスを吹き付けることによって乾燥させる方法です。ガス流量に気をつければ、突沸の危険もないので安全に乾燥できます。少量の溶液の乾燥に適しています。

大規模なものではバイオダージ社のターボパップなどがあります。

用途別の乾燥

粗精製物の乾燥

反応後に得られた粗精製物には水分や溶媒、揮発性不純物が混じっているはずです。これらの化合物はその後の精製操作の邪魔になるため出来るだけ取り除く必要があります。

水分が多い場合は、共沸をしましょう。トルエンやエタノール、ピリジンなどを使って複数回共沸します。トルエンはエバポレーターの廃液に水が混じっているのが目視できるのでおすすめです。ピリジンは溶解性が高いため糖類や核酸類によく使います。

高極性の不純物成分が多い場合は短いシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ショートカラム)で予備精製しても良いです。乾燥も可能です。

精製物の乾燥

カラムクロマトグラフィーや再結晶により得られた化合物には溶媒が付着しているので収量の計算のためにそれらを除去する必要があります。

得られた化合物が液体、固体に限らず基本は減圧乾燥します。風乾や熱風乾燥などは有機化合物では一般的には使いません。

化合物の安定性を考慮して、温度をかけると乾燥できます。飴状の液体化合物は乾燥しにくいので熱をかけたり一日以上長時間乾燥させる必要があります。

加熱・減圧乾燥させる時は化合物の分子量などをみて揮発しないことを確認しないと失うことがあります。

HPLC溶出液の乾燥

逆相カラムやゲル濾過などは溶出液に水を使うことが多いです。水の除去は結構大変なので凍結乾燥を利用することが多いです。ドライアイスや液体窒素を使って凍結した後に凍結乾燥機にかけて乾燥させます。

溶媒の乾燥

水は化学反応にとって基本的に不要なため、除去する必要があります。脱水剤を加えて蒸留したりします。詳細は以下の記事を確認してください。

脱水溶媒の作り方脱水溶媒の作り方

有機合成の脱水で用いられる乾燥剤の基本とまとめ

ガラス器具の乾燥

使用したガラス器具は洗浄後に乾燥させる必要があります。ガラス器具には熱をかけてはいけないものがあるので注意してください。

注射筒やメス○○など計測に使うガラス器具類は風乾または低温の温風乾燥機で乾燥させなければなりません。通常のガラス器具でもすり合わせがあるものに関してはあまり高温では乾燥させないようにしましょう。

2 COMMENTS

kuma

減圧乾燥の方法について質問です。日本薬局方での減圧乾燥で、乾燥剤は酸化リン(Ⅴ)でデシケーター内にガラス容器に入れた試料を減圧ポンプで減圧にして乾燥させる方法です。この場合、減圧状態にしたらデシケーターのコックを閉じてそのまま規定の時間まで置いておくか、それとも、減圧ポンプで規定の時間、ずっと引いたままにしておくのかどちらですか?前の会社では減圧ポンプでデシケーター内を減圧にし、ポンプの音が変わらなくなったらコックを止めていたのですが、今の会社ではずっと減圧ポンプを引いたままです。デシケーターはコックを開けなければ減圧した状態が保たれるのではないのでしょうか?ずっとポンプで引き続けるのは減圧ポンプに負担がかからないのですか?教えていただけないでしょうか?よろしくお願いいたします。

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こめやん こめやん

ご質問ありがとうございます。
日本薬局方での減圧乾燥は乾燥減量試験法などを指しているでしょうか?

・デシケータは減圧状態を保てるか?
ご指摘の通りデシケータ内は適切にシーリングされていれば減圧状態をある程度保つことは可能です。しかしながら数日間減圧せずに真空状態を保つことは難しいと思います。試験法等の場合は規定の真空度が指定されていると思いますので(0.67kPa以下等)その減圧度を保つ必要があります。真空計を持っている場合は規定の時間その真空度を保てるかを調べてみるとよいと思います。真空度が保てていればずっとポンプで引く必要はありません。またそこまで厳密な真空度が必要でない場合は、数日たったあとにコックを開いて空気を吸い込んでいれば問題ないと思います。シーリングに問題がある場合は一日くらいで常圧に戻ってしまいます。

・減圧ポンプの負担
高真空度を保つような専用の減圧ポンプである場合は基本的には長時間駆動を想定して作られており、つけっぱなしでも問題ないと思います。とはいっても長時間駆動の場合はポンプに負担がかかるので、定期的なオイル交換、シーリング材の交換、水や酸などのトラップなどを設置する必要があります。真空計があれば規定の圧以上になった場合はポンプを手動で稼働させるか、自動でON-OFFできる装置を導入しても良いと思います。ただし面倒なのでつけっぱなしにしてしまうことも多いと思います。

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