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飲酒で吐く理由は?

飲酒で吐く理由とは?アセトアルデヒドが原因?

お酒を飲みすぎると気持ちの良い気分もだんだんと意識が遠のいて、頭痛や心臓が早く脈打ったり、吐き気を催したりしてきます。お酒が強い人はこのようなアルコールの飲み過ぎの症状が出にくいですが、弱い人は飲みすぎるほどお酒を飲んでいなくてもこのような症状がでてきます。金曜の終電間近になると駅構内や列車内で酩酊して倒れたり、吐いたりするひとが出てきます。なぜ吐いたりしてしまうのでしょうか?

アセトアルデヒドによる毒性が吐き気の原因

飲酒で酔っ払う原因物質は「エタノール」です。エタノールは中枢神経系に作用していわゆる酔っ払った状態になります。消化管から吸収されたエタノールは血中を巡って約9割は肝臓で代謝さます。エタノールの飲み過ぎでは意識障害が起きて昏睡、低体温などによって死亡に至ります。エタノールの急速に吸収され飲酒後1時間程度で血中濃度が最大になります。一気飲みが危険な理由が分かります。

エタノールは代謝されるとアセトアルデヒドという物質に酸化されます。そしてこのアセトアルデヒドはさらに酸化を受けて酢酸に変換されます。

エタノールの代謝経路

アルコールを酸化してできるこの「アセトアルデヒド」は非常に毒性のある物質として知られています。アセトアルデヒドは交感神経を刺激して神経伝達物質を放出し、心臓のβ受容体を介して心拍数を上昇させることが知られています(頻脈、動悸、不整脈の原因)。

アセトアルデヒドの急性毒性として報告があるのは、

  1. 心拍数の増加
  2. 心拍出量の増加
  3. 顔面紅潮・皮膚紅斑
  4. 喘息の惹起
  5. 頭痛
  6. 吐き気

などがあります。このようにアセトアルデヒドは「悪酔い」と言われる症状を起こす原因物質と考えられています。このアセトアルデヒドはエタノールの代謝によって生じますが、悪酔いしやすいアルコールに弱い人はアセトアルデヒドを代謝する酵素であるALDHの働きが弱いために、アセトアルデヒドによる中毒症状が起こりやすくなっています。

アルコールを飲み過ぎによる吐き気は「アセトアルデヒド」が原因ということですね。

飲酒による嘔吐は我慢しない

飲酒による嘔吐はアセトアルデヒドによる毒性によって起こるものです。血中アセトアルデヒド濃度が一定の数値を超えると、生体防御反応として嘔吐が起こります。嘔吐は胃腸の蠕動運動の亢進、気分が気持ち悪い、唾液分泌が増加などの症状の後におこります。

気分が悪く吐き気を催すときは我慢せずに吐いてしまったほうが気分が楽になります。吐きそうなのに吐けないときは、「水を飲めるだけ沢山飲んで、息をとめて、香りの強いもの(香水、嫌いな匂い)を嗅ぐ」という方法をとると吐きやすくなります。指を突っ込んで強制的に吐かせるという方法も有効ですが、無理やり嘔吐すると食道を傷つける恐れがあるのでできるだけ避けましょう。

アルコールが弱い人がいる理由

アルコールに弱い人というのが一定数います。これはアルコールというよりも毒性のあるアセトアルデヒドを無毒化する酵素であるALDH2という酵素が遺伝的に機能していないために起こります。特に日本人にはお酒が弱い人が多いといいますが、これは遺伝的にALDH2の欠損が起こっている人が人口の約50%いるためだと考えられています。実際にALDH2の活性が弱い人たちの血中アセトアルデヒド濃度は強い人たちよりも17倍多く、お酒に弱い人達はアセトアルデヒドによる毒性によると思われる症状(頭痛、吐き気、悪心)が、アルコールのほろ酔いのような状態よりも強く出ます。

お酒が強くなる=慢性飲酒によりCYP2E1発現が増加するため

よくお酒を飲み続けるとお酒に強くなるという話があります。これは、アルコールやアセトアルデヒドを分解する酵素として関わるもう一つの酵素、シトクロムP450系酵素のCYP2E1が関わっています。アルコールの90%程度は肝臓で代謝を受けますが、このCYP2E1も主に肝臓に存在しています。慢性的に飲酒をすることによって、CYP2E1が「体に沢山必要だ!」ということになって増加してアルコールを酸化するようになります。

このCYP2E1発現の増加については、ヒトでも実験動物でも確かめられています。アルコールを飲み続けると強くなるという話は都市伝説的に語られることも多いですが、実際に強くなる可能性があることが研究によって明らかにされています。

アルコールがもともと飲めない人は注意!

アルコールが全く飲めないタイプの人も一定数います。その人達はメインでアセトアルデヒドを代謝する酵素が弱いまたは働かないことが原因で飲酒ができません。慢性飲酒によってCYP発現が誘導されるまでに時間がかかりますし、補佐的に働くために、飲めない人が無理に飲んだり、飲ませたりすることは危険です。特にアルコールの強要はやめましょう。

アルコールが強くなるのは良いことだと思われますが、良いことばかりではありません。それはCYPによるアルコールの代謝によってラジカル(活性酸素)が発生するからです。この活性酸素は生物にとって毒性が高く、肝臓の病気である肝硬変や脂肪肝、肝がんの原因になる可能性があります。CYPによって酒が強くなっても、その副作用として体に負担がかかってしまうということですね。

参考文献リスト

1) 松本博志. アルコールの基礎知識. 日本アルコール・薬物医学会雑誌, 2011, 46.1: 146-156.

2)Harada, S., Lancet, 11, 982, 1981

シトクロムP450とは?

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こめやん
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こめやんは理学博士です!化学の面白さと学ぶメリットを少しでも伝えるために日々頑張ります! ツイッターにて疑問点や依頼などを募集しています! 論文の和訳やレポートのチェックなどでもお気軽にお待ちしております