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縮合剤DPPAやDEPCでアミド合成

DPPAとDEPCによるアミド合成

DPPAやDEPCはアミド合成に使われるリン酸系縮合剤の一つです。アミド縮合剤としてはマイナーだと思いますが、他の縮合剤に劣らない反応性、後処理の容易さなどの利点があります。

ラセミ化も少ないのでペプチド合成にも利用できます。

DPPAはアシルアジドを経由してアミド化

ジフェニルリン酸アジド(DPPA)はカルボン酸と反応して求電子性の高いアシルアジドを生成します。これは従来のアシルアジド合成法と比べて副反応が少なく簡便です。

このアシルアジドはアミンと容易に反応してアミドを生成します。

アシルアジドはクルチウス転位によるカルバメート合成にも利用されます。

DPPAの改良版としてDEPC(ジエチルリン酸シアニド)がありますが、こちらはアシルシアニドおよびアシルホスフェートが活性中間体であると推測されています。

リン酸系縮合剤

リン酸系縮合剤




DPPAおよびDEPCの特徴

利点

DPPAおよびDEPCは以下のようなアミド・ペプチド合成に適した種々の特徴を有しています。

  1. 他法と比較して遜色ない反応性
  2. 立体障害の大きいアミンに対して好結果
  3. ラセミ化率が極めて低い
  4. 温和で副反応は少ない
  5. 副生成物は水洗除去可能
  6. 固相合成法に用いることができる
  7. エステルは水酸化ナトリウム水溶液中でけん化して直接アミドにできる
  8. ラクタム合成に適している

DCC法と比べてDPPAを用いたほうが高い収率で得られたという報告も多いです。特にシクロヘキシルアミンなど基質が嵩高いときなどに有効です。

DEPCはDPPAよりも反応性が高くラセミ化、エピメリ化率が低いのでペプチド合成に適しています。収率等もDEPCを用いたほうが優れていることが多いです。

分子内環化及び大環状アミドを作るときは高希釈条件(5mM)が必要となりますが、DPPA及びDEPCを用いると低温(0℃)条件、長時間反応(1-3d)でも試薬が失活することなく、反応が進行するので、この用途に適しています。

欠点

  1. チオール、ジケトン(活性メチレン)などは副反応を起こすので保護が必要。アルコールも収率は低いが生成するので注意する。
  2. 加熱するとクルチウス転位してイソシアネートが生成する
  3. DEPCは酸性でシアン化水素発生の危険性
  4. DPPAはアジド由来の潜在的な爆発性

反応条件

DPPAはカルボン酸1eqにアミン(1.1~1.2eq)をDMF中に混合させ、0℃でDPPA(1.1~1.2eq)を加えて、トリエチルアミン(2.1~2.2eq)を加えて0℃~室温で撹拌させます。

DPPAおよびDEPCはトリエチルアミンを加えないと収率が低下するようです。また、溶媒はジクロロメタンなどの誘電率の低い溶媒よりもDMFなどの高極性溶媒を用いたほうが収率が高いです。


参考

1) SHIOIRI, Takayuki, and Shun-ichi YAMADA. “Diphenylphosphoryl Azide.” Journal of Synthetic Organic Chemistry, Japan 31.8 (1973): 666-674.

2)Montalbetti, Christian AGN, and Virginie Falque. “Amide bond formation and peptide coupling.” Tetrahedron 61.46 (2005): 10827-10852.

3)DEPCの他の反応について: 栗原拓史, 春沢信哉, and 米田龍司. “シアノヒドリン O‐ジエチルりん酸エステル類の有機合成への応用.” 有機合成化学協会誌 46.12 (1988): 1164-1178.

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