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触媒的エステル化 DPATを使ったエステル化

DPATを使ったエステル化

DPATを使ったエステル化は嵩高いアルコールにも有効

ジフェニルアンモニウムトリフラートDPATは安定な固体であり、水に耐性があります。市販もされていて、自分で調製するのも可能です。

DPATの構DPATの構造

DPATの構造 1g 12500円(TCI)

DPATは酸触媒として有名なPPTS(p-トルエンスルホン酸ピリジン塩)に着目し、エステル化においても有用なアミン塩を探索しようとしたことがきっかけで発見されました。他のアンモニウムトリフラート塩と比べてDPATは1/24の時間で最低でも約1.5倍の収率で得られています。

トルエンなどの炭化水素系の溶媒でも使用可能で、0.01-0.1当量を用いることで嵩高い第三級カルボン酸もエステル化可能です。

反応の特徴・反応条件

この試薬の特徴は無水条件でなくても可能であり、芳香族、脂肪族カルボン酸などあらゆる基質に適用可能で、立体障害にも強いです。

DPATの量

DPATは触媒量で十分エステル化が進行します。第一級アルコールでは1mol%, 第二級アルコールでは5~10mol%です。

溶媒

溶媒はトルエンが良いです。誘電率が上がると収率が低下し、DMFではほとんど反応が進行しません。トルエン、ジクロロエタンが良い溶媒です。アセトニトリルは収率がトルエンの半分くらいになります。

官能基許容性

官能基許容性も高く、オレフィンやハロゲン、ケトン、シクロプロパンがあっても侵されずに進行します。

酸触媒条件下ではオレフィンは影響を受けやすいので良点です。

水に対する感受性

試薬は湿気に対して特段に弱いわけではなく、安定で、溶媒や試薬も特別な乾燥処理を行わなくてもOKです。

特にカルボン酸やアルコールなどは吸湿しやすいので、大きな利点です。

一般的な反応条件

カルボン酸(1.0 mmol)、アルコール(1.0 mmol)、およびDPAT(0.01 mmol)をトルエン中で4時間80℃で撹拌した。反応後濃縮、カラム精製により目的物を得る。

DPATを使った反応例1

DPATを使った反応例1

エステル交換反応はカルボン酸:アルコール:DPAT:TMSCl=1:1.5:0.1:0.1のモル比で加えることによってできます。

エステル交換はtert-ブチルエステルなどの第三級アルコールのエステルではほとんど進行しません。

改良法 (PEPAT)

触媒のアミンをペンタフルオロアニリンに変えた触媒(PFPAT)は更に反応性や安定性、除去性などが向上しておりマクロラクトン合成にも有用であることが示されています。

こちらもTCIより市販されています(1g, 9900円)。

参考

K. Wakasugi, T. Misaki, K. Yamada, Y. Tanabe, Tetrahedron Lett. 2000, 41, 5249

2 COMMENTS

勉強不足でわからない点がありましたので、質問させてください。
溶媒は、誘電率が上がるほど収率が下がるとのことですが、それは何故なのでしょうか。

個人的には、溶媒の誘電率が上がるほど酸触媒(DPAT)が酸解離し、触媒としてよく働き反応が促進され、収率は上がるのかなと考えていました。

DPATに対する溶媒効果について理解したいため、ご回答お願いいたします。

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アバター画像 しじみ

コメントいただきありがとうございます。

>> 溶媒は、誘電率が上がるほど収率が下がるとのことですが、それは何故なのでしょうか。溶媒の誘電率が上がるほど酸触媒(DPAT)が酸解離し、触媒としてよく働き反応が促進され、収率は上がるのかなと考えていました。

参考論文のReference欄に下記の記述がありました。
Solvent effect (DPAT, 1 mol%, 80C, 15 h): toluene (93%), 1,2-dichloroethane (90%), 1,4-dioxane (54%), CH3CN (46%), DME (27%), DMF (trace).

この場合、溶媒の誘電率によって触媒が解離するというよりは、エステル化の進行に水分が邪魔なので疎水性の高い溶媒(≒誘電率の低い溶媒)が高収率になったということだと思います。

ご参考になれば幸いです。

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