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CDI-アシルイミダゾールを経由したアミド化・エステル化

CDIの特長と利点

CDIはエステル化、アミド化、チオエステル化、カルバメート化に利用される試薬です。

ペプチド合成ではラセミ化しやすいのであまり使われません。

エステル化にも使われる試薬です。本記事ではCDIの特徴や反応条件などを紹介します。

CDIとは?

CDI(カルボニルジイミダゾール)は1848年に発見されたカルボン酸の活性化試薬です。

カルボン酸と反応して反応性の高いアシルイミダゾールを生成します。

アシルイミダゾールの生成

アシルイミダゾールの生成

CDIとカルボン酸を加えて1時間くらいかけて反応させた後に、アミンを加えれば速やかにアミドが得られます。

アシルイミダゾール生成の反応機構

アシルイミダゾールはカルボン酸のCDIのカルボニル炭素への求核攻撃により生成した酸無水物に副生したイミダゾールが攻撃して脱炭酸を伴ってイミダゾールとアシルイミダゾールが生成します(経路A)。

アシルイミダゾール生成の反応機構 by wikipedia, Rb.fre [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)]

生じたアシルイミダゾールはカルボン酸よりも求電子性が高く、求核剤(アルコールやアミン、チオール)と反応してアシル置換体を生成します。

CDIによるエステル化反応機構

CDIによるエステル化反応機構

CDIの特徴

CDIはホスゲンの塩素のイミダゾール置換体です。脱離基が塩素かイミダゾールかの違いです。ホスゲンは反応性の高い液体で扱いにくい反面CDIは固体で扱いやすいです。

CDIとカルボン酸により生成するアシルイミダゾールはエステル化にも有効です。

CDIの利点としては、

  1. 大スケールに適用可能(安価・塩基フリー)
  2. 副生物は水洗除去可能(イミダゾール)
  3. 反応性は酸塩化物に匹敵

などです。CDIとアミンを予め混合してN-アシルイミダゾールとした後にカルボン酸を加えてアミド化することで、塩基フリーでしかも大スケールでジペプチドを合成した論文がでています(de Figueiredo, Renata Marcia, et al. “Sequential One‐Pot Synthesis of Dipeptides through the Transient Formation of CDI‐N‐Protected α‐Aminoesters.” Advanced Synthesis & Catalysis 359.11 (2017): 1963-1968.)

CDIのアミン活性化機構

CDIのアミン活性化機構ー通常はカルボン酸を活性化するが、アミンを加えてアシルイミダゾールとした後にカルボン酸を加えるとカルバミン酸無水物を形成し脱炭酸を伴って転位してアミドが生成します。アミンは塩酸塩でも塩基フリーでOKなのが利点。ラセミ化も少ない。塩酸によるイミダゾールの活性化が行われていると考えられる。0.5eqCDI in DCM, amine1.5eq, 30min after added CO2H 1.0eq at rt wash 1M HCl for workup

副生成物はイミダゾールと二酸化炭素なので、薄い酸性水溶液で洗浄すれば副生成物は除去可能です。後処理の容易かつ安価なものはCDIの他にEDCと酸クロライドが挙げられます。

個人的にはCDIよりもEDC/DMAPかHOBtのほうが良い結果が得られことが多いです。

CDIとアミン、MeIとの反応によって生成するNメチルイミダゾール誘導体は第三級アミドの合成に適しています。

CDIは酸塩化物の合成が難しい分子に対しても利用可能な方法です。ラセミ化が問題にならない分子や酸塩化物が作りにくい分子では有効な試薬です。

酸クロライドとアシルイミダゾールは類似している

欠点はラセミ化が起こりやすいこと芳香族アミンのアミド化は進行が遅いことなどがあります。

エステル化はアミド化と比べて起こりにくく、通常は70℃程度の加熱が必要です。

アルコキシドで反応性を上げる

アルコキシドで反応性を上げる

アルコールの求核性を上げるため、アルコキシドを使えばより低温で反応させることも可能です。

CDIに関する論文

二酸化炭素添加でアミド化が加速する

CDIを使ったアミド合成がキログラムスケールで反応が遅くなった原因が反応容器中の二酸化炭素放出が不十分だったことによるアミン炭酸塩生成だと考えたが、逆に二酸化炭素が反応を加速していたことを発見した論文が報告されました。

反応THF溶液中にCO2をバブリングすると2~20倍ほど50%変換時間が早くなります。ミリモルスケールで試しています。

Vaidyanathan, Rajappa, et al. “Amidations Using N, N ‘-Carbonyldiimidazole: Remarkable Rate Enhancement by Carbon Dioxide.” The Journal of organic chemistry 69.7 (2004): 2565-2568.

塩酸の添加は反応性の低い芳香族アミンとのアミド化に有効

酸を加えることによって通常は遅い芳香族アミンのCDIによるアミド化が早く進行することが報告されています。平均で20倍早くなるようです。酸触媒として、イミダゾール塩酸塩を1..5eq加えて反応させます。

Woodman, Emily K., et al. “N, N′-Carbonyldiimidazole-Mediated Amide Coupling: Significant Rate Enhancement Achieved by Acid Catalysis with Imidazole· HCl.” Organic Process Research & Development 13.1 (2008): 106-113.

CDIを使ったアミド化反応

CDIのアミド化反応条件1

CDIのアミド化反応条件ー Capparelli, Elena et al Journal of Medicinal Chemistry, 57(23), 9983-9994; 2014

乾燥THF中にカルボン酸(1mmol)と1,1′-カルボニルジイミダゾール(1.1mmol)の混合物を室温で一晩撹拌した。乾燥THF中のアミン(1 mmol)の溶液を反応混合物に加えて室温で4時間撹拌した。分液、カラム精製により目的物を93%の収率で得た。

アシルイミダゾールを使った膜たんぱく質修飾反応

話が脱線しますが、アシルイミダゾール構造を応用したたんぱく質修飾反応を紹介します。

アシルイミダゾール構造は酸クロライドに匹敵する反応性の高さを持ちながら安定で単離でき、立体障害も他のものと比べて小さいことに着目し、これを膜タンパク質のリガンドに組み込むことによって膜表面上に存在する求核性アミノ酸(リシン)のアミノ基と反応させて蛍光ラベル化に応用しています。

アシルイミダゾールの応用

アシルイミダゾールの応用

タンパク質表面にはリシンなどの反応性の高いアミノ基を持つアミノ酸が存在する可能性があります。リガンドがタンパク質と結合することで、アシルイミダゾールと反応性基(アミン)が接近することで反応がより進行しやすくなります。触媒みたいですね。

Fujishima, Sho-hei, et al. “Ligand-directed acyl imidazole chemistry for labeling of membrane-bound proteins on live cells.” Journal of the American Chemical Society 134.9 (2012): 3961-3964.

参考文献

アシルイミダゾールの反応については以下の論文

1)太田俊作, and 岡本正夫. “合成化学における 1‐Acylimidazole の新しい利用.” 有機合成化学協会誌 41.1 (1983): 38-50.

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