ケトンやアルデヒドは一般的にアルコールの酸化により得ることが多いと思いますが、アミンから酸化してカルボニル類を合成する方法も報告されています。
アミンはイミンやオキシム等の中間体を経由してカルボニル化合物を得る経路などが報告されています。
アミンの酸化によりカルボニル化合物を合成する
アミンを酸化して合成する方法はアルコールの酸化と比較して選択肢は少ないですが、いくつか方法はあります。
NBSによる酸化から酸加水分解
1955年にRuschigらはアミンをNBSにより酸化してイミンとしたのち、酸性水溶液条件下でアミンを脱離させるRuschig法を報告しました。
H. Ruschig, W. Fritsch, J. Schmidt-Thomi, and W. Haede, Ber., 88, 883 (1955)
O-キノンを使った方法
コーリーらは3,5-Di-t-butyl-O-quinone、シュウ酸を用いてアミンをケトンに変換する方法を報告しました。ベンジルアミン、脂肪族環状アミンを酸化によりケトンに変換しています。
Corey, Elias J., and Kazuo Achiwa. “Oxidation of primary amines to ketones.” Journal of the American Chemical Society 91.6 (1969): 1429-1432.
過酸化ベンゾイルと炭酸セシウム
過酸化ベンゾイルを酸化剤として、炭酸セシウム存在下で第二級アミンを50~70℃に加熱するとケトンが得られます。この方法はアルデヒドの合成には向いていないようです。ベンジルアミン類の酸化は良好な収率でケトン類が得られますが、直鎖・環状脂肪族ケトン類は中程度の収率です。
反応はアミンと過酸化ベンゾイルとの反応により生じるO-ベンゾイルヒドロキシルアミンを塩基性条件下でケトンに変換します。
Knowles, Deborah A. et alSynlett, (18), 2769-2772; 2008
水中Pd/C触媒下マイクロウェーブを照射
マイクロウェーブを使いますが、Pd/Cと水でアミンをケトンに変換可能です。
SuryaáPrakash, G. K. “Microwave-assisted direct transformation of amines to ketones using water as an oxygen source.” Chemical communications 16 (2005): 2104-2106.
アミンのトリメチルシリル化と臭化亜鉛を用いたカルボニル合成
トリメチルシリルクロリド(TMSCl)から誘導したトリメチルシリルアミンをn-ブチルリチウム処理したのち、空気酸化させることで得たオキシムを分解してケトンを得る方法を報告しています。ブチルリチウム処理したのち、臭化亜鉛を加えることで中間体のニトロソ化合物の生成を促すことができます。
Chen, Huai Gu, and Paul Knochel. “A new mild oxidation of amines to aldehydes and ketones. Part II.” Tetrahedron letters 29.51 (1988): 6701-6702.
TEMPO酸化によるカルボニル合成
アミンの酸化方法はいくつか紹介しましたが、第二級アミンをケトンにする方法はたくさんありますが、第一級アミンをアルデヒドに酸化する報告例は少ないです。
これまでに銅、アスコルビン酸存在下空気酸化する方法でベンジルアミンをベンズアルデヒドに酸化する方法が報告されていますが、脂肪族アミンでは進行しないようです。
AjayらはTEMPOとPhI(OAc)2を用いた酸化方法は金属を使わず高い収率で脂肪族、芳香族アミンからアルデヒド、ケトンを合成する方法を報告しました。
アミンに対してTEMPO(0.1 eq)とPhI(OAc)2(1.0 eq)をジクロロメタン中で処理することによりカルボニル体を合成できます。
Bansode, Ajay H., and Gurunath Suryavanshi. “Metal-free hypervalent iodine/TEMPO mediated oxidation of amines and mechanistic insight into the reaction pathways.” RSC advances 8.56 (2018): 32055-32062.