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酸無水物からエステルの合成

酸無水物からエステル合成

酸無水物は反応性の高い分子でアルコールと反応してエステルを生成します。

酸無水物は二分子のカルボン酸の脱水縮合したものですから、アルコールと反応すると一分子はカルボン酸に戻ってしまいます。

したがって、貴重なカルボン酸をわざわざ酸無水物に誘導してからエステルを合成することはほとんどありません。多くは容易に手に入る酸無水物源(無水酢酸やトリフルオロ酢酸無水物等)を使ってアシル化するのに使われます。

酸無水物からエステルを合成する

酸無水物からエステル合成

酸無水物からエステル合成

酸無水物は酸ハロゲン化物よりも反応性が穏やかな試薬で、安価なため、溶媒量使用してエステル化させることが多いです。

そのため副生成物のカルボン酸が問題にならない場合は酸塩化物よりも酸無水物を使用することが多いです。

カルボン酸を誘導して酸無水物にするよりも市販の酸無水物でアシル化(エステル化)するのが基本です。

酸無水物はもったいない

酸無水物は半分しかエステル化できない

代表的な酸無水物

代表的な酸無水物

大量合成や多数の水酸基をエステル化する時はマイルドな酸無水物を使用することが多いです。糖類の水酸基のアセチル化はその例です。

糖類のアセチル保護

糖類のアセチル保護-無水酢酸-ピリジン系




反応条件(酸無水物別)

酸無水物の反応は溶媒と酸無水物、触媒を加えて反応させます。

溶媒はジクロロメタンを使用することが多く、触媒としてはピリジン、ルチジン、酢酸ナトリウム(無水酢酸)、塩化亜鉛、p-トルエンスルホン酸、濃硫酸を使います。

4-DMAPは求核性の高いピリジンで無水酢酸と反応して高活性なアシルピリジニウムを生成するため、第三級アルコールのエステル化も可能です。

塩基としてトリエチルアミンやDIEPAを加えることもあります。

無水酢酸を使ったエステル化

無水酢酸は最もよく使われる酸無水物です。OHやNH2などの保護に使われることが多いです。

アセチル基は塩基・ヒドリド還元には弱いですが、酸にはある程度耐えます。

反応は簡単で無水酢酸を溶媒とします。また、触媒にピリジンや酢酸ナトリウムを加えます。4-DMAPも高効率な触媒です。

第三級アルコールでは触媒量のDMAPを加えるか1当量の炭化カルシウムと1.5当量の無水酢酸を加えて数時間還流した後にアルコールを加える方法もある。

Ac基とは?アセチル基(Ac基)よるアルコール(水酸基)の保護基

(Boc)2Oを使ったエステル化

Boc2Oをアルコールと反応させると炭酸エステルが生成します。Boc基として知られ、アミンの保護機としてよく利用されます。

(BOC)2Oの炭酸エステル化

Arisetti, Nanaji and Reiser, Oliver Organic Letters, 17(1), 94-97; 2015

THF(375mL)、アルコール(36.76g、375mmol)およびBoc2O(98.21g、450mmol)に、トリエチルアミン(63mL、450mmol)およびDMAP(0.75g)を加えて反応混合物を室温で30分間撹拌した後、濃縮後カラム精製して(64.87 g、87%)を得た。

トリフルオロ酢酸無水物を使ったエステル化

Roehrg, Susanne et al Patent 2015063093, 2015

アルコール (6.30 g, 25.8 mmol)を90 mlのジクロロメタンに加え、0°Cでルチジン(4.5 mL, 38.7 mmol), TFAA(6.54 mL, 38.7 mmol)を加えて5℃を超えないようにします。1時間撹拌してTBME 630mlと混合し、1N 塩酸、炭酸水素ナトリウム水溶液で分液して、有機層を留去してquantを得た。

カルボン酸を酸無水物としてエステルに変換する方法

基本的にカルボン酸はしばしば酸無水物を経由するよりも容易に酸塩化物に変換できるため酸無水物をエステル化の中間体としては使われません。

縮合剤あるいはフィッシャーエステル化を利用する選択もあります。

一方で工夫すれば酸無水物を経由してエステル化をすることも可能です。

クロロギ酸エチルによってカルボン酸を酸無水物としてから、アルコールで反応させればギ酸エチルは脱炭酸を伴ってエステルを生成します。混合酸無水物法と呼ぶみたいです。

混合酸無水物法

混合酸無水物法




単純アルコール以外の求核剤

エノール (ケトン)

α水素を持つケトンはBF3等の酸触媒下エノールを生成する。これを酸無水物と反応させればエノールの水酸基がアセチル化してエノールエステルが生成する。

非対称ケトンは嵩高い置換基を持つエノールエステルが優先して生成することが知られています。

エノールのエステル化

エノールのエステル化

酸触媒としては、p-TSA、過塩素酸などが使える。選択性は条件によって調整することが可能です。

エーテル

無水フタル酸とtert-ブチルメチルエーテル(TBME)+硫酸の条件により、フタル酸メチル・tertブチルエステルを合成する反応例があります。

フタル酸とエーテルでエステル化

フタル酸とエーテルでエステル化

Dawar, Pankaj, M. Bhagavan Raju, and Ramesha A. Ramakrishna. “One-pot esterification and Ritter reaction: chemo-and regioselectivity from tert-butyl methyl ether.” Tetrahedron letters 52.33 (2011): 4262-4265.

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