科学「サイエンス」とは何か?
そう問われると答えるのは難しいと思います。
広義の上では、数学や物理学、天文学、生物学、化学、情報科学などは全て科学であり、お互い完全に独立しているわけではなく関連しています。
「化学」は様々な科学を結びつける中心的な学問、セントラルサイエンスという主張があるようです。
セントラルサイエンスとは和訳すると「科学の中心」ということですが、なぜ化学が科学の中心なのでしょうか?本記事ではその理由と化学を学ぶメリットを紹介していきます。
セントラルサイエンスという呼称の始まり
科学の中心にある学問は何か?と聞かれたらなんと答えるでしょうか?
私は「数学」かな?と思いましたが、物理と答える人も多いかなと思います。
この問いに対して「化学」が中心だ!と最初に言い出した人物がセオドア・L・ブラウン、H・ユージンです。
彼の著書「chemistry :The central science」という化学の教科書に「セントラルサイエンス」という呼称が使用され、広まったとされています。
化学がセントラルサイエンスである理由
化学が「科学の中心」というのは諸科学(物理学、医学、生物学、地球科学、農学、環境科学、工学)が対象としているものは基本的に物質(分子・原子)であるからだというところが理由です。
つまり、「身の回りの物質は全て化学物質でできているから、物質を中心に扱う化学は中心である」ということです。
身の回りの現象は化学的な視点から説明できることが可能
私達が生きている現実世界に見て、触れることができるものは原子からできています。つまり化学です。
人間に必要なもの「衣」「食」「住」の全てに関わっています。
「衣」ではナイロンやポリエステルなどの合成繊維 →どうすれば丈夫な繊維になるのか?なぜ劣化するか?
「食」では農作物に必要な化学肥料や農薬、サランラップやプラスチック容器 →どうすれば植物は育つか?熱にも光にも強い樹脂はどうやればできるか?
「住」では接着剤や塗料 →どうすれば強力に接着可能か?なぜ色調が変化するのか?耐候性の高い塗料はどうやって作るか
など様々な場面で化学の知識は重要になります。分子の向き、配列、3次元構造、大きさ、作り方などによって物質の挙動は変化します。
その辺に落ちている石ころだって色の違い、硬さの違いなど、深く知るには化学は避けて通れません。
医学は人体を中心に扱いますが人間も物質からできています。生物学も同様です。物理も物質の運動などを扱います。
下記の図は各々の学問の立ち位置を表した図です。
このように化学はあらゆる学問とつながりを持っています。
だから化学は、”自然科学の中心に位置している”「セントラルサイエンス」と言われているんですね。
つまり、化学(chemistry)を学ぶことで、「生物」「物理」「地学」「医学」「環境科学」などつながりのあるたくさんの分野の理解を深めることが可能だというんですね。
数学・物理は中心というよりも土台
数学も科学の中心にいそうな気がしましたが、上の図で言えば、数学は全ての科学の土台になっています。
確かに、数学から医学や生物学にはすぐにはつながらない気がします。
また、物理学も数学のように土台として全学問に通ずるところがあります。
その点で化学は生物や医学など他の科学につながるちょうどよい位置にあるからセントラルっぽいかもしれません。
このように考えると化学が科学の中心であるというのは少し納得できるのではないでしょうか?
科学(サイエンス)の中心にあると言われたら「化学」を学びたくなってきませんか?
化学を学ぶメリット 化学は生活にも密接に関連している。
今、若い人たちに学問として何を学ぶべきか?と聞いたら
「情報」と言われる気がしますが、化学を学ぶメリットはあるのでしょうか?
「化学を学ぶべき」というのは言いすぎかもしれませんが、他の学問を学ぶ上で化学を学ぶメリットは結構あります。
医学・薬学であればなぜこの薬が聞くのかを分子レベルで理解することができます。
化学者同士であれば、互いの言語がわからなくても「化学式」で意思疎通できます。
水に溶けやすい物質かどうかも、予測できるようになりますし、水に溶けにくいものを水に溶けやすくするという事もできるようになります。
何よりも化学は、化学の知識を別の様々な分野に応用することができるのがメリットです。
身の回りの科学である化学は目で見てわかるという点も面白いところです。
ちょっとでも化学に興味をもった方!
一緒にセントラルサイエンス・化学を学びましょう!
参考文献
守本昭彦. “セントラルサイエンスとしての化学の教育はどうあるべきか (化学教育フォーラム: 21 世紀の理科教育).” 化学と教育 50.7 (2002): 503-504.