シュロッサー塩基はt-BuOKとブチルリチウムの混合物からなる強力な塩基で「超塩基」と呼ばれています。
目次
シュロッサー塩基とは?
ブチルリチウムは強力な塩基ですが、シクロプロパンや単純なオレフィン、芳香環水素などで酸性度の低いプロトンを引き抜くのは容易ではないです。そういう時はもっと強力な塩基を使用する必要があります。
ブチルリチウムは非プロトン性溶媒中では互いに集まってクラスターを形成していることが知られています(エーテル中は4量体)。このクラスター状態では反応性が低下します。
単量体にするためにカチオンをトラップするような添加物を加えることで活性化させる方法があります。例えばTMEDA(テトラメチルエチレンジアミン)はリチウムイオンに配位してより反応性の高いクラスターを形成します。しかし、添加物自体が反応してしまう欠点があります。
そうした問題を解決したのがシュロッサー塩基です。
シュロッサー塩基はManfred Schlosserによって発見された超塩基で、アルキルリチウムとカリウム tert-ブトキシドから作られる超強力な塩基です(超塩基)。
一般的なシュロッサー塩基は、ノルマルブチルリチウムとカリウム tert-ブトキシドを1:1で混合させて調製します。シュロッサー塩基は非常に強い塩基性を有しており、トルエンのメチルの水素を引き抜いて、メタル化してベンジルカリウムを生成できます。
通常トルエンとノルマルブチルリチウム(及びt-BuOK)はほとんど反応しません。シュロッサー塩基ではベンゼンの水素も引き抜いてメタル化します。
活性種は何?
ノルマルブチルリチウムとカリウム tert-ブトキシドとの反応によって、アルキルカリウムが生成していると考えられています。
n-BuLi + t-BuOK → n-BuK + t-BuOLi
参考文献
1) Mongin, Florence, Raimondo Maggi, and Manfred Schlosser. “About bases and superbases.” CHIMIA International Journal for Chemistry 50.12 (1996): 650-652.
tert-ブチルカリウムという名前は間違いだと思います。
正しくはカリウム tert-ブトキシドです。
ありがとうございます。カリウム tert-ブトキシドに修正します。今後ともミスがあればご指摘いただければと思います。