電子天秤(電子天びん)の使い方の基本や注意事項とは?
電子天秤は質量を図るための機器です。上皿天びんとは違って電気で動くので電子天びんです。使い方と言っても電子天びんの使い方自体は簡単で、計量皿の上に重さをはかりたいものをのせるだけです。そのため使い方というよりも、使い方の注意についての話を中心にしようとおもいます 。
電子天秤で化合物の重さを測定するまで
- 電源が切れている場合は、電子天秤の電源を入れて30分~1時間位待つ。電源が入っている場合はTAREボタンなどを押して測定待機状態にする。
- 水平調整窓をみて、泡が中央にあって、水平かどうかを確かめる
- 計量皿(上皿)に薬包紙などの容器を置いて、扉を締めて、表示が安定した状態にして、表示をゼロにする。
- 測定したいものを容器に乗せて重さをはかる。数字をメモする。
- 試料を取り出す
- 天秤周りが汚れていないか確認して、汚れていたら清掃する
というのが重さを測定するときの手順です。水平じゃない場合は足がネジになっていて回すと調整できます。大きい薬包紙などは切ったり、試験管等の場合は三角フラスコに刺したりして、安定した状態にしてから測定するようにします。
電子天秤を使用するときの注意すべきこと!
電子天秤を使用するときの注意事項がいくつかあります。
- 振動、風、直射日光などが当たらないしっかりとした場所に電子天秤を設置する
- 設置した電子天秤はみだりに動かさない。動かしたりしたら校正作業をする
- 試料をこぼしたらすぐに必ず清掃する!
- 電子天秤の計量皿に直接試料を載せてはいけない。計量皿を汚さないようにする
- 試料をのせるときはそっとのせる。高いところから落下させたりしない
- 最大計量重量を超えたものを載せてはならない。(MAX 220gとか書かれている)
- 小さい重さを測定するときは、最小表示よりも一桁細かい最小表示の天秤を使用する(最小表示d=0.01gなら0.1gまで正確に測定できる。天秤の性能によっても変化する)
- 磁気を帯びたものは測定しない
電子天秤の値が下がり続ける・上がり続ける
電子天秤を使う上で最もよくあるトラブルは値の表示が安定しないというトラブルです。
値が安定しない理由はいくつかあるので以下の項目をチェックしましょう。
- エアコンの風など、風圧がかかっている
- 温度差(まだ温かいフラスコ、部屋の温度差?)
- 静電気
の3つが良くある原因です。
値が上下に安定しない
重さの値が上がったり下がったりする場合は、エアコンの風などがあたっている可能性が高いです。エアコンの風は、たとえ電子天秤の扉を閉めたとしても数値を変動させる可能性があります。風が直接あたっていなくても影響を受けることがあるので、エアコンのスイッチを切ってみましょう。換気扇やドラフト、窓なども同じく影響を及ぼす可能性があります。
値が下がり続ける
値が下がり続ける原因としてはフラスコが熱いままであったり、静電気が原因として考えられます。
熱乾燥後すぐのフラスコや手に持って温めていたフラスコなどは重さが変化します(容器の温度によって空気が暖められるから?)。部屋の温度、常温に戻した容器で測定しましょう。
静電気は空気が乾燥する冬の時期になると問題になりやすいです。ガラス器具でも薬包紙でも起こります。
静電気が原因かどうかは、「空の容器を上皿天びんに接触すれすれの状態で上下に上げ下げして、天秤の数値が変化するかどうか?」を観察してみてください。値が変動する場合は静電気よる影響だと考えられます。
測定中は徐々に静電気がなくなってくるので、数値がずっと減少し続けます。ガラス器具の場合は、ガラス容器をアルコールや水で湿らせたキムワイプなどで拭くと除電されて数値が安定すると思います。上皿のほうが帯電している可能性もあるので、上皿をアルコールで拭いてみても良いかもしれません。導電性の金属製の容器を使用しても良いです。また、部屋の湿度を挙げたり除電器を使う方法もあります。プラスチック製の容器は特に帯電しやすいので注意しましょう
電子天秤を使用する上で起こるトラブルの対処方法
天秤の値がどんどん小さくなってく、止まらない、安定しない
容器が静電気を帯びているかもしれません。揮発性の化合物では蒸発して軽くなっていく可能性があります。静電気を除去するか、揮発性の場合は蓋付きの容器で測定するなど工夫が必要かもしれません
天秤の値がどんどん大きくなっていく
天秤の値が大きくなっている場合は空気中の成分(水、二酸化炭素、酸素)などを吸収する化合物かもしれません。一番多いのは吸湿性の化合物です。身近なのは「水酸化ナトリウム」などです。こうした化合物は素早くはかりましょう
有毒、臭い化合物の秤量はどうする?
重さではなく、体積(mLやuL)で測定するとドラフト内でも測定できます。液体の場合はセプタムなどをつけたフラスコに注入して重さを測れば外に化合物が出ないで測定できます。
分解性の化合物の秤量はどうする?
あまりにも分解しやすい化合物は体積で測定するまたは、セプタムをつけた容器に注入して重さを測定する方法もあります。正確な重さでなくてもよい場合は、重さを測定せずに薬さじ一杯などのようにして加える場合もあります。アナログな上皿天秤を使用しても良いかもしれません。
mg表示にできない?
キログラム表示やグラム表示、ミリグラム表示は切替可能なものが多いです。「MODE」スイッチなどを押すと切り替えすることができます。詳しくは取扱説明書を参照してください
校正はどうやるの?
校正とは正確な計量を実現させるためのセッティングで、やり方は取扱説明書に従ってください。最近の電子天びんは内部校正といって、分銅などを使わなくても校正できるものがあります。また、一年に一回くらい業者にメンテ、校正してもらうと良いと思います。天秤の正確さは正確、再現性のある実験を行う上で非常に重要です。たいてい校正は天秤の校正モードというものにして、指定された分銅を置いていくという作業になります。
使い終わったら電源を切るべき?
後に使う人がいない場合は電源を切っても良いですが、使うひとがいる場合は安易に電源を切ると機器のウォームアップ時間がかかるので迷惑になります。
軽いものを測定する時数字が動かない
最小表示量に近い重さ、ミリグラムなどの小さい量を測定する時は数字が動かないことがあります。この場合は薬さじなどで優しく触れたりすると反応します。
小さい量を測定時に薬包紙に張り付いて損失が多い
アルミ箔をハサミで切って端を折り曲げて作った容器で測定すると良いです。溶媒にもよりますが、アルミ箔であればそのまま容器に入れて溶かした後に、泊を取り出すという方法もあります。
細かい粉を測定しようとすると飛び散る
エアコンのスイッチをきる、または静電気が原因です。プラスチックは避け、容器はアルコールなどで拭き取って静電気を除去しましょう。また、アルミ箔を容器としても静電気が軽減されるかもしれません