PCC酸化とは?
PCC酸化はクロムを用いた酸化方法の一つでクロム酸酸化のなかでは比較的新しいものです(E.J.Corey: 1975)。
PCC酸化は特にアルデヒド合成に使われます。PCCの欠点は
- 反応中にタール状のベタついた残渣が出てくる
- 酸性のため、酸性に弱い基質には使えない
です。そのため、反応中にはPCCとMS3A、セライトなどを加えて残渣の生成を抑えます。
モレキュラーシーブを入れないとタール状の物質に取り込まれて収率が低下したり、器具洗浄が面倒になるので入れたほうが良いです。
モレキュラーシーブには反応を加速させる効果があります。
Jones酸化では第一級アルコールはカルボン酸まで酸化されてしまい、アルデヒド合成には使えません。Collins試薬はアルデヒド合成可能ですが、過剰に試薬が必要です(6eq以上)。PCCは1.5-3当量くらいで反応が進行します。
PCCの作り方
PCCは無水クロム酸(1eq)と6 mol/L 塩酸(1.1eq)を加えてクロロクロム酸として、ピリジン(1eq)を0℃で加えて得たPCCをろ過し、得られた結晶を減圧下で乾燥して得ます。PCCは黄橙色の固体です。
PCCの特徴や反応条件
PCCの特徴は第一級アルコールをアルデヒドに酸化できるところです。
PCCの特徴とは?
- 化学量論量で反応が行える
- 室温で安定に保存できる点
- アルデヒド合成に使える
PDCと比較するとPCCのほうが若干酸性であること、反応がPDCと比べて早いことがなどがあげられます。酸化力についてはPDCのほうが高いようです。
反応条件
PCC(セライトとかも)とジクロロメタン懸濁液にジクロロメタンに溶かした基質のアルコールを滴下して加えます。室温(または0℃に冷却してから室温で)でそのまま数時間撹拌し、TLCで反応チェック(アルデヒドはDNP発色試薬でチェック)反応後、ろ過(セライトとか)してよく洗浄し、濃縮後、精製します。
よく使用する溶媒
ジクロロメタンの代わりにヘキサン、トルエン、ベンゼン、THF、ジオキサン、アセトンを溶媒に使えます。DMFを使うとカルボン酸まで過酸化することがあります。
官能基許容性
・耐える官能基
TMS、THP、tert – Bu ester、Boc、トリチル基、PMB基、ジチオアセタール、エポキシ、ニトロ基、ホウ酸エステル
・変化しうる構造
フラン環、三級アリルアルコール
参考・文献・小技
- ガラス器具にこびりついたPCCの残渣はNaOH水溶液で洗浄すると落ちる。
- 酢酸ナトリウムの添加で、酸性を減弱することができる。
- PCCは長期保存可能だが、新しく調整したPCCのほうが反応性が高い
- PCCはPDCよりも反応が早いことが多い
- 3Å MS粉を加えると収率向上が見込める。モレキュラーシーブの量はアルコール1mmolに対して250~500mgくらい入れると良い
- 酸の添加(CSA、pTSA、AcOH)は反応を加速させる。
- 超音波でPCCの粒子を処理すると酸化が加速され、反応が早く終る。Adams, L. L.; Luzio, F. A.; J.Org.Chem. 1989, 54, 5387.
- アリルアルコールの酸化ではCaCO3加えると