指紋といえば犯罪捜査に使われる証拠の一つとして有名ですよね?
悪いことをするときは手袋と覆面は定番です。
そもそも「指紋」が犯罪捜査に使えるのは、
- 指紋が手の脂のせいでペタペタものに残りやすい
- 指紋が人それぞれ違う
という特徴から、犯罪現場に残された指紋を犯人候補の人と照合すれば少なくとも現場にいたかどうかを判断することができるというわけです。
現在ではDNA検査が代わりになってきているかもしれませんが、DNA検査が無かった時代は指紋捜査は強力な捜査方法だったのでしょう。
最近でもスマートフォンや銀行口座など、ロック解除に指紋が使われてますね。それほど指紋は強力な個人特定方法なんでしょうね。
指紋が犯罪捜査に使える理由
指紋自体がなんのためにあるのか?これについては色々と理由が考えられています。気になる方は以下の記事を御覧ください
指紋は人それぞれみんな異なっていて、生まれてから死ぬまで変化しないという特徴があります。そのため、昔から個人認証のための手段として使われてきました。
江戸時代でも指紋が契約に使用されていたようです。
警察で指紋を使った犯罪捜査が始まったのは明治時代からと言われています。
指紋捜査に使われる手法
現在の指紋捜査では、指紋鑑定基準に基づいて検査されていて「12点の特徴点が一致する指紋は同一の人の指紋である」としています。
犯罪捜査において、指紋は有力な候補です。一方で「指紋を現場に残さなければ良い」ので手袋の着用など対策もしやすいですが、突発的な犯罪においては、手袋などはしておらず、指紋も残りやすいでしょうから使えますね。
犯行現場に残された指紋のうち、そのままでは識別不可能な指紋のことを「潜在指紋」といいます。ガラスやプラスチックなどそのままでも視認できる指紋は「顕在指紋」と呼ばれます。潜在指紋は何らかの形で目で見える形にさせてやらなければなりません。
潜在指紋の可視化
なぜ指紋が残るかというと指に残っている手汗、脂肪分が付着するためです。人間の手は大部分が水分ですが、他にも塩化ナトリウムやアミノ酸、皮脂などが分泌されています。これらが手に触れることによって物体に付着します。
したがって指紋捜査では、この汗や脂肪分を何らかの方法を使って目に見える形で浮かび上がらせる方法をとるわけです。
大きく分けて2つの方法があります。
- 粉末を用いた物理的方法
- 化学反応を用いた方法
です。
粉末を使った物理的指紋捜査法
指紋の汗や脂はそれがついていない部分と比べて、粉末が付着しやすいことを利用します。
指紋捜査といったら、鑑識官が粉末をぱふぱふつけている場面を想像するかもしれません。
このときに用いられる粉末はアルミニウム粉末やカーボンブラック(黒鉛)粉末などを複数混合させた粉末を使います。この方法ははっきりと指紋が残りやすい部分では効力を発揮しますが、凹凸面が多い部分など素材によって検出は難しくなります。
では紙や木材などデコボコしている表面に付着した指紋はどのようにして検出するのでしょうか?
化学反応を利用した潜在指紋捜査法
粉末が付着しにくいような材質の指紋の検出は化学反応を利用して行います。こちらの方法のほうがメジャーなようです。
シアノアクリレート法
シアノアクリレートは一般的に瞬間接着剤として使われている素材です。シアノアクリレートは水分と反応することによって重合して硬質化する物質です。シアノアクリレート法が適している場面は、「非多孔質表面上に残された指紋」です。ガラスや光沢プラスチックなどつるつるしている面に対しては、付着した指紋汗は多孔質と比べて付着物体に吸収されにくく比較的長期間残ります。シアノアクリレートはこの付着して残った水分と反応して固定化することができます。この固定化された指紋をさらに見やすくするために、ユーロピウム錯体、4-ビフェニルカルボン酸、p-アミノ安息香酸、p-アミノアセトフェノンなどの発光剤が用いられています。
Misner, A., J. Watkin, and D. Wilkinson. “TEC-A New-Fluorescent Fingerprint Dye.” (1993).
ニンヒドリン法
多孔質表面では指紋中に含まれる微量アミノ酸を検出する方法が多用されます。特にニンヒドリンは簡便で安価であることから昔から使われています。ニンヒドリンはアミノ酸と反応してルーへマンパープルと呼ばれる紫色色素を生成するためこれを検出します。
反応機構はシンプルな反応ですが意外と長いですね。ルミノールの脱水からケトンに対してアミノ酸のアミンが攻撃して、脱炭酸後、イミンの加水分解、アルデヒドの生成から生じたアミンが再度ルミノールと反応して二量体になるというような経路をたどります。
塩化亜鉛、塩化インジウムを用いる蛍光検出
紙などの多孔質材料への指紋の付着はニンヒドリンが安価かつ簡便でよく使われています。ニンヒドリンで固定化された指紋は紫色の色素なので、濃い色、黒や茶、紫色の素材に付着した指紋は見にくくなってしまいます。そこでより高感度に検出するために、蛍光として指紋自体を光らせる手法が使われます。暗闇で光で浮かび上がれば見やすいですよね?
塩化亜鉛はニンヒドリンによって浮かび上がった紫色素(ルーへマンパープル)と蛍光錯体という蛍光を発する錯体を形成します。とくに三塩化インジウムを用いたときに蛍光が強くなるという実験結果があります(参考1)。
さらにニンヒドリンを5-メトキシニンヒドリンに変えることによって更に蛍光を強くすることができます(参考2)。
指紋認識においても蛍光が役立つ!
なにか見えにくいものを検出するという方法を開発するときはだいたい、見えないモノ→色をつける→光らせるというような方法をたどることが多いんでしょうか?
今回紹介した方法は実際に警察でも使っているようです。ニンヒドリン以外にも1、8ージアザフルオレンー9ーオン(DFO)やインダンジオン類を用いる方法など様々な方法が開発されています。それだけ、指紋検出が犯罪捜査に重要でよく用いられるということを意味しているということでしょうか。