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屋内のラドンが肺がんに与える影響

ラドンは自然環境中に存在する放射性物質であり、通常は極低濃度で存在するため健康に及ぼす影響はほとんどないと考えられていました。

ラドン量は地域や場所によって変動し、ラドン量が多い場所では肺がんリスクが上がるのではないか?という研究がなされてから、ラドンが与える健康被害について関心が集まっていています。

実際にラドンが与える肺がんへの影響はあるのか紹介します。

ラドンとは?

ラドンは放射性をもつ天然の物質であり、人が受ける放射線の50%以上がラドンによるものといわれています。3)

放射性のラドンのうち最も存在確率が高いものはラドン222で、鉛206に至るまで崩壊を繰り返していきます。この時に生じるものが放射線です。

化学的には安定ですが、放射性を持ち、α線を放出します。これらが人体に悪影響をあたえると考えられています。

ラドンは気体であることが被ばくしやすい原因となります。放射性物質でも気体でなければ暴露リスクはずっと低くなります。

ラドンは呼吸により肺に取り込まれたあと、ラドン自体とラドンの崩壊により生じたポロニウムなどが沈着します。

これらの放射性物質はα線の放出やフリーラジカルを産出し、DNAの損傷を経てがんを発生させると考えられています。

ラドンはどこから来るの?

ラドンによる放射線被ばくの割合は年間被ばく量の約半分ほどであるといわれています。3)

ウランは地表・地殻中に存在するウランやラジウムが崩壊することによって生成します。希ガスは化学的に不活性なため、反応することなく地面から上がってきます。

気密性の高い建物ではラドンガスが滞留して蓄積しやすいと考えられています。また、水に溶けやすいことから、地下水や温泉にも高濃度で含まれることが多いです。

地表面に出てくるとラドンは大気中に拡散するため、大気中、海や湖などではラドン濃度は低いです。


ラドンと肺がんの関係

ラドンの暴露機会は主に室内で、換気が悪いと室内に蓄積するといわれています。1),5)

ラドン暴露が発がんに関係しているといわれているのは、地下鉱山の労働者の肺がん発生が多かったことです。それからの研究で肺がんとラドンの関連性が分かってから、1988年には国際がん研究機関IARCによってラドン222は「人に対する発がん性が認められる」グループ1の分類に加えられました。

1990年代に行われたコホート研究の全てで、ラドン被ばく量の増加に応じて肺がんの発生率が増加することが示されています。

屋内ラドンの影響

ラドン222が肺がん等のリスクを高める可能性があることから、一般家庭の屋内におけるラドン被ばくについても肺がんと関係があるのでは?と考えらるのは当然に思えます。

しかし、屋内ラドン量についてはばらつきがあったり、低量であることから肺がんとの関連を実証するのは難しいです。

WHOのラドンの健康への影響をまとめたハンドブック1),5)によるとラドンは低濃度のラドンであっても肺がんのリスクが増加する可能性があるとしており、非喫煙者が肺がんを起こす主な原因の一つと主張しています。

アメリカ合衆国環境保護庁2)によると米国人の肺がんの主要原因は

  1. 喫煙
  2. ラドン被ばく
  3. 受動喫煙

だと主張しています。

米国国立がん研究所による2010年の疫学調査研究では一年間の推定がん死亡者数は白血病、悪性リンパ腫に次いで肺がん(ラドン)が多いという報告があります。3)

参考 SEER Cancer Statistics Review 1975-2007 - Previous Version - SEER Cancer StatisticsSEER

屋内ラドンが肺がんと関係するという疫学研究結果がいくつか報告されており、それらが一般的事実として受け止められているようです。

家庭の平均的なラドン暴露量は約100 Bq /m3といわれています。ラドンは建物内の換気が悪いと蓄積する傾向があります。

まとめ

高濃度のラドンは肺がんリスクを高めるという疫学的な証拠があります。屋内ラドンの被ばくについては測定が難しいことから結論を出すのは難しいと考えられますが、ラドンの肺がん発生リスクは統計学的に有意にあるという報告があり、ラドンは肺がんのリスクを高めるものとして認識されているようです。

一方で、肺がん以外のリスクに関して、白血病においてはラドン被ばくと白血病発生には正の相関がみられるものと負の相関がみられるものが報告されているため、ラドンによる白血病の発生に関しては証明されておらず、肺がん以外の関係性は科学的に証明されていません。

低濃度のラドン被ばくに関してどれだけ影響があるのかは少し疑問があります。個人的には放射性物質の性質上あまり被ばくはしたくないかなと思います。

参考
1) Ting, David S‐K. “WHO handbook on indoor radon: a public health perspective.” (2010): 100-102.

2) アメリカ合衆国環境保護庁 ラドンの健康リスク:https://www.epa.gov/radon/health-risk-radon

3) Al-Zoughool, Mustafa, and Daniel Krewski. “Health effects of radon: a review of the literature.” International journal of radiation biology 85.1 (2009): 57-69.

4) Jin-Kyu Kang et al, . 2019 Jul 1; 60(7): 597–603.

5)  WHOのラドンの健康への影響をまとめたハンドブック https://www.niph.go.jp/soshiki/seikatsu/radon/radonindex.html

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